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2021.06.07

WING

空港に太陽光設置で2030年カーボンニュートラル

太陽光2300haで年100トンのCO2排出削減

 国土交通省航空局は6月4日、2030年に空港のカーボンニュートラル化を達成するとして、空港敷地内および空港周辺10キロ圏内の未利用国有地地における太陽光発電導入を加速する方針を明らかにした。航空局は全国の空港内の施設屋上部分などに約3700ヘクタール、空港周辺未利用国有地に約1万1300ヘクタール、合計で約1万5000ヘクタールの太陽光導入設置場所としての潜在力があると分析。このうち仮に2300ヘクタールを追加設置すれば、発電出力が230万キロワット、二酸化炭素(CO2)排出削減量が年間100万トン見込まれると試算した。ちなみに、空港内および周辺あわせて現状では約190ヘクタールの面積に太陽光発電パネルが設置されており、発電出力は現段階では明らかになっておらず、航空局の今回の試算では既存のものに加えて追加するものとして試算した。
 航空局はこのまま何ら対策を講じなければ、空港のCO2排出量は2030年には100万トンを突破すると危惧しており、潜在力を踏まえた空港の太陽光発電導入目標を検討した。
 航空局によれば、現状では空港施設内の照明や空調、航空灯火、そしてGSE車両から排出されるCO2は年間約89万トンに達しているという。このうち、照明・空調が78万トンで、航空灯火は2万トン、GSE車両が9万トンとなっており、2300ヘクタールに太陽光パネルを設置することができれば、空港の施設・車両から排出されるCO2量を実質的にカバーすることができるとの見方を示した。その上で、GSE車両のEV・FCV化など、その他の対策を進めることで、空港から排出されるCO2を削減を深掘りすることを目指す方針だ。
 空港施設(照明、空調、灯火)および空港車両から排出される89万トン以外にも、航空機の駐機中および地上走行によって年169万トンが排出されていることから、例えばGPU(固定式・移動式)の導入促進、高速離脱およびインターセクションディパーチャーのための誘導路整備、ハイドランドシステム導入などといった航空機側の対策の導入・検討を進めることはもちろん、空港施設・車両から排出されるCO2を太陽光導入などによって削減することで、航空機の地上排出分をカバーすることを目指す。

 再エネ導入スキームを検討
 自治体や空港・電気関係者で共同実施者

 また、航空局は空港における再生エネルギー導入などのスキームについても検討した。
 航空局としては、空港内用地を所有する空港管理者、空港周辺の国公有地などを所有する国・自治体が、空港管理者や空港運営権者、空港ビル会社、地元自治体、空港関係事業者などが一体となり、効率的に太陽光発電の再生エネルギーを導入していくことが良いのだろうとの認識を示しつつ、小売電気事業者や発電事業者ら電気関係事業者と共同プロジェクト実施者を構成することを想定。再生可能エネルギーで生み出した電気を自家消費、余剰電力の売電、さらには空港CO2削減目標達成に活用するほか、削減目標を上回る分はクレジット登録し、国際民間航空機関(ICAO)の「国際線のカーボンオフセット及び削減スキーム」(CORSIA)のなかで日本のクレジットが承認されれば、国際航空のCO2削減にも貢献することができるというスキームを検討している。
 ちなみに、再生エネルギー導入する主な方法としては、空港関係者が個別に設備を導入する方法と、PPA(Power Purchase Agreement)モデル、いわゆる第三者所有型が考えられるとした。
 空港関係者が個別に設備を導入する場合、コストが大きくなる傾向にあるものの、空港関係者間の調整が必要ないことが特徴。ただ、非効率的になる懸念がある。
 一方、PPAモデルを活用して再生エネルギーを導入する場合では、共同プロジェクト実施者が導入するケースと、共同プロジェクト実施者とパートナーシップを結んだ他企業などが導入するケースが考えられる。
 前者の場合、参加企業で再生エネルギー導入費を負担するため、比較的コストが高くなる恐れがあるが、全体としては導入効率が向上するほか、コスト分担によるメリットが見込まれる。
 一方、共同プロジェクト事業者とパートナーシップを締結した他企業が導入するケースでは、空港関係者のコスト負担を最小化することができる一方で、自家消費や売電などによる収益性は小さくなる可能性がある。

 太陽光と蓄電池・水素組み合わせも

 太陽光発電は気象条件などによって、その発電出力が大きく変動してしまう。一方で蓄電池システムを導入することなどにより、余剰電気を充電、あるいは不足分を蓄電池システムから補うことで、主力電源として安定的に活用することが見込まれる。
 航空局としては、すでに空港に導入されている非常用発電機に、再生エネルギーを組み合わせて電源を多重化することによって、緊急時や災害時における電気の供給可能な時間を延ばすことのほか、エネルギーを自給することができる可能性があることを指摘。空港は災害時の拠点であり、蓄電池システムを導入すれば、災害対応力向上などにも貢献することができるとの見方を示した。
 さらに、水素を持続可能な航空燃料(SAF)の製造・利活用する仕組みも考えられるとして、太陽光発電導入と組み合わせた方策も検討していく方針だ。
 ちなみに航空局は蓄電池システムを導入しない場合と、蓄電池システムを導入した場合のそれぞれについて、クレジット創出有無を含めた事業収支を試算した。
 蓄電池システムを導入しない場合、空港CO2削減は4割程度に落ち込む一方、導入する場合には空港CO2削減が10割見込むことができる。ただ、蓄電池システムありの場合には、支出が収入を上回って赤字になることが見込まれるほか、蓄電池なしであってもクレジットを創出する場合は、若干支出が収入を上回るとの結果が得られ、蓄電池システムなしでクレジット創出なし以外のケースでは事業採算割れとなってしまっている。
 この結果について航空局は「経済産業省の審議会資料、全国的な数字を採って一旦計算してみた。今現在、FIT売電であれば収支が取れそう」ということまで明らかになってきたという。さらに「単価、コストなどが各空港で異なってくるだろうし、全国的にざっくりと試算した場合の傾向を示したものだ」と評価。その上で、「クレジット創出、蓄電池を導入して環境価値を高めていくことが今後進めていきたいところであり、こうしたギャップを埋めていくべく、様々な検討を進めていきたい」とした。
 
 重点調査空港の公募スタート
 7月に審査・決定、8月に調査開始

 航空局は6月4日、空港のカーボンニュートラル化を目指し、「重点調査空港」の募集を開始した。「重点調査空港」を公募することで、空港施設・空港車両からのCO2排出削減を進めると共に、空港の再エネルギー拠点化などについて具体的な検討を進めていく。
 各空港の特性に応じた取組内容の検証や事業スキーム構築などついて事例的・実証的な調査を行うことで、全国の空港におけるCO2排出削減に資する検討を進めていく考え。
 公募対象は全国の空港で、空港単位もしくは複数空港のグループでの申請すうrことも可能。公募は6月28日まで行い、7月頃には選定審査・決定する。重点調査は8月頃に開始する計画だ。

※写真=空港における太陽光発電導入拡大で2030年にカーボンニュートラルに