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2017.10.23

旅行商品のスマホ化

 財団法人日本交通公社が発行した2017年の旅行年報を見ると、日本人の海外旅行志向が変わってきていることが分かる。昨年の日本人の海外旅行者数は前年比5.6%増の1712万人と4年ぶりにプラスに転じた。要因は円高傾向の進展と中国・韓国の回復を挙げている。
 全体の1712万人を需要別に分けると、観光需要が2.9%増の1117万人と伸びは3%未満にとどまり、ビジネス需要が24.8%増の453万人と大きく伸びた。つまり、円高と対中ビジネス復調に伴いビジネス需要の拡大が全体のプラスに大きく寄与したことが分かる。
 この1712万人を男女別・年代別に見ると、女性10代13.2%増、女性20代13.0%増が目を引く。これをもってして「若い女性が海外旅行に戻ってきた」とするのだろうが、そこはもう少し分析が必要としても、女子旅の効果は大きいのかもしれない。女性40代も10.0%増で、10、20、40代の女性が二桁以上の伸びを示したことが、日本の海外旅行者数を牽引したとみられる。
 昨年の日本人出国者数は、全ての男女別・年代別で前年比プラスを記録している。この分母が総数の1712万人ではなく、レジャー需要の1117万人で分けたら、これらの女性層の伸びはさらに突出したものになったと思われる。
 地方別に見ると、海外観光旅行の地方格差がさらに広がった。海外出国者数は北海道で9.2%増、東北で4.1%増と伸びたが、観光需要に限定すると、北海道は12.4%減、東北は25.8%減と大きく減少し、地方ブロック別でマイナスはこの2地域のみだった。
 昨年は日本人の海外旅行者数はプラスに転じたものの、旅行会社の海外旅行取扱額はマイナスだった。大手旅行会社の売上高を見ても、海外旅行事業のマイナスが影響して全体の業績が低迷した。
 各社ともに経営改革の課題として、OTA(オンライン・トラベル・エージェント)との競合による海外旅行取扱額の減少を挙げており、今年はJATA(日本旅行業協会)にアウトバウンド促進協議会が設立され、旅行会社の海外旅行収益拡大に向けて、業界全体が動き出したことは周知の通り。
 日本交通公社の調査によると、海外旅行の情報収集でインターネット検索は男女ともに35%程度が利用し、最も多い情報収集手段となっている。しかし、旅行予約では、ネット専門予約サイトが11-12%、旅行会社サイトが13-14%、宿泊施設サイトが4%で、旅行会社の店舗が30-33%と最も利用が高いとしている。
 パッケージツアーの利用をみると、海外旅行は団体型が32.4%、ダイナミックパッケージやフリープラン型が28.1%で、国内宿泊旅行と比較して、パッケージツアーの利用はまだまだ高いとした。しかし、2016年の旅行会社の海外取扱額の減少を見ると、パッケージツアーの販売や旅行会社の店舗利用はもっと比率が下がっていても不思議ではない。
 三菱UFJリサーチ&コンサルティングによるオンライン旅行取引サービス調査によると、海外旅行のオンライン予約はPCが64.7%、スマホが23.3%で、旅行会社の店頭などの予約は35.6%にとどまる。とくに、30代以上はオンラインPCが半数を超え、スマホは20代が27.6%に高まる。しかも、これは昨年9月の調査で、2105年を反映したもの。現在はスマホが急激に伸びているとみられる。
 オンラインで旅行を予約する理由は、店頭に行かずに済む65.7%、早朝・夜間など都合が良い64.0%、空き状況がすぐ確認できる62.1%、検索でき探しやすい47.0%など、利便性の良さが圧倒的だった。
 この調査では、オンライン予約の海外旅行の内容は、航空券62.5%、宿泊施設37.5%と単品が多いものの、フリープラン20.0%、パッケージツアー7.9%と増えつつある。
 これらの調査結果を見ると、ダイナミックパッケージ、フリープランを中心にパッケージツアーもオンラインの時代を迎えている。高品質・高額の旅行商品は別としても、大手旅行会社は売上の「本丸」であるパッケージツアーの完全オンライン化、スマートフォン対応していくことが求められる。(石原)