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2017.07.31

「官邸主導」でアウトバウンド振興

 今年の日本人の海外旅行者数は、2012年以来の1800万人を超えることが予想されている。6月までで前年比6.3%増の840万6500人。このままの伸びで推移すれば1820万人前後まで届く。8%台の伸びで推移すれば、過去最高の2012年1850万人に達する可能性もある。
 デスティネーション先として、ハワイが好調、ヨーロッパが回復、中国も戻りつつある。その一方で、韓国は4月以降、北朝鮮のミサイル問題等により再びマイナスに転じた。不確定要因はあるが、総じて回復基調にある。
 但し、これをバネに来年以降に旅行業界悲願の2000万人に到達するかと言えば、そこまでの勢いがあるかどうか。
 日本旅行業協会(JATA)はアウトバウンド促進協議会を設置し、政府観光局、日本ツアーオペレーター協会(OTOA)などと協力して、アウトバウンド振興を図っているが、成熟市場というよりも停滞市場にある日本のアウトバウンド市場で、民間がなすべきことは限られる。
 アウトバウンド振興について、政府がすべきことは沢山あると思うが、国益になるインバウンド振興と比べて、なかなか腰が重いのが実情だ。「観光ビジョン実現プログラム2017」で、双方向交流の拡大、若者の海外旅行振興などが謳われているが、具体策が示されていないのが現状だ。
 例えば、旅行業界、経済界などから提言されている若者のパスポート無料取得、公立高校の海外修学旅行拡大などは具体的に議論されていない。
 ただ、働き方改革と連動した「キッズウィーク」の導入に向けた官民会議が開催され、学校休業の分散化と有給休暇取得促進が議論されている。キッズウィークの導入は「観光ビジョン2017」にも盛り込まれており、ぜひとも実現を期待したい。
 官邸主導について、いろいろと議論はあるが、インバウンド振興のためのビザ緩和策などは「官邸主導」だからこそスピード感を持って実現したところがあり、これはアウトバウンド振興でも同様と言える。
 政府は「観光ビジョン2017」の中で、「若者のアウトバウンド活性化については、民間有識者・関係省庁からなる『アウトバウンド活性化に関する検討会』を立ち上げ、日本旅行業協会(JATA)のアウトバウンド促進協議会と協調し、若者のアウトバウンド活性化に向けた具体的な方策を検討する。その検討結果を踏まえ、若者割引などのサービス開発・普及など若者層の海外旅行を促進するための効果的な取り組みを推進する」と明記している。
 とくに、前述の若者のパスポート無料取得、公立高校の海外修学旅行促進などは、省庁や地方自治体が絡む事案だけに、ここは「官邸主導」で議論して、アウトバウンド振興、双方向交流の実現を果たしてほしい。
 また、若者のアウトバウンドを活性化するには、国際線にLCCを積極的に導入することが必須条件である。これは若者だけでなく、全体の海外旅行者数を拡大する意味でも最も重要なことと考える。
 若者、家族が海外旅行する上で、国際航空運賃は高過ぎる。海外旅行が二極化する中で、安く旅行を求める層は多数存在し、「てるみくらぶ」がその受け皿の一つとなったことも事実だ。
 関西−ホノルル線にエアアジアXが就航し、スクートも就航を表明するのは、低運賃でハワイに行きたい旅行者が多数存在するからだ。同様に、グアムは航空運賃が高いため、旅行会社がLCCチャーター便を利用したツアーを商品化している。
 アジアからの訪日外国人旅行者と比べて、日本人が海外に行きたくても行けない現状がある。首都圏、地方空港を問わず国際線LCCの乗り入れを促進させるべきだ。
 本邦だろうと、海外だろうと、航空会社の籍は問わない。国際線LCCの導入を促進し、アウトバウンドの活性化を図ることを期待したい。(石原)