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2022.12.28

航空会社レポート その2【ANA】

ANA レベニューマネジメント部 マネージャー 菅野 翔 氏

A380の強みを活かした施策
現地イベント軸に持続可能な観光に寄与

ビジネスクラスが好調

A380が需要喚起の契機に

 

 現在、ANAのハワイ路線は、羽田-ホノルル線が毎日運航、エアバスA380型機「FLYING HONU(フライングホヌ)」で運航する成田-ホノルル線は週3便で運航している。成田線については、12月より週5便に増便した。
 現状の需要状況について、菅野氏は「ビジネスクラスが好調。10~11月は、搭乗率で8割台をキープしている」と語る。まずはビジネスクラスの販売を継続的に促進していくが、今後はエコノミークラスについても「搭乗率を高めていきたい」意向。また3泊5日、4泊6日の利用があるものの、「1週間や1週間以上など、比較的長期の利用が目立っている」という。
 同社だけが運航するA380型機による効果も大きい。「羽田線は、利便性の高さで選ばれるが、成田線についてもA380型機だから選択する人が多い。単なる輸送手段でなく、旅自体を楽しむ層がいる。 A380型機が旅行の良い契機となっている」と説明する。
 菅野氏は「外務省による感染症危険レベルが2~1に下がったことに加えて、水際対策の規制緩和で、海外旅行のハードルは確実に下がっている」と指摘。特に12月や年末年始は多数の予約が入ったことで、「ポジティブな動きが見られている」と述べ、今後の需要回復に期待を見せる。

 

成田線A380は3月よりデイリー化

ファミリーへのアプローチを強化

 

 A380型機を投入する成田-ホノルル線については、3月6日よりデイリー運航となる予定(A380型機による運航は週3便、週4便はボーイング777-300ER型機による運航)。座席供給が強化されることから、菅野氏は「2023年はA380を中心に盛り上げていきたい」と意欲を示す。 同機材は、エコノミークラス席をベッドのように利用できるカウチシート「ANA COUCHii」を日本の航空会社で初めて採用するなど、ファミリー層に評判の高いプロダクトを展開しており、「ファミ リー層にA380の魅力を伝えていきたい」考えだ。
フ ァミリー層については、「コロナ前と比べて需要はまだまだだが、年末年始の期間を中心に戻ってきており、今後はより一層期待できる」と、期待を寄せる。

 

上級クラスの販促も引き続き注力

旅行会社の訴求力にも期待

 

 一方、ファミリー層に加え、好調なビジネスクラスの販促も引き続き強化していく。菅野氏は「時間やゆとりのある方に利用して頂けるよう、質の高いサービス提供へ向け、日々プロダクトやサービス面での開発を行っている」とアピール。 A380型機については、ビジネスクラスだけでなく、個室感覚のファーストクラス、73席もあるプレミアムエコノミーと、上級クラスが充実している。そのため、ビジネスクラスだけでなく、「A380が優位である部分を積極的にアピールしていきたい」と力を入れる。
 具体的な訴求方法としては、SNSプロモーションやキャンペーンを通じた一般消費者へ向けた訴求に加え、旅行会社へのアプローチも強化していく意向。菅野氏は「旅行会社は対面販売に強みがある。対面による訴求力を存分に活かして、旅の良さを伝えて頂きたい」と語る。
 また「ウェブサイトの活用やダイレクトなアプローチなどが今後より推進される中で、より良い形での販売サポートも行っていきたい」と、新たな展開にも前向きだ。
 菅野氏は「ANAは昨年7月からA380の運航を再開しており、今後も旅行会社と協力しながら大きなチャンスを活かしていきたいと考えている。続々と仕掛けることで、より良いものを提供し、ハワイへの旅行需要を盛り上げていきたい」と強調した。

 

文化交流イベント「ANA ʻAha Mele」を開催

「マラマハワイ」を現地イベントで実践

 

 ANAは、2019年に初開催した「ANA HONOLULU MUSIC WEEK」を「ANA ʻAha Mele(アハメレ)」としてリニューアル、昨年11月18~19日に実施した。持続可能な交流促進を目指し、ハワイの文化継承や環境保全をテーマにしたイベントで、ハワイ州観光局が推進する再生型観光「マラマハワイ」を実践した内容となっている。

 

昨年11月に開催した「ANA ʻAha Mele」の様子

 

 具体的には、ピアニストの辻井伸行氏による現地の小学生を対象とした音楽教室や、「ウクレレピクニック・コンサート」、ANAグループ社員による植樹など、旅行者だけでなく、地元コミュニティーも対象としているのが特徴。
 他にも昨年9月には「ANA×ホノルル海さくら ビーチクリーン」と題し、現地NPO団体「ホノルル海さくら」と一緒にビーチクリーン活動を実施。3回目となる今年は、アラモアナ・ビーチパークで75名以上が参加した。

 さらにワイキキとアラモアナを結ぶ「ANAエクスプレスバス」は、2019年4月に航空会社としてハワイで初めて導入した静かで環境負荷も少ない電気バスだ。

 

ANAエクスプレスバス

 

 「マラマハワイ」について、菅野氏は「理念に共感している。さまざまな取り組みを通じて、積極的に関わっていきたい」と語る。特に旅行会社で「マラマハワイ」を商品化する動きがあるなか、「SDGsへの関心が高いZ世代へのアプローチとして意義はあると思う。参画できる余地があれば前向きに参画していきたい」とのスタンスを見せる。
 さらに「ANA単独よりも旅行会社と一緒になって取り組むことが効果的」と指摘。例えば、「ANA ʻAha Mele」を絡めるなど、さまざまなアプローチを検討していきたい考えだ。

 

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