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2017.07.10

新たな欧州旅行に期待

 JTBが発表した今年の夏休みの旅行動向によると、この夏の海外旅行者数は前年同期比3.4%増の273万人と2012年に次ぐ過去2番目となり、1人当たりの海外旅行平均費用は11.9%増の24万2000円、総海外旅行消費額は15.7%増の6606億円と近年にない二桁増が予想されている。
 とくに、アンケート調査では、今夏は日並びによって長期休暇の取得が可能のため、昨年よりも収入減を感じている人が多い反面、昨年夏よりも遠くへ旅行したい人が多いという。
 人気の方面を見ても、ヨーロッパは北欧、ドイツ、スペインなどが好調で、また、ハワイ、米本土・カナダの北米、オーストラリア・ニュージーランドのオセアニアも高いプラスが予想される。
 中でも、ヨーロッパは前年比8%増と最も高い伸びを示している。テロの不安は依然として残るが、テロはもはやヨーロッパに限ったことではなく、日本でも法案の是非は別にして、「テロ等準備罪」が成立したように、テロに対して心構えを持つことは、とくに海外を旅する上では必然になりつつある。
 テロに対して最新の情報を収集して万全の注意をすることは大切だが、テロが万が一起こりうることを受け止めて、心の準備をしていくことが何よりも必要で、ヨーロッパへの旅行の回復は、そうした方向に向かっている証ではないかと思う。
 昨年の日本旅行業協会(JATA)のテーマ「海外旅行の復活」は、2012年以来、4年ぶりに海外旅行がプラス基調に転化したことで達成された。ただ、議論されたように海外旅行はプラスになっても、旅行会社の取扱いが上向かないことが問題で、そのために今年のテーマとして、田川博己会長は年頭にあたり、「海外旅行復活と同時に旅行会社の海外旅行取扱いを増やし、マーケットの支持を取り戻し、旅行会社の真価を発揮する年とする」と決意表明した。
 そのために、JATAはアウトバウンド促進協議会を設立し、既に、方面別に5チームに分けて具体的な活動を展開している。
 その中でも、ヨーロッパは旅行会社の収益性が高いだけに、ヨーロッパが回復することにより、旅行会社の取扱いが増える。ヨーロッパチームがアウトバウンド促進協議会の「命運を握る」と言っても過言ではない。
 ヨーロッパ部会では、様々な討議が重ねられている。ヨーロッパチーム部会長の古木康太郎グローバルユースビューロー会長によると、一定の評価を得た「ヨーロッパの美しい村30選」に続く企画として、景観、食、祭り、コンサートなどのイベントなどをテーマにした企画が上がっているという。
 また、政府の「明日の日本を支える観光ビジョン」と連動して、若者のヨーロッパ旅行を促進する方策なども議論されている。例えば、若者が旅行しやすいように宿泊施設、鉄道などの交通機関の割引など、旅行の低廉化を図る方法なども話し合われている。
 その中でも、かつてヨーロッパ旅行の代名詞の一つだったドイツ「ロマンティック街道」のような新たな「欧州の景勝ルート」(仮称)が検討されている。成功した「美しい村30選」に続く企画で、その中には前述の景観、食、祭り、イベントなどが盛り込まれた複数のルートが選定される。
 今から30年前にハネムーンで、ヨーロッパ旅行をした人は非常に多い。その中心的な存在が「ロマンティック街道」だった。その人達も60〜65歳。団塊世代の次の世代、「定年ど真ん中」の世代だ。
 旅行業界が欧州の景勝ルートを設定することで、新しい周遊型のツアーの造成が期待される。各国の観光局によると、日本に知られていない景勝ルートは沢山あるという。これを機会に、新しく設定してもいい。自然・歴史・文化・体験・ガストロノミーなどの要素を加えて、ぜひとも実現してほしい。(石原)