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2019.07.01

WING

日本のサブオービタル機開発ベンチャーたちの今

官民協議会発足で加速、欧米巨大ベンチャーに追い付け

 先日、ようやくサブオービタル機の官民協議会が発足し、サブオービタル飛行に関するルール作りに向けて歩みを進めることになった日本。まずは実証実験を実施することができる環境整備に乗り出す。世界に目を向ければ米国のヴァージン・ギャラクティックやブルーオリジンといった巨額の資金を武器とした強力なプレイヤーが飛行実証を積み重ねるなど、サブオービタルの弾道飛行による商業運航がいよいよ迫ってきた様相だ。
 そうしたなかで奮闘するのが、日本国内のPDエアロスペースとSPACEWALKER(スペースウォーカー)という2社だ。欧米の宇宙ベンチャーには大きく「差」を付けられてしまっているが、その開発作業を急ぐ。彼らの現状の立ち位置とは如何なるものか―――。

 

■「レガシー」と「ニュー」スペース融合したスペースウォーカー
来年にも実験機が1トン級機がモハベ砂漠飛行

 

 スペースウォーカーの本社は東京都港区。その開発拠点は、東京理科大学野田キャンパスだ。かつては九州工業大学が開発拠点だったが、創業者の一人である米本浩一最高技術責任者(CTO)が東京理科大学へと移籍したことを機に、その開発拠点が東京理科大学へと移った。同社はIHIグループや川崎重工、宇宙航空開発機構(JAXA)の支援も受けている。
 米本CTOによれば、スペースウォーカーの目標は「誰もが飛行機に乗るように、自由に宇宙を往来することができるような世界を実現する」ということ。この大きな目標に向けて、2027年に有人サブオービタル機を初飛行することを目指して、開発作業を進めている。
 スペースウォーカーには、これまで日本のロケットや航空機開発を支えてきた、いわゆるレガシースペースのメンバーが在籍。米本CTOのように、大学に籍を置きながら宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共に研究開発に勤しんできたメンバーはもちろん、大手重工に勤務して宇宙開発などに携わった経験を有するメンバーが存在する。その一方、これまで宇宙・航空機開発とは無縁である公認会計士やデザイナーなどのメンバーも加わっており、レガシースペースとニュースペースの人材を融合したかたちで、開発にあたっていることが大きな特徴の一つだ。
 これまで北九州市平尾台で実験機「WIRES」を使った飛行実験を実施してきており、「次の1トン級の機体については、米国モハベ砂漠で実験する」計画だ。その成果をサブオービタルのスペースプレーンへと生かしていく。
 米本CTOによれば、モハベ砂漠でまずは「WIRES13号機」を投入して飛行実験する。この「WIRES13号機」は予備ロケット実験機の位置付けで、その後同じモハベ砂漠で飛行実験する「WIRES15号機」の予備ロケット実験となる。

 

無重量実験提供機、2022年飛行へ
基本設計を4月開始、有人機へ続く開発系譜

 

 こうした「WIRES」実験機を用いた技術実証を進め2027年は宇宙旅行用のスペースプレーン初飛行することを目指すスペースウォーカー。有人の宇宙旅行を前に、いくつかの商業サービスを先行して提供することを目指している。

 

■航空宇宙産業メッカ・愛知発のPDエアロ
新エンジン飛行実証へカウントダウン

 

 2007年5月に創業したのがPDエアロスペースだ。HISや全日空(ANA)、アイシン精機らの出資を受けて、三菱重工で新型機開発などに携わった経験のある緒川修治社長が立ち上げた宇宙機開発ベンチャーだ。

 

7号機で高度100キロに、来年半ばにも宇宙へ
6号機は今年10月に新エンジン搭載で飛行実証

 

 PDエアロスペースでは現在、「PDAS-X06」(6号機)および「PDAS-X07」(7号機)の開発作業を進めているところ。このうち7号機は宇宙空間に到達するもので、JAXAと協力しながら基礎設計を進めているところにあるという。

 

※画像=スペースウォーカーは米国モハベ砂漠で実証実験を計画中だ。2022年にも無重量実験機を空へと送り込む(提供:スペースウォーカー)

※画像=PDエアロスペースは今年10月にも6号機の飛行実験に着手する。同機でジェット-ロケットモードの切り替えエンジンを飛行実証する来年には7号機が飛行実証する計画だ(提供:PDエアロスペース)

※写真=米国のヴァージン・ギャラクティック社やブルーオリジンは大きく先行する(提供:ヴァージン・ギャラクティック)