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第232回「日本が危ない」抑止力高める改憲で国難を脱せよ

各国と連携阻む日本国憲法
よりリアルな演習内容に
中国が太平洋上で空母2隻による演習を行うなど軍事的威圧を強めるなか、これに対抗するかのようにこの夏、自衛隊と米軍、オーストラリア軍による合同訓練が行われている。今後、日本でどのような政権が出来ようとも、米豪との連携強化は不可欠となっている。同時に、さらなる連携の障害として立ちはだかるのが日本国憲法であることが浮き彫りになっている。
自衛隊は7月から9月にかけて行われている米豪主催の多国間共同訓練「タリスマンセイバー25」(Talisman Sabre25)に参加するとともに、日米豪共同指揮所演習「ヤマサクラ(YS89)」、米豪軍との実働訓練「オリエントシールド25(Orient Shield25)」および、米海兵隊との実動訓練「レゾリュートドラゴン25(Resolute Dragon25)」を行った。
自衛隊は演習の目的について「我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、我が国の安全および地域の平和と安定のみならず、インド太平洋地域を含む国際社会全体の平和と安定および繁栄を確保する上で、日米同盟および日米豪3ヵ国の連携を不断に強化することが重要だ」としている。
豪州軍は平成23(2011)年から日米共同指揮所演習にオブザーバー参加していたが、一昨年のYS85から豪陸軍が演習本体に参加するようになった。
合同訓練は日米豪の相互理解を促進し、相互運用性をさらに深化することを目的としている。陸海空という従来の領域に宇宙・サイバー・電磁波という新たな領域を含めた複数の領域を横断した連携も図る。日米豪の陸軍部隊を中心に海上自衛隊、航空自衛隊、米太平洋艦隊、太平洋空軍の人員も加わり、約3500人が訓練に参加している。
今年2月17日、当時の陸幕長森下泰臣は都内で行われた陸上自衛隊フォーラムで講演し、「ヤマサクラ(YS89)」について「近年では豪州軍の参加やシナリオを南西諸島とするなど、よりリアルな想定で実施している」と語った。通常、演習については「特定の地域において事態が生じたことを念頭に置いたものではない」というのが公式見解だが、演習の想定場所を明言することは珍しい。
当然のことながら、自衛隊では具体的な演習内容については「差し替える」としか答えていないが、目下の安全保障環境を踏まえ中国を念頭においた侵攻対処を行ったとみられる。
その際、ネックとなるのが「日本国憲法」だ。演習では自衛隊と米軍、豪州軍で必要な調整を行うことはあるものの、自衛隊が米軍や豪州軍から指揮を受けたり、あるいは指揮することはないというのが日本政府の見解だ。日米豪の連携の深化を妨げているのが日本国憲法なのだ。
唐突だった9条2項の維持
猛反対も政権握ればスルー
安倍晋三政権下では集団的自衛権の一部行使を可能とする安全保障法制が整備されたが、あくまで限定的だった。安倍は平成30(2018)年1月の衆院予算委員会で、自民党内の憲法改正議論をめぐり、憲法9条2項の削除論があることについて聞かれると、「2項を変えることになれば、書き込み方でフルスペック(全面的)の集団的自衛権が可能になる」と述べた。さらに、「(2項を維持したまま自衛隊の存在を明記する)私の提案では2項の制限がかかる」とも語り、いまのまま2項を維持すれば集団的自衛権は現行と同じように一部容認にとどまるとの認識を示した。
※画像=何とか勝ち取った豪州との護衛艦共同開発。憲法の制約が装備移転の阻害要因に