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2021.10.01

WING

第137回 日本が危ない アフガニスタン邦人退避の真実

自衛隊機が救った邦人は1人
立ちはだかった壁を徹底検証

 

 アフガニスタンからの邦人をはじめ日本政府や国際協力機構(JICA)に協力した現地職員とその家族らの救出に向かった自衛隊機は1人の邦人と十数人のアフガン人しか救出できなかった。日本とほぼ同時期に現地入りした韓国軍機は約390人を仁川空港まで運び出しているにもかかわらずだ。この差はいかに生じたのか。日本政府当局者らの証言をもとに検証する。
 当時、アフガニスタンには大使館関係者らのほか邦人が10人強滞在していた。そのうち多くが国連や国際赤十字社関係者で、残りは非政府機関(NGO)や報道関係者だった。すでにアフガニスタンからの退避勧告は2007年に出ていた。
 7月8日、米大統領バイデンが8月31日までにアフガニスタンから撤退すると表明して以降、イスラム武装勢力タリバンが一層攻勢を強め、支配地域の拡大を続けた。日本政府当局者は「カブール陥落について米国は年内いっぱいとみていたように、われわれももう少し先とみていた。その点は反省すべきだ」と語る。
 それでも8月初旬、カブール陥落の可能性があるとの情報を得て、日本政府は邦人や現地職員らの退避及び大使館の撤収の可能性についての検討を本格化させた。邦人に対しては個別に連絡を取り早期退避を改めて呼びかけた。ただ、国連や国際赤十字は独自の退避計画があるため大使館の支援により出国したのはカブールが陥落した15日に民間機で離陸した2人だけだった。
 この作業に時間がとられ、大使館の撤収が遅れた。大使館内には暗号機などがありこれらを破壊する必要があった。すでにカブール市内にはタリバンが入り込んだうえ、刑務所も壊され凶悪犯が市内になだれ込むなど治安は一気に悪化した。

 

派遣検討も空港大混乱に
方針転換の答えは相乗り打診

 

 日本大使館は市内の「グリーンゾーン」と呼ばれる地帯にある。各国大使館が立ち並び、米国の元海兵隊員らがつくった警備会社が警備を担当していた。13日に英国から「グリーンゾーン」の大使館を閉鎖するとの連絡があり、警備会社からも直ちに「グリーンゾーン」から退避するよう勧告が出た。大使館員らは大使館から市内の警備会社の建物に移動し、16日に米軍ヘリの支援も受けながら空港へとたどり着いた。

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