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2022.01.13

コロナ後のカナダの 新しい旅のスタイルを提案 カナダ観光局/チームカナダ

海外旅行の本格的な再開が期待される中、カナダ観光局はコロナ後の新しいカナダの旅のスタイルを提案すべく、旅行業界へ向けた活動を強化している。「カナダならでは」を追及し、地元の人とのつながりや自然、多様性、またより深い体験を旅の中に織り交ぜることで、他にはない「カナダならでは」の旅を旅行会社との協業で創り上げていく意向だ。
そんな新しいカナダの旅のスタイル、また今後の旅行会社へ向けた活動、アプローチについてカナダ観光局日本地区代表の半藤将代氏、またカナダ観光局と連携して活動する「チームカナダ」各州/準州の観光局に話を伺った。

カナダ観光局 半藤将代 日本代表

 

年明け以降、本格的な旅行再開に期待
万全の態勢で日本の皆様を歓迎

カナダ観光の現状について

 9月7日に国境が再開して、日本を含む海外からの観光客を受け入れ始めたところ。カナダ側の準備は整っている。両手を広げ、日本の皆様をオープンハートの気持ちでお待ちしている。
 一方、カナダ側のサプライヤーは、長く休業したものの、補償によりそのほとんどが営業を継続している。ただ、ホテルやアクティビティー、アトラクションのスタッフが一時的に減っているところもあり、現在はカナダ国内やアメリカからの観光客を主に受け入れている中、受け入れ態勢を再び構築し直している状況にある。
 年明け以降、日本からカナダへの観光が本格的に再開した際は、万全な態勢で安心して日本からカナダへお客様を送客できると思っている。

 

コロナ禍で日本とカナダの結びつきの強さを実感
オンラインツアーでより深い体験、渡航意欲に

長いコロナ禍の中で感じたことは?

 約18か月間、日本とカナダはほぼ行き来ができない状態が続いていたが、逆に日本とカナダの結びつきの強さを感じた。この間、常にカナダ観光局の本部やパートナーである各州/準州、またDMOやサプライヤーとディスカッションを続けてきた。カナダ側と日本側の旅行会社同士のつながりも強く、コロナを乗り越えてよりお互いが幸せになれる観光の形を改めて作っていけたらと思う。
 コロナ禍の中で、カナダ側のサプライヤーやガイド、オペレーターがウェビナーやオンラインツアーを通じて日本のお客様とつながっていたのも強く感じた。カナダは自然がメインのデスティネーションだが、自然だけでなく、その背景にある文化や歴史、いろいろなコミュニティーのストーリー、また四季折々の変化など、より深掘りした内容をウェビナーやオンラインツアーで体験できるようになったのは大きい。
 限られた時間で見て回るツアーでは得られないことを、ウェビナーやオンラインツアーを通じて体験してもらうことで、カナダへ行きたい、というお客様の熱は上がっているし、迎え入れるカナダ側のガイドやオペレーターの熱量も上がっていると感じている。

 

渡航意欲ある人へ有効にアプローチ
目的を持った人へ希望に叶うプロダクトを

先住民族の文化や歴史を体験(アルバータ州「メティス・クロッシング」)
画像提供:アルバータ州観光公社

 

今後の需要の戻りをどう見るか?

 最初に戻ってくるお客様は、海外旅行が好きな層だと思っている。毎年のように海外旅行に出ていた層だ。その中でまたカナダに行きたい、今まで行ったことはないけれどカナダに行ってみたい、というお客様にどうやって有効にアプローチしていくかが大切だ。
 まずは幅広いマスではなく、カナダに関心を持っている人、カナダに行けるようになったらすぐに行きたい、と思っている人にアプローチしたい。カナダ旅行の価格は安くはない。だからこそ、目的を持ってカナダでこれをやりたい、というお客様の希望に応えられるようなプロダクトを用意していくのが非常に大事だと思っている。

 

「カナダならでは」を追求したプロダクト
人とのつながり、自然との調和、人気観光地での新体験

オーロラビレッジから見るオーロラ(ノースウエスト準州)
画像提供:ノースウエスト準州観光局

 

具体的にはどんなプロダクトが必要か?

 他のデスティネーションにはない、「カナダならでは」を追求したプロダクトだと思う。
 例えば地元の人、カナダ人たちとのつながりや共感が持てる体験、またカナダは自然との調和や多様性、サスティナビリティーといったことが昔から根付いている国なので、そういった部分をカナダの旅を通じていろいろと発見して欲しいと考えている。
 さらに「カナダならでは」の体験、本物の体験、上質な体験として、例えばカナディアン・ロッキーやナイアガラの滝など、カナダの主要なプロダクト、アイコンと呼ばれているものに立ち返る必要もあると思っている。
 ただ、今までのような形ではなく、カナディアン・ロッキーであれば先住民族から伝わるパワースポットを訪ねたり、ハイキングで自然をより身近に感じたり、ゆったりと豊かな旅をして欲しい。物質的ではなく精神的な充足感とか、「カナダならでは」のものに触れて、自分らしさを改めて取り戻してもらえるような旅行の機会を提案していきたいと思っている。

