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2019.09.09

観光庁アウトバウンド予算

 観光庁の2020年度概算要求額が決定した。総額は前年度比8%増の771億円で、東北復興枠を除く一般会計要求額は11%増の737億円と1割以上の伸びを示した。2020年度の訪日旅行者4000万人、訪日消費額8兆円の実現に向けて、「速効性」を重視した予算要求となった。
 このうち、出国税(国際観光旅客税)の税収活用関連予算は7%増の520億円で、ほぼほぼ訪日旅行(インバウンド)向けに充当される。
 出国税充当事業は、①ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備、②国内の多様な魅力に関する情報の入手の容易化、③地域固有の文化、自然などを活用した観光資源の整備などによる地域での体験滞在の満足度向上−の3本柱。
 2018年の外国人出国者3200万人、日本人出国者2000万人の合計5200万人から算出したという。さて、この中に日本人出国者2000万人が恩恵を受ける事業はあるのか。
 まず、①のストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備だが、この中では、「最先端技術を活用した革新的な出入国審査等の実現」と「旅行安全情報共有プラットフォームを通じた旅行者の安全確保」は日本人の海外旅行にも寄与する。
 とくに、旅行安全情報共有プラットフォームは、海外旅行の安全・安心で最も重要な安否確認のための「ツアーセーフティネット」が今年7月1日に公開された。今後は海外安全情報の「たびレジ」の情報発信と「ツアーセーフティネット」による海外旅行の安否確認の高度化が求められる。
 また、一般会計の中では、「教育旅行を通じた青少年の国際交流促進」として、新規に2000万円の予算が要求された。諸外国とのバランスの取れた相互交流や各国の将来を担う青少年交流のより一層の拡大に向けて、教育旅行による双方向交流拡大を図る。とくに、2020年度は、中国に重点を置いて事業に取り組むとしている。
 日本から海外への教育旅行・修学旅行は少しずつだが増加傾向にある。2020年度からは都立高校の海外修学旅行の規制が緩和され、4泊5日が可能になる。修学旅行の場合、安心・安全が前提になるが、今後の伸びに期待が持てる。
 若者の海外旅行促進においては、海外修学旅行の普及が最も効果的であることは論ずるまでもなく、旅行業界からも海外修学旅行拡大への期待は大きい。
 そうした中で、中国が重点市場に挙げられたのは、中国をはじめ一部の国の修学旅行が減少傾向にあり、日本との生徒数の格差が大きいことから、諸外国との首脳会談でもこの問題が取り上げられ、教育旅行の相互交流の拡大が求められたという。
 2020年度の取り組みは、関係省庁、経済界、観光・旅行業界の関係者からなる協議体を設置し、教育旅行の現状分析、課題整理・解決への提案、それを踏まえて、海外教育旅行促進に向けて、諸外国との協議、国内で普及・啓発活動を展開する。
 海外修学旅行の最大の課題は、海外に子供を行かせることに不安な保護者に対して「安全・安心」を説得することにある。海外修学旅行の普及に向けて、具体的な行動計画を策定してほしい。
 「ハタチの一歩−20歳 初めての海外体験プロジェクト」が実施されているが、二十歳になる前の海外体験がとても重要に思う。
 旅行業界では、若者の海外体験を促進するための「ボランティアツアー」や「スタティツアー」が企画されている。こうした「若者の海外体験ツアー」をもっと普及させるべきではないか。
 「若者の海外体験」を促進することが人材育成の観点からも最も重要で、こうした若者の海外体験ツアーに対して、行政が支援することを要望する。(石原)