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2022.02.03

WING

第145回「日本が危ない」令和の鎖国政策を止めよ

水際強化が支持獲得の材料に
予約停止は航空局へ責任転嫁

 

 中国・武漢発の新型コロナウイルスによるコロナ禍も3年目となった。年明けから日本国内ではオミクロン変異株による第6波が急速に拡大している。首相、岸田文雄は外国人の新規入国を原則禁止している措置について「2月末まで骨格を維持する」と表明している。水際対策は国内の感染対策を整えるための時間稼ぎに過ぎず、すでに国内に蔓延しているにも関わらずだ。なぜ岸田は「令和の鎖国」を続けるのか。
 政府当局者はコロナ対策のキーワードとして「スピード感」と「強化」を挙げる。岸田は水際対策で外国人の入国禁止措置を早々に決めた。これが素早い対応として評価された。その一方で岸田は新型コロナウイルスの感染症法の位置づけに関しては、危険度が5段階で2番目に高い「2類相当」としているのを季節性インフルエンザ相当の「5類」に変更するよう求める声が出ていても「感染が急拡大している状況の中、変更するのは現実的ではない」と否定する。それはより強い措置を採った方が世論の支持を得やすいからだ。
 コロナ対策では安倍晋三、菅義偉の両政権が「後手に回った」との批判を浴び、支持率が低下、安倍の場合は病気だが退陣に追い込まれる要因ともなった。岸田はこれを見ていて、強い措置を早く出すことが肝要と「学習」したようだ。1月11日、就任から100日目を迎えた岸田はコロナ対応について聞かれると「スピード感を持って、山積する課題に一つ一つ決断を下し、対応してきた」と胸を張った。
 もっとも、威張れるほどではない。水際対策では、航空会社に国際線の新規予約停止を求めたもののすぐに撤回した。海外に在住邦人の一時帰国だけでなく、長期出張していた邦人まで帰国できなくなり、反発が広がったからだ。どの国でも自国民の保護が最優先事項であるにもかかわらず、その帰国すら認めないことは重大な問題である。
 岸田官邸はこの責任を国土交通省航空局に擦り付けた。官邸サイドは航空局の独自の判断で航空各社に要請したものであって、岸田や官房長官、松野博一はあずかり知らなかったと説明した。
 霞が関でこの説明を額面通り受け止める向きはほとんどなかった。出入国管理問題について詳しく知るある省の幹部は「この件では首相や官房長官は知らなかったかもしれないが、国交省は官邸に報告しながら進めている。現に航空局の誰も処罰されていないことからもわかる通り、官邸の責任逃れに過ぎない」と語る。

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