回復基調に乗り好調続くグアム デスティネーションの価値向上へさまざまな施策【グアム政府観光局(GVB)】

円安の影響などで海外旅行需要が落ち込むなか、グアムは新型コロナや台風の被害を乗り越えて好調を維持している。しかしながらまだ2019年の水準には至っておらず、日本マーケットの拡大に向けて次の一手が必要とされている。グアム政府観光局(GVB)日本オフィスの秋葉祐輔エグゼクティブディレクター、セールス/トレード エグゼクティブ柳原義正氏、マーケティング エグゼクティブ樋口太一氏に、今後の施策などをうかがった。
FY25で回復基調が顕著に
海外旅行市場全体の伸び率を上回る
GVBによると、2025年1〜6月にグアムを訪れた日本人旅行者は、前年同期比18.19%増の11万3,757人だった。同じ期間の出国日本人数は14.0%増(日本政府観光局:2025年6月推計値)で、グアムの伸び率は海外旅行市場全体のそれを上回っている。グアムの会計期の2025年度(FY25:2024年10月〜2025年9月)においても、6月末までの9か月間で前年同期比15.47%増の16万9,407人と好調を維持。秋葉氏は「FY25の最終的な日本人旅行者数は24〜25万人程度になるのではないか」と見ている。GVB日本オフィスはもう少し高い数値を目標に掲げていたというが、航空座席が当初の想定よりも減少したことや、ゴールデンウイークの曜日配列の影響で5月の来島者数が伸びなかったことなどにより、わずかに目標に届かなかったが、それでもFY25はほぼすべての月で前年実績を上回っており、円安などのマイナス要因がありながらも、グアムが好調であることは間違いない。
関係事業者の努力が実り
ファミリー&若年女性が好調をけん引
好調をけん引しているのは、子供連れの若いファミリーや、若い女性同士だという。GVB日本オフィスは、コロナ禍でもSNSを中心にプロモーションを展開し、その他のメディアへの露出も止めなかった。グアムを訪れる若い層は、これまでGVB日本オフィスが制作したSNS用の動画の構成を模した動画を投稿しているケースが目立ち、過去の施策の効果が現れてきている。
航空会社や旅行会社、現地のホテルに観光関連業者の協力も好調を支える大きな要因だ。航空各社は、ファミリー向けプロモーションを積極的に展開。旅行会社もGVBのマーケティングのテーマのひとつの「ウェルネス」に結びつける商品を積極的に造成したり、支店スタッフ全員で「GUAM」とプリントされたTシャツを着用してグアムフェアを実施したり、グアム商品を造成・販売両面で活発化させた。グアム現地では、旅行者に楽しく滞在してもらえるよう独自のイベントを実施するホテルが増えている。
SITの目玉として中核ターゲットに据えたウェディングも好調だった。GVB日本オフィスは、家族にフィーチャーした「だんらんウェディング」を打ち出し、コンセプト動画を制作。ウェディング関連のウェブ広告も出稿し、そこから予約できる導線も整えた。グアムのウェディングでは1組あたり約9人が来島するが、今後はこれを11〜12人程度にまで引き上げていきたい考えだ。
座席数増へ年間を通じたサポートを計画中
高付加価値デスティネーションへの転換も
GVB日本オフィスは、FY26においても回復基調を鈍らせず、さらに日本市場を拡大させるためのさまざまな施策を計画している。
まずは、航空座席数を増やす働きかけである。FY25の日本―グアム間の提供座席数はFY24比で約5万席減少した。航空券を取りやすくするため、座席数の増加は大きな課題であり、航空会社へのインセンティブのための予算をグアム準州政府に対して申請中だ。
これまでは繁忙期のチャーターに対するサポートがメインだったが、FY26では「日本人旅行者が来やすいように通年でフレキシブルな予算の使い方になる予定」(秋葉氏)だ。
