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2020.07.14

WING

防衛省、広帯域多目的無線機の能力を実演展示

配備が進む広多無、現在では約7割の部隊が装備

 防衛省は7月13日、陸上自衛隊で配備が進んでいる広帯域多目的無線機(広多無)の能力を実演展示した。これは、今年1月の防衛大臣定例記者会見での、広多無に関する質問事項に対する回答とのことで、当日は市ヶ谷基地内で高低差のある状況、遮蔽物がある状況、移動状況、の3つの状況下での通信状況を展示し、現在では何も問題がないことを改めて示した。
 広多無は、日本電気(NEC)がプライムメーカーとなって開発した陸上自衛隊が使用する最新の野外無線システムで、前装備品となる新野外無線機(新野外)などを置き換えるものとして配備を進めている。陸自の調達は2011年度から始まっており、部隊配備は2012年からのこと。会計監査院の2018年度決算検査報告によれば、2018年度末時点で車両用・携帯型などを含めた部隊配備総数は1万9357台になるとのことで、アイアンフィストといった日米共同訓練など海外での使用実績もある。
 なお、2020年7月現在の配備状況について、陸自は具体的な配備数を明かすことは避けたものの、「車両用では約7000台を既に配備しており、陸自主要部隊を中心に約7割の部隊が装備している」と明かしており、引き続き配備を継続していくとしている。
 広多無の最大の特徴は、新野外などの陸自がこれまで装備してきた無線機システムと違い、ソフトウェア無線機となっている点だ。このため従来型の無線機と比べ、小型・軽量化に成功。機能についても音声通信だけでなく、GPSによる位置把握サービス、メール・写真の送付、敵航空機の接近や化学攻撃などの各種警報の一斉送信サービス、状況図(戦術オーバーレイ)の共有サービスといったデータ通信も可能になっている。
 陸自は、「従来の無線機では味方位置把握のための通話が頻発していたほか、中隊命令などの長文を読み上げて全員が筆記する、命令・警報を聞き漏らしてしまう、情報収集内容を逐一音声で報告する、といった傾向があった」と説明。「広多無の導入により、こうした状況は一変した。味方位置はほぼリアルタイムに把握可能となり、長文の命令を間違わず伝達することも、各種警報を一度に全部隊に配信し、中隊の現況を中隊長から分隊長まで共有出来る様になった」として、音声通話の頻度を激減することに成功したと語った。
 また、機能の追加やアップデートなどに関しても、ソフトウェアの改修で済む点もメリットになっているという。

 

会計監査院報告に見る広多無プログラム改修の実態
18年末時点で約6割が改修実施せず

 

※写真=配備が進む広多無。2018年度末時点で1万9357台、20年7月時点では主要部隊を中心に約7割の部隊が装備しているという

※写真=置き換え対象の新野外無線機。広多無の設計にあたっては、横に無線機を足していく従来型と違い、縦に無線機を積み重ねていく思想で行ったとのこと