ウイングトラベル
★ANAHD第1四半期、営業利益367億円と過去2番目

利益積上げ劣後ローン2千億円分を10月末一括返済
ANAホールディングスは7月29日に発表した2026年3月期第1四半期決算によれば、売上高は前年比6.2%増加した5487億円と増収に。利益面でも、本業の儲けを示す営業利益が21.2%伸びた367億円を確保することに成功した。経常利益ベースでは、2.5%減の359億円、四半期純利益も7.1%縮小した229億円で着地した。経常利益、当期利益で減益となったのは、営業外収支が前年から73億円減少したため。これは為替差損益が役68億円悪化したことに加え、航空機関連の補償収入が前年から11億円減少したことなどによるもの。
同日、記者会見に臨んだANAホールディングスの中堀公博取締役専務執行役員グループCFOは、「2025年度通期業績予想は増収減益としていたが、第1四半期は売上高が増加、営業利益も増益となった」ことに触れつつ、「売上高は、ANAブランドを中心に増収となった。営業費用は、人件費や外部委託費などが増加し、前年から5%増加の5119億円となった。これらの結果、営業利益は367億円となり、2023年度に次ぐ過去2番目となった」ことを明らかに。営業利益の進捗については、「通期の利益計画に対し約20%の進捗率となり、利益目標の達成に向けて順調に推移している」と説明した。
なお、厳しいコロナ禍に調達した劣後ローン4000億円のうち、トランシェA2000億円については、利益を積み上げてきた結果、初回期日前弁済可能日に返済できる条件をクリアしたとして、「今年の10月末に一括で返済する」とした。
事業別に紐解くと、ANAブランドの国際線旅客事業は、日本発着需要の構成比を高めながら、旅客数は前年から10%増加。売上高も8.8%伸びた2062億円となった。その一方で、為替や燃油サーチャージの影響により、イールドは前年から2%低下した。
ANAブランドの国内線旅客事業の売上高は6.8%上昇した1619億円だった。レジャー需要の獲得を強化したことで旅客数が増加。一部の運賃を改定したことで、単価は前年から2%上昇した。
中堀CFOは「国内線のビジネス需要も緩やかな回復は継続をしている」とコメント。「昨年度の第1四半期はコロナ前の約7割水準だったが、今第1四半期は74~75%ということで、緩やかな回復は継続をしている。ただ、コロナ前と比べるとまだまだ回復途上だ」と分析した。一方で堅調なレジャー需要は、概ねコロナ前水準に回復済みだ。
ANAの国際線貨物事業の売上高は2%縮小した422億円に。「米国関税政策の懸念もあったが、堅調なアジア初需要を取り込むことで、取扱重量は前年を2%上回った」。その一方で、為替やアジア発の供給増加による影響を受け、単価は3%低下した」という。
LCCブランドのピーチ・アビエーションは、「近距離国際線の競争環境が厳しいなか、台湾線や韓国線を中心に需要を取り込み、旅客数は前年並み」で着地。売上高は4.5%減少した292億円だった。
ピーチ、風水被害で香港線大打撃
8月は利用率70%まで回復見通し
ピーチ・アビエーションを巡っては、7月に日本で大地震が発生するとした風水による風評被害の影響が直撃。中堀CFOは、「ピーチ・アビエーションでは大きな影響が出ている」とした。
関連するピーチ・アビエーションの香港線などの座席利用率は、4月は56%、5月に49%、6月に至っては36%にまで落ち込むなど大打撃に。「第1四半期を通すと、ピーチ・アビエーションの香港線の旅客数は前年から-53%となり、非常に大きな影響を受けた」ことを明かした。
7月に入ってからも「まだまだ影響が大きく、6月よりは改善したものの、座席利用率は44%」に留まっているとのこと。ただ、8月に関しては「だいぶ回復していくことを見込んでおり、座席利用率は70%程度まで回復する見通し」にあるとのことで、徐々に風評被害の影響が薄くなっていくとした。
第3ブランドのAirJapan(エアージャパン)の売上高は51.2%増の29億円だった。「生産量の増加により収入を大幅に拡大した」とのことで、旅客数は前年比49%拡大した。
第2四半期以降も需要は前年上回る
お盆予約、日本発レジャー堅調見込む
中堀CFOは第2四半期以降の需要見通しについて、「国際旅客、国際貨物ともに堅調な需要が続く見通しだ」との認識を示した。
ANA国際線旅客数は4月に前年比114%、5月は110%、6月も105%で推移。第2四半期に入ってからも、7月が108%、8月も109%と、好調をキープする見通し。国内線旅客に関しては、4月の旅客数が前年比106%、5月は104%、6月は104%で推移。7月は102%、8月も104%と予想しており、堅調に前年を上回る予想だ。
お盆の予約見通しについて中堀CFOは「非常にレジャー需要が堅調」とコメント。国際線では「とりわけヨーロッパとハワイ線は予約率が既に80%程度に達し、非常に好調。今年の夏は国際線についても日本発のレジャー需要が堅調に推移する」との見通しを示した。
ANA国際線貨物の貨物取扱重量に関しては、4月が101%、5月は100%、6月104%だったが、7月以降も106%、8月に113%を見込むなど、右肩上がりに伸びていく見通しだ。
日米関税交渉妥結、人モノ動き活性化に期待
日米関税交渉の結果について中堀CFOは「関税政策の変更前と比べれば、15%とはいえ関税が高くなるのは事実。ただ一方で、「今までは非常に不透明感が強かったが、(関税率が決定したことで)企業側も様々な計画が立てやすくなる。人とモノの移動が活性化されることを期待している」とコメントした。
第1四半期は中国発の北米向け貨物は、「例年から4割ぐらい重量を落としたが、アジア発北米向けは40%ほど重量を増やした。日本発北米向けも56%重量を増やすことができており、モノの動きが変わったことに対しては、機動的なネットワーク、とりわけ貨物専用機のネットワークを柔軟に対応して、しっかり需要のあるところの荷物を獲得できたと考えている」と述べた。「すぐにアジアから北米向けの貨物が減ることは今のところ想定はしていないが、中期的にどういった動きがあるか注視しネットワークを柔軟に調整をして収益の確保に努めていく」とした。