旅行会社へのサポートは、さらに手厚くする方針だ。ただし、単なるカタログのサポートではない。グアムのストーリーを感じさせる商品や、グアムのカルチャーを体験できるプランを含む商品など、内容に応じたサポートを積極的に行う。秋葉氏は「旅行商品はもう安い買い物ではないので、グアムのブランド価値を高めるような商品造成をサポートしていきたい」と力を込める。マーケティングの方向性も、これまで全面に出してきた「日本から3時間半」「美しい海」「アメリカンリゾート」というグアムの機能面だけでなく、消費者にエモーショナルに訴求する要素も増やしていくという。
FY25のグループ旅行については、「グループサポート」という形で確保し
た予算はほぼすべて消化するほど順調に推移した。その中でも現在増えてい
るのが教育旅行のニーズだ。
グアムの場合、大学のゼミや専門学校の研修など、5〜50人という小・中規模の教育旅行のニーズが多い。グアム大学やホテルでは受け入れ態勢が整備されてきたが、現状では、ホームステイの要望に対し、十分に応えられるホストファミリーの数がやや限られている状況である。今後は教育旅行をサポートするための予算確保と、ホームステイを伴う交換留学などを増やすための整備をさらに進めていく。
各種イベント開催でさらなる来島者増へ
SITの中核ターゲットは“ゴルフ”
グアム全体を見ると、島独自のイベントを開催する動きが目立っている。
例えば、ランニングイベント「ココロードレース」は、2025年には日本からの加参加者が100名を超えた。2026年もさらに多くの日本人が参加するよう呼びかけていく。また、8月3日からは、タモンエリア中心部で「タモンナイトマーケット」を新たに実施。観光客も地元の人も楽しめる催しとして多くの人でにぎわったため、FY26でも継続実施を希望する声が多い。
新規イベントとしては、「グアム・インターナショナル・ダンスフェスティバル」が今年12月6〜7日に開催されることが決まっている。世界中のダンサーがグアムに集まり、文化的な伝統や創造的な表現、芸術性などを披露するショーケース兼コンペティションとなる。
来年2月には、女子プロゴルファーが出場する大会がグアムで開催される。この大会にはプレーヤーだけでなく観戦目的での来島者も見込まれている。さらに、プロがプレーしたゴルフコースはゴルフ場としての価値が大きく向上するため、プレミアム料金を払ってでもプレーしたいゴルファーの来島にもつながる。こういったポジティブな要素を受け、GVB日本オフィスはFY26のSITの中核ターゲットにゴルフを設定。グアムでゴルフを楽しむための動画やカタログを制作して発信するための予算確保に動いている。
“聖地巡礼”や“推し活” による
日本市場の活性化も視野
全編グアムで撮影されたテレビ東京系列のドラマ『私があなたといる理由』の効果も期待できる。FY25の好調の背景には、グアムがテレビメディアに露出した後に、適切なタイミングで関連する商品を販売するという旅行会社の協力があった。GVB日本オフィスでは「聖地巡礼」や「推し活」を促す動画の制作に着手しており、近日中に公開する予定で、キャラクターとのコラボレーションも視野に入れている。今後も各種メディアへの露出を増やしていく方針に変わりはなく、秋葉氏は「露出後に適切なタイミングで関連商品が販売されるように、旅行各社と密接に
協力していきたい」としている。GVB日本オフィスは昨年、スタッフを2人増員し、予算も前年度を上回る額を確保して日本市場の回復と拡大に全力を尽くしていく。
秋葉氏が「GVBは日本への投資は拡大しているので、日本の旅行業界の皆さんにも安心していただきたい。そしてともにグアムを盛り上げられるよう頑張っていきたい」と語っている。GVB日本オフィスは旅行業界向けの予算を確保しつつ、FY26
はあらためてグアムのブランディングにも注力し、旅行先としてのグアムの付加価値を高めていく。

ウェブサイトでも紹介
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