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2025.08.26

ウイングトラベル

★観光庁26年度概算要求、38.6%増の813.5億円

 国際観光旅客税関連、過去最大の700億円要求

 

 観光庁は令和8年度(2026年度)予算の概算要求で25年度予算比で38.6%増となる813億5900万円を要求した。このうち一般財源は19.7%増の106億9400万円を要求した。これに加えて国際観光旅客税の充当分は42.8%増の700億円を要求。これは同税導入以来過去最大の額となる。このほか、東日本大震災の復興枠として13.1%減の6億6500万円を要求した。26年度は25年度同様に「持続可能な観光地域づくり」「地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組」「国内交流拡大」の3点を大きな柱に据えて予算を要求。人材不足対策や外国人向け消費税免税制度の「リファンド方式」移行への対応、ユニバーサルツーリズムの促進など、観光立国推進基本計画の方針に沿った予算要求を行った。

 

 持続可能な観光、地方誘客、国内交流拡大柱に予算要求
 26年度の国際観光旅客数、7000万人見込む

 

 「国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開」に関しては25年度予算の490億円に対し、42.8%の大幅増となる700億円を要求した。要求額については訪日外客数については国際観光旅客数を7000万人と見積もり要求を行った。7000万人の根拠として観光庁は、訪日外客数については24年の3687万人から2割増に相当する約4640万人を見込んだ。そして、残りの約2360万人相当を出国日本人相当として見積もった格好だ。
 国際観光旅客税財源を充当する予算については「国際観光旅客税の使途に基づく基本方針等について」に基づいて対応するものとしており、観光庁に一括計上して予算要求を行ったのち、観光戦略実行推進会議において民間有識者からの意見を踏まえつつ検討を行い、予算編成を行うことにしている。

 

 持続可能な観光地域づくり、45.5%増の22.8億円要求
 人材不足対策6倍増、能登半島地震復興に新規で1億円

 

 今回の概算要求は観光立国推進基本計画で重点的に取り組んでいる項目を中心に行っている。
 第1の柱として掲げる「持続可能な観光地域づくり」に関しては45.5%増となる22億8900万円を要求した。最も要求額が大きいのは「地域一体となった持続可能な観光地経営推進事業」で35.8%増の9億1000万円を要求した。これはいわゆる「オーバーツーリズム」対策も含めたものとなっている。中核の事業となるのが「地域一体となった持続可能な観光地経営に向けた調査事業となる、これに付随して、オーバーツーリズムの未然防止・抑制や観光の足確保に向けた交通サービスの受入環境整備の支援を行う。
 「観光地・観光産業における人材不足対策事業」には24年度予算の5000万円から6倍増となる3億円まで増額する要求を行った。訪日インバウンドの急増など観光需要が大きく増加し人手不足がより顕著なものとなっていることを踏まえ、現在取り組んでいる「人材確保・定着の促進」「人材活用の高度化に向けた設備投資支援」「外国人材の確保・定着」「経営の高度化」の4事業に対する予算増額を求めた。
 昨年1月に発生した能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業として新規に1億円の予算を要求した。同事業では、今回の災害からのさらなる復旧にあたって、経営高度化に向けた計画策定、人材確保に向けた取り組み、復旧後の誘客促進を図るためのコンテンツ造成を支援していくことにしている。
 通訳ガイド制度の充実・強化に11.0%増の8100万円を要求。ここでは通訳案内士の質の向上を目的として新人の通訳案内士に対する研修プログラムの構築について2026年度から新たに実施することを盛り込んだ。
 このほか、観光統計の整備に7億9300万円、健全な民泊サービスの普及に1億500万円の予算をそれぞれ要求した。

 

 訪日プロモーション関連予算6.4%増の58.5億円要求
 免税制度の「リファンド方式」移行支援事業に1億円

 

 2つ目の柱となる「地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組」に関しては12.0%増となる68億7900万円を要求した。この項目に関して最も多くの予算要求を行ったのが「戦略的な訪日プロモーションの実施」で6.4%増の58億5000万円となっている。観光立国推進基本計画で掲げる外国人旅行者1人あたりの地方部宿泊数2泊という目標が未達となっていることを踏まえ、さらなる地方誘客促進に向けたプロモーションに力を入れていく。プロモーションの強化とあわせて「地方部への滞在促進のための地域周遊観光促進事業」として22.5%増となる5億4500万円の予算を要求した。
 「MICE誘致の促進」に関してはほぼ2倍増となる3億4400万円の予算を要求。「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」において目標として掲げた2030年に国際会議の開催件数世界5位以内の達成に向けて、日本政府観光局(JNTO)によるマーケティング展開の強化やMICE誘致のための基盤整備、国際観光シンポジウムの開催などに取り組む。
 このほか来年11月からスタートする外国人向け消費税免税制度の「リファンド方式」への移行支援として25年度予算の約6.3倍増となる1億円を要求。同制度の一般消費者への認知拡大に向けた取り組みを本格化させていくことにしている。

