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2025.10.16

ウイングトラベル

★訪日インバウンドの力強い成長軌道を津々浦々へ

 村田観光庁長官「誘致強化と国民生活の両立徹底」

 観光庁の村田茂樹長官は10月15日に行った定例会見で、過去最速で3000万人を突破した訪日外客数の動きについて「引き続き力強い成長軌道に乗っている。この流れを継続させるために戦略的な訪日プロモーションと地方誘客を積極的に進めていく」考えを改めて強調した。その一方で「観光の持続可能性を高めることが大前提である」と述べ、オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた取り組みの推進を始め「国民生活に悪影響を与えないように、訪日インバウンド誘客推進と両立するための施策を徹底していく」と語った。

 訪日外客数過去最速で3000万人超え  年末に向けてさらなる旅行需要の高まりに期待

 9月の訪日外客数は20カ月連続で単月過去最高を更新する326万7000人となった。その結果、今年1~9月の累計は前年比17.7%増の3165万人となり、過去最速で3000万人の大台を突破する結果となった。

 この要因について村田長官は「訪日需要が堅調なことに加えて、航空便の運航本数がコロナ禍から回復してきたことが奏功している」と分析した。

 年間の訪日外客数の見通しについては「訪日インバウンドは様々な要素の影響を受けることから言及することは差し控えたい」としながらも「10月以降は紅葉シーズンでもあるほか、クリスマス・年末年始に向けてさらなる旅行需要の高まりに期待したい」と述べた。

 観光の持続可能性を高めることが大前提  オーバーツーリズム対策、予算確保も含め強化

 一方で足元の状況を見ると、外国人政策に対する世論の関心が高まっている中で、オーバーツーリズムへの対策やマナー遵守への対応を求める声も大きくなってきている。オーバーツーリズム関連については今月に入り、自民党の観光立国調査会においてワーキンググループが立ち上げられ議論が始まるなど新たな動きも見られている。

 そのような状況の中で村田長官は「訪日インバウンドについては旅行者数、消費額ともに非常に好調な状況が続いている。その一方で一部地域で旅行客の偏在傾向も見られている。観光庁としてはオーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージに基づき、地域の実情に応じた取り組みを国として総合的に支援しているところだ」と説明。その上で、今後の観光振興にあたっては「持続可能性を高めることが大前提である」という考えを示した。

 オーバーツーリズム問題については、来年度から始まる「第5次観光立国推進基本計画」の議論を行っている交通政策審議会観光分科会でも大きな論点の一つとして挙げられているところだ。村田長官も「訪日インバウンドの受け入れが国民生活に悪影響を与えないように、施策の強化やそのために必要な予算の確保も含めてしっかりと取り組んでいきたい」と語った。

 訪日客の買物消費動向、状況引き続き注視  免税制度、消費下支えで重要な役割

 会見と同日に発表された今年7-9月期の訪日外国人旅行消費額は同時期として過去最高となる2兆1310億円となった。ただ、買物代の消費額については前年を下回る状況となっている。この動きについて村田長官は「消費額全体は力強い動きを見せていると考えているが買物代については減少している。買物消費は非常に重要な要素であると考えているので、もう少し状況を注視しておく必要があると考えている」と述べた。

 外国人旅行者のショッピング関連では観光・小売関連の業界団体から消費税免税制度の堅持を含めた提言が中野国土交通大臣に提出されたところだ。免税制度について村田長官は「免税制度は買物消費を下支えする重要な制度であると認識している。そうした中で免税制度を活用しながら引き続きインバウンド消費の拡大に努めていくとともに、来年11月に予定されている『リファンド方式』の着実な実施に向けて取り組んでいきたい」という考えを示した。

 大阪・関西万博、観光促進に一定の効果  愛知のツーリズムEXPOとあわせ、一層の需要喚起に期待

 会見では13日に閉幕した大阪・関西万博の観光への影響についても触れられた。  村田長官は「観光庁として万博をきっかけに、大阪を始め日本各地を訪問してもらうような取り組みを関係団体とともに取り組んできた」と述べた上で、国内旅行については4-6月期の調査において、大阪府を目的とした国内旅行の延べ旅行者数が前年同期比で8割増加。旅行会社の関西方面商品の取扱額も10~15%程度増加したことを紹介した。

 また、訪日インバウンドについては民間の調査で万博からゴールデンルートの訪問に加え、広島、金沢、高山への滞在が見られたという結果についても触れた。そして「このような状況を総合的に踏まえると、万博を契機として日本人の国内旅行増加と訪日旅行者の関西以外への誘客という点において一定の効果を生んだ」と述べ、観光波及効果が見られたことを強調した。

 あわせて、9月末に愛知県で開催されたツーリズムEXPOジャパンについても触れた。村田長官も会場を訪れ、国内外からの出展ブースを見学しながら「多くの人がツーリズムEXPOに対して期待を寄せていたことを肌で実感したところだ」と述べた。また、来場者数についても当初目標としていた10万人を大きく超えたことについては「中部・北陸エリアを中心とした事業者や自治体など関係者が一丸となって集客のプロモーションに尽力した結果であると認識している」と感想を語った。

 そして「大阪・関西万博ではパビリオン出展において諸外国との友好関係のさらなる進化が個人レベルでも進んでいることを実感した。ツーリズムEXPOの賑わいとあわせて、この関心の高まりが今後のアウトバウンドの拡大につながることを期待している」と述べた。

 あわせて、2027年には横浜で国際園芸博覧会(Green×Expo2027)が開催される。村田長官は「国際的イベントが間を空けることなく、日本で開催されるということを好機に捉え、さらなる日本への誘客と、アウトバウンドの促進につなげていきたい」と強調した。