 

「カナダならでは」の深い体験を提案
いかに旅行商品で伝えるかが重要

オンタリオ州のカリナリー・ツーリズム
画像提供:オンタリオ州観光局

 

「カナダならでは」をどう追及していくのか

 「カナダならでは」をどうやって突き詰めたらいいのか、まだまだやり切れてないと感じている。
 カナダは国土の広さとか、オープンで開放的なところに特徴がある。心からリフレッシュして、元気になれる。カナダにしかないものもたくさんある。オーロラはヨーロッパなどでも見られるが、カナダは観賞できる気候条件や設備が最も整っているだろう。また大自然も大きな強みのひとつだ。アクティビティーなどは他国でもできるものもあるが、スケールの大きさはカナダならではだ。
 例えばサーモンを食べることは、日本でもできる。なぜカナダまで行ってサーモンを食べるのか。カナダのサーモンがとびきり美味しいのはもちろんだが、それだけではない。そこには生態系を守る取り組みがあり、サーモンを中心とした西海岸の先住民の文化があり、日系移民がサーモンを求めてやってきた歴史があり、熊やシャチなど、豊かな森と海をつなぐ役割をサーモンが担っていたり、そうしたストーリーを知ってもらうことで、カナダでしか出会えないサーモンを味わい、「カナダならでは」の体験をしてもらえると考えている。
 アイコンと言われている定番観光プロダクトの周辺にあるこうしたストーリーや深い体験をどうお客様に紹介できるのか、旅行会社の商品にどう実装できるか、そこが重要だ。
 またカナダはもともとサスティナブルだ。例えば、プリンス・エドワード島は小説「赤毛のアン」で人気だが、赤毛のアンが出版されて100年以上経っても、島の風景や食、コミュニティーはほとんど変わっていない。それは変えないという島の人たちの思いがあるから。赤毛のアンの世界に浸るだけではなく、作品に描かれた風景やコミュニティーを守っている島の人たちが大切にしている価値観、そういうプリンス・エドワード島の変わらない風景や暮らしを体験してもらう、というようなアイテナリーができればと考えている。

 

旅行会社とのパートナーシップで
カナダの新しい旅のスタイルを構築

「アイランドライフ」を体験(プリンス・エドワード島州)
画像提供:プリンス・エドワード島州政府観光局

 

旅行会社へ向けたアプローチは?

 引き続き旅行会社とのパートナーシップを強化していく。まず「カナダならでは」を追求したカナダの新しい旅のスタイルを取り入れた旅行商品を一緒に造成していきたい。
 旅行会社からもおおむね一緒にやっていこうという賛同を頂いている。ダイナミックパッケージが主流となる中、どうやって旅行のストーリーを構築していくのか、旅行商品にどう付加価値やサービスを付けていくのか、旅行会社でも「旅行会社ならでは」の商品を作る必要に迫られている。
 ただし、単年での達成は難しいと考えている。すぐにできることではないし、コロナ後どのように需要が戻っていくのか見極めながらになるので、やはり複数年での取り組みになると思っている。旅行会社と一緒に腰を据えて、2~3年かけてカナダの新しい旅のスタイル、新しいアイテナリー、素材やコンテンツの整備を進めていきたいし、賛同する旅行会社とはパートナーシップを結んでがっつり協力してやっていけたらと思う。

 

来年5月に「ランデブーカナダ」ハイブリッドで開催

トゥームストーン準州立公園で夏から秋にかけて楽しめる紅葉(ユーコン準州)
画像提供:ユーコン準州観光局

 

カナダのトラベルトレードショー「ランデブーカナダ」について

 今年はオンラインでの開催だったが、コロナでこれまで止まっていたカナダ側サプライヤー(セラー)と日本側バイヤーが再びつながったことに大きな意味があった。来年は5月にオンタリオ州トロントで、オンラインと来場のハイブリッドでの開催を予定している。
 現地視察についてもたくさん組んでいきたいと考えている。ソーシャルディスタンスに配慮し、キャパシティーを減らしての開催となるが、実際に来て頂く方にとっては現地視察の良い機会であり、オンラインで参加した方がいいか、現地に行った方がいいのかそれぞれメリットがあるので、選んで頂けたらと思う。

 

教育旅行、団体旅行にも注目

ほかには

 カナダ観光局は、レジャーマーケットをメインとしているが、教育旅行や団体旅行についても今後注目していきたい。
 カナダの先進的な考え方、例えばSDGsやハイテク、AI、生命科学などではリーダー的存在にある。他にも環境問題や農業、漁業、海洋保全など、日本の皆さんにとってヒントになる先進的事例がカナダにはあり、ビジョンを持ったリーダーたちがいる。
 「カナダならでは」を追求する上で、こうしたカナダの今、カナダの社会やイノベーションをもっと紹介したいと思っている。旅行会社と密に連携していきながら、こうしたコンテンツや体験を教育旅行や団体旅行に紹介していくことで、旅行会社をサポートしていきたいと考えている。

 

 

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