 

 若者の国際交流促進へ2倍増の4000万円を要求
 海外教育旅行プログラム開発支援や普及啓発活動強化

 

 アウトバウンド関連では「海外教育旅行を通じた若者の国際交流の促進」として、25年度予算の2000万円から2倍増となる4000万円の要求を行った。
 26年度についても中長期的なアウトバウンドの増加に結び付く海外教育旅行を通じた取り組みに注力していく方針とし、25年度に取り組んでいる学校・地方公共団体と旅行業者の連携による海外教育旅行のプログラム開発や海外教育旅行実施数のさらなる増加に向けた活動を一段と強化していくための予算を要求した格好だ。

 

 国連、78.8%増の7.2億円
 ユニバーサルツーリズム促進へ13倍増の予算要求

 

 3つ目の柱となる「国内交流拡大に関する予算については25年度予算の4億600万円から78.8%増の7億2600万円を要求した。
 このうち「ユニバーサルツーリズムの促進に向けた環境整備」に関しては25年度予算の3000万円から約13倍増となる4億円と大幅な増額要求を行った。
 国内旅行市場のさらなる拡大に向けて、今後増加が見込まれる高齢者層の旅行需要を喚起することや、障害者がより安心して旅行ができる環境を整備する取り組みを一段と強化していく方針だ。
 具体的にはこれまで取り組んでいるユニバーサルツーリズム促進に向けた調査検討やシンポジウムの開催などを通じた機運醸成の取り組みを強化する。さらに、バリアフリー化に必要な施設整備などに関する支援も拡充していくための予算を要求した。
 ユニバーサルツーリズム関連とあわせて国内交流拡大関連では、「第2のふるさとづくり」を始めとした「新たな交流市場・観光資源の創出事業」については25年度予算と同額となる3億2600万円を要求した。

 

 東日本大震災復興枠は13.1%減の6.6億円

 

 東日本大震災の復興枠に関連した要求としては「福島県における観光関連復興支援事業」として25年度予算と同額の5億円を要求した。またALPS処理水の海洋放出による風評対策に向けて海の魅力を訴求する「ブルーツーリズム推進支援事業」については37.6%減となる1億6600万円を要求した。

 

■観光庁、令和8年度(2026年度)概算要求事項

観光庁の2026年度概算要求の主要事項は以下の通り。(カッコ内は25年度予算比)

≪一般財源≫
(1)持続可能な観光地域づくり=22億8900万円(45.5%増)
▼地域一体となった持続可能な観光地経営推進事業=9億1000万円(35.8%増)
▼観光地・観光産業における人材不足対策事業=3億円(6倍増)
▼通訳ガイド制度の充実・強化=8100万円(11.0%増)
▼健全な民泊サービスの普及=1億500万円(1.9%減)
▼観光統計の整備=7億9300万円(18.6%増)
▼能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業=1億円(新規)
(2)地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組=68億7900万円(12.0%増)
▼地方部での滞在促進のための地域周遊観光促進事業=5億4500万円(22.5%増)
▼戦略的な訪日プロモーションの実施=58億5000万円(6.4%増)
▼MICE誘致の促進=3億4400万円(92.2%増)
▼海外教育旅行等の若者の国際交流促進=4000万円(2.0倍)
▼外国人向け消費税免税制度の「リファンド方式」移行支援事業等=1億円(6.25倍)
(3)国内交流拡大=7億2600万円(78.8%増)
▼新たな交流市場・観光資源の創出事業=3億2600万円(25年度予算と同額)
▼ユニバーサルツーリズムの促進に向けた環境整備=4億円(13.3倍)
(4)その他(経常事務費等)=8億円(1%増)

≪国際観光旅客税を活用した高次元な観光施策の展開≫
▼国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開=700億円(42.9%増)

≪復興枠≫
▼福島県における観光関連復興支援事業=5億円(25年度予算と同額)
▼ブルーツーリズム推進支援事業=1億6600万円(37.6%減)

■総計=813億5900万円(38.6%増)