記事検索はこちらで→
2018.05.28

WING

成田活用協、新事業計画で産業集積や教育連携など

“オール千葉”体制強めて、新5ヵ年スタート

 

 成田空港活用協議会(石井俊昭会長:千葉県商工会議所連合会会長)は5月25日に総会を開き、今後5年間の方向性を示す2018〜2022年度事業計画(案)を発表した。この計画では、成田空港を活用した経済活性化と、空港を利用する人流・物流の拡大を柱として、6つのテーマ、「1.空港周辺・圏央道などへの産業集積を促進する事業」、「2.成田空港を活用した新しいビジネス創出を促進する事業」、「3.県・市町村が行う地方創生関連事業と連携・連動した事業」、「4.東京オリンピック・パラリンピックをはじめとする時機を捉えた事業」、「5.県内大学などの教育機関などと連携した人材育成や知見の活用を目指す事業」、「6.過去5年間の成果をさらに拡大していく事業」を策定。参加会員による事業・施策の創出・自走化を促進し、会員との連携・協同強化を進めて、“オール千葉”の力を発揮する。
 同協議会は、昨年度までの5年間を活動期限としていたところ、訪日外国人の飛躍的な増加、LCCの成田就航による航空需要の増大、成田空港の第3滑走路整備など機能拡充への動き、2020年東京オリ・パラ開催など、大きな環境変化を踏まえ、経済活性化の可能性拡大に対応するため、昨年11月の臨時総会で5年間延長を決定した。これまでの活動が、県や成田周辺への集客や知名度の向上に力を入れていたのに対し、今後の方向性を示す新たな5ヵ年の事業計画(案)では、事業の内容を掘り下げて、綿密なスケジュールのもと、明確に行うべき取組みを示した。
 また総会では、特別顧問を務める森田健作千葉県知事があいさつを述べた。森田知事は、今年3月の四者協で空港周辺9市町が、第3滑走路を含む機能強化に合意したとして、「大変重い決断をいただいた」と説明。そして「これは地元のみならず、国においても大きな一歩だ」と、地元理解に謝意を示した。そしてさかのぼって昨年11月には、協議会が5年間延長することが決まったとして「本当に心強い。チーム千葉では、連携・協力して、この成田空港を世界の空港にしていく」と述べ、強い気持ちで空港の活用に取り組むよう、会場を訪れた会員を鼓舞した。

 

 1.空港・圏央道周辺への産業集積、研究会立上げ

 

 1つ目の計画とした「空港周辺・圏央道などへの産業集積を促進する事業」では、千葉県と神奈川県を結ぶ圏央道の全線開通(2024年度予定)を見据えて、立地ニーズや可能性を調査し、その結果に基づいたセミナーや研究会を展開。企業誘致の促進を支援する。情報収集や調査を行うことで、会員にとって実践的な情報・知見の共有を図る。
 同事業では、2018年度後半にも研究会を立ち上げる。セミナーを開催して、研究結果を事業者会員へ伝え、タイムリーな施策が可能な連携・協働体制を構築する。

 

 2.新規事業コンペ協賛、体験型商品開発も

 

 2つ目の「成田空港を活用した新しいビジネス創出を促進する事業」としては、新しいビジネスの創出から成長に至るスキームを構築して、経済成長サイクルを確立する。その取組みの1つに、CHIBAビジコンと連携した新規事業創出の促進がある。CHIBAビジコンは、県内での起業を前提にアイデアを広く募集する県主催のビジネスプランコンペティション。これに協賛、賞を創設して、空港を活用した新規事業への創出を促進する。協議会としては、2019年度からのビジコン参加を計画。同時に学生ビジコンなどの企画・検討も行う予定とする。そして2021年度には、事業の自走化・サポートに