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2025.10.09

官民一体となってグアムを盛り上げる 新組織がけん引するグアム観光の未来【グアム政府観光局リカバリーコミッティー】

 コロナ禍や台風による被害、そして円安と、グアムへの旅行を阻害する要因が続き厳しい状況が続いてきた。この状況から脱却すべく、グアム政府観光局(GVB)内に新たな組織「リカバリーコミッティー」が設置された。新組織の立ち上げからさまざまな施策まで、中心メンバーとして携わるP.H.R. Ken Micronesia Inc.の柳澤建代表取締役に、リカバリーコミッティーの役割などについて話をうかがった。

 

P.H.R. Ken Micronesia Inc. 柳澤建代表取締役

 

新組織「リカバリーコミッティー」
立ち上げの背景と担う役割とは?

 

 コロナ禍を乗り越え、再起を目指していた2023年5月、台風がグアムを直撃して大きな被害を受けた。被害からの復旧も進み、観光客の受け入れを再開し始めた頃になると円安が急激に進行。グアムは回復基調にあるとはいえ、旅行者数はコロナ禍前の2019年レベルには戻っていない。
 ネガティブな要因が重複する中、グアムの観光事業者からは本格的なリカバリーに取り組まなければならないという声があがるようになった。柳澤氏は、「かつて日本の海外旅行市場におけるグアムのシェアは4%弱あり、コロナ禍前でも3.4%あった。これが今は1.3%まで落ち込んでいる。このままではデスティネーションとして問題があるという声が大きくなってきた」と語る。
 そんな背景から誕生したのが「リカバリーコミッティー」だ。GVB内には、日本市場を担当するジャパンコミッティー、韓国市場を担当するコリアンコミッティーなど、さまざまなコミッティーが存在する。リカバリーコミッティーは、既存のコミッティーと同列の組織として設置され、その名のとおりマーケットの回復に関する施策を担っている。

 

準州政府や議会、地元を巻き込み
地道な努力でグアムのレベルアップへ

 

 リカバリーコミッティーはさまざまな施策のアイデアを出し、準州知事や議会からの賛同を得た。そこで短期でのリカバリー計画を作成(長期は作成中)。今、グアムが取り組むべきことが、デスティネーションマネジメントと航空座席の確保であることを明確にした。
 喫緊の課題は、「コロナ禍を経て、デスティネーションとして古く感じられている」(柳澤氏)ことの解消だ。まず着手したのは、タモンエリアのホテルロードで色が剥げてしまった縁石を塗り直したり、歩道を整備したり、古ぼけた様子を一新することだった。準州政府の道路整備を担う部署とも連携しながら地道に進めている。
 GVBはまた、デスティネーション・マネジメント予算を活用し、街中のペインティングを増やしてフォトジェニックなスポットを拡充。副知事が指揮を執るグアムの美化運動「ビューティフィケーション・タスクフォース」や商工会とも連動し、ホテル協会、JGTA、GVBが街のゴミ拾いを行うなど、新鮮でクリーンなグアムづくりに邁進している。

 

グアムの歴史を感じるナイトマーケットを
タモンエリア中心部で開催

 

 柳澤氏は「『グアムに来てよかった、また来たい』と思わせるためには、コンテンツを作り込まなければならない」と力を込める。そこで目を付けたのが、ハガニアのチャモロビレッジだ。これは飲食や雑貨、伝統工芸品などの露店が並ぶ夜市で、露店の大半を地元の業者が手掛けるローカルに人気のイベントである。これを見て回れば、グアムのカルチャーの大部分を理解できると見る向きもあるほどの充実ぶりだ。柳澤氏らは、コロナ後にアテンドしたファムツアーでチャモロビレッジを訪
れ、これが優れた観光資源であると再確認した。
 ただ、チャモロビレッジが開催されているのはハガニア地区である。博物館もあり、グアムの歴史を感じられる場所だが、タモンエリアからは離れている。そこで今年8月3日から、タモンエリア中心部の道路を17時から21時まで封鎖し、ナイトマーケットを開始した。「地元の人も観光客もどちらも楽しめるように」(柳澤氏)という当初の目論見どおり、来場者は3000人を超えたという。


観光地整備に宿泊税を有効活用へ
航空座席の増加に向けた働きかけも

 

 限られた予算で、観光事業者などに協力をあおぎながら進めるのは限界がある。そこで今、宿泊税を原資とするボンドを創設し、観光地の整備費用に充当するアイデアがある。現在は議会に提出するための計画を練っているところだ。実現すれば、このボンドを活用し、タモンエリアだけでなく、島内に点在する観光スポットの施設や公衆トイレを整備できる。
 航空座席の増加に向けても積極的に働きかけていく。現在は米国本土からグアムを訪れる米軍関係者の需要が高く、日本市場の需要に対して座席数が不足するケースが散見される。こういった状況を受け、日本市場と韓国市場を統合したインセンティブプログラムの必要性について議論が始まった。韓国市場にはすでに予算の一部が投入されており、韓国からの直行便は月間約6万席まで増えた。一方で日本市場は、今年8月の提供座席数が約4万席だった。柳澤氏は「現状を維持しながら、日本からの座席数を現在の韓国と同等レベルに、韓国からの座席数ももう少し増やせれば、2019年実績の85〜90%程度まではリカバーできる」と見ている。柳澤氏の見通しでは、韓国市場は早ければ来年にも、日本市場は2〜3年内にこのレベルまで回復する可能性があるという。


「ワングアム」で意見交換を活発化
日本の旅行会社の賛同を得て販売促進へ

 

 グアムでは現在、「ワングアム」として日本の旅行会社、特にホールセーラーを支援するため、意見交換を密にする体制がとられつつある。これは、ホールセーラーの取扱数が大幅に減少していることをグアム側が危惧しているからだ。かつてジャパンマーケットコミッティーという形で、グアム側と日本の旅行会社が意見交換する場が設けられてはいた。だが、柳澤氏は「コロナ前はキャパシティーの9割が埋まっていたこともあり、グアム側が意見交換をそこまで重視していなかった面がある」と自戒を込めて話す。止まっていた意見交換を復活させ、グアム側が今後どうしていこうと考えているかを伝えつつ、日本の旅行会社の賛同を得ながら一緒に前に進むための方策を練っている。
 柳澤氏は、「ワングアムを復活させ、我々の施策を注視していただきながら、ともにグアムというデスティネーションを盛り上げていきたい」と、日本の旅行業界に向けて力強いメッセージを発している。

 

 

のページ グアムの新イベント「タモンナイトマーケット」
毎週日曜日、タモンエリアに地元の食やショッピングが集結

 

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