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2018.04.02

ウイングトラベル

出国税負担の日本人裨益を初めて予算要望

JATA、双方向交流視点に海外旅行政策提言

 日本旅行業協会(JATA)は3月30日、海外旅行政策提言をまとめ、観光庁に提出した。今回の「提言」がこれまでと違うのは、従来は文字通りの「提言」だったが、今回は25項目の「提言」のうち11項目を初めて「予算要望」とした。2019年1月からの国際観光旅客税(出国税)の徴収による日本人海外旅行者の受益を踏まえてのもので、出国者の約4割を占める日本人の出国税に対する「裨益」を予算要望という形で具現化した。
 ただ、明確な海外旅行のための予算化はこれまで前例がなく、今回の予算要望も「双方向交流」などの視点から実現をめざし、具体的な金額も初めてのために予想できないとしている。
 同日、記者会見したJATA海外旅行委員会副委員長の生田亨JTBワールドバケーションズ社長(4月1日からJTB常務執行役員・海外仕入商品事業部長)は、2030年の海外旅行3000万人、訪日旅行6000万人、合わせて「双方交流9000万人時代を目標に、5つのテーマ、10の提言を策定した」と強調した。
 2017年の日本人出国者数は1789万人、訪日外国人数は2869万人。一人1000円なら約460億円の税収、うち日本人は約180億円だが、訪日外国人はともかく、現状では日本人出国者への受益者負担の裨益は不十分と言わざるをえない。
 今回のJATA海外旅行政策提言は、1.政府推進課題の解決へ向けての課題、2.双方向交流の促進、3.安心・安全、4.旅行産業の価値向上・生産性向上、5.若者の国際化支援の5テーマ、10提言、25項目に分けた。25章のうち提言が12、予算要望が11、税制要望、実行推進が各1で、予算要望が一挙に増えた。
 そのうち観光新税導入に当たり、双方向交流の促進、旅行安全情報プラットフォームの構築、旅行産業の生産性向上、価値向上、旅行産業高度化のための人材育成の4つの柱から予算要望した。
 その中で、旅行安全情報プラットフォームの構築の予算要望は、2018年度観光庁予算で1億円が計上されており、これの継続、進化を求めた。
 また、政府の「明日の日本を支える観光ビジョン」に明記されているアウトバウンドの項目「若者のアウトバウンド活性化」に向けて、今回の提言では、双方向交流の促進で「青少年を中心とした相互理解を促進するモデル交流事業の実施」と若者の国際化支援で「グローバル人材の育成」を予算要望した。
 青少年の相互理解促進のモデル交流事業は、ロシア、中国、インドなどの観光協力MOU締結国や外交重点国を中心に、修学旅行を含む教育旅行、姉妹都市間交流事業のセミナー開催、モデル事業選定実施、学生交流プログラムを予算化して支援化する。
 また、グローバル人材の育成に向けて、若者の海外旅行を促進して裾野を広げるとして、パスポート取得手続きの簡素化・短縮化、観光庁の「若者の海外旅行の活性化に関する検討会」での議論を踏まえた若者の海外旅行に臨む「はじめの一歩」の支援、観光学科の大学生、観光庁が認めた大学・専門学校を対象に観光人材育成の海外短期留学支援を予算要望した。
 若者のアウトバウンド促進は、幼少時の家族旅行とともに、教育旅行、修学旅行で海外に行くことが最も効果的で、海外教育旅行、海外修学旅行に関する規制緩和、助成や若者のパスポート無償化などが期待されるが、現時点では省庁間の壁もあり、実現が難しい状況と判断した。
 また、JATAは今回の提言の中で唯一の税制要望として、社員旅行の要件見直しを求めた。IT企業などで社員旅行の価値が見直されていることに乗じて、現行の従業員50%以上を30%以上に緩和して実施率向上を求めている。
 JATAは今年、先行して訪日旅行政策提言を発表しており、今回の海外旅行の政策提言はそれに続くものとなる。JATAは、2017年3月に「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2017」に向けた提言書を提出しているが、海外旅行に関しては、2015年7月の「JATA政策提言−海外・国内・訪日旅行−」以来2年半ぶり。

 

※写真=記者会見する生田亨JATA海外旅行推進委員会副委員長