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2023.05.29

【潮流】パスポート申請が急増

 新型コロナウイルスの感染症法上の規定が2類から5類に変わったことで、日本人海外旅行が本格的な回復に向かいそうだ。東京の有楽町や新宿のパスポートセンターには連日、多くの人がパスポートの申請に訪れている。
 また、大阪、名古屋、福岡などの国際線就航都市のパスポートセンターにもパスポート申請者が詰めかけている。コロナでパスポートの有効期限が切れた人も多く、海外旅行の行くために改めてパスポートを申請する人が増えている。
 日本人のパスポート保有率は、コロナ禍で大きく下がった。2022年の一般旅券発行数はコロナ前の2019年比で72%減の約122万冊と減少し、有効期限切れで失効した旅券数よりも少なかった。
 この結果、2022年末の有効旅券数は21年比11%減、19年比29%減の約2092万冊まで減少。日本人のパスポート保有率は19年から6.7ポイント下降して17.0%まで低下した。国民の6人に1人しかパスポートを持っていない計算になる。

 2019年のパスポート保有率は23.7%だったが、まずは海外旅行に行くために不可欠のパスポート取得を多くの人が申請しているところをみると、この1年で一挙に挽回する可能性もあり、いよいよ海外旅行の本格回復が始まったとみていいだろう。
 JTBが調査した夏休みの海外旅行の予約状況を見ても、ダイナミックパッケージやフリープランの 添乗員なしの旅行は、全方面合計で前年比約202倍と大幅に回復した。前年同時期に販売していた方面がハワイ、アメリカに限られていたこともあるが、海外旅行が本格的に回復していることが見て取れる。
 販売が好調な方面はハワイ、グアム、韓国、シンガポール、台湾などだが、旅行費用が高騰していることもあり、まずは近隣アジアからということになろうか。
 一方で、旅行業界としては、収益性から添乗員付きツアーの販売を拡大したいところだ。JTBの調査では、海外旅行の添乗員付きツアーは、ヨーロッパが人気方面となっているという。食事や観光に加え、コロナ禍を機に、より手配しにくくなった博物館や美術館の予約手続きなどが含まれていることが人気の理由のようだ。
 ヨーロッパツアーのシーズンは秋がターゲットになるが、この夏からアジア、ハワイ、グアムなどから海外旅行の回復が本格化し、秋以降にヨーロッパやアメリカ本土などのロング方面に拡大していくことが、来年の完全回復に繋がっていくのだろう。
 また、JTB総研の調査によると、国民の旅行意欲は、新型コロナの流行が始まった2020年の調査開始以来で最高となり、とくに海外旅行は若い世代で今後予定、検討している人が増加しているとの結果が出た。
 この調査で、全体の14%が海外旅行に行くと回答。20代男性の28.7%が最も高く、次に20代女性の27.6%、30代の男性22.4%と続いており、20〜30代を中心に海外旅行に行きたい人がパスポートセンターを訪れているようだ。一方で、60歳以上の男女は安全・安心面から海外旅行はまだ様子見の段階と見られる。
 観光庁と日本旅行業協会(JATA)は、日本人海外旅行者数を2019年レベルの2000万人に戻すことをめざし、海外旅行の機運醸成を図るために、「今こそ海外!宣言」を発出した。その目玉の一つがJATAが開始した「パスポート取得費用サポートキャンペーン」だ。
 一般旅券(10年間有効)の新規または切替申請を行い、対象期間内にJATA会員旅行会社を通じて海外旅行を予約・手配した一般旅行者の中から抽選で総勢3210名がパスポート費用の半額補助を受けられる。
 今回のパスポート取得申請者の急増は、JATAによる「パスポート取得費用サポートキャンペーン」効果も確実に現れていると思われる。
 「今こそ海外!宣言」により海外旅行の本格回復へ潮目は大きく変わりつつある。この流れに旅行業界全体が乗らなくてはならない。間を置くとアナウンス効果はどんどん薄れていく。「今こそ海外旅行!」を常にアピールしていくことが必要だ。(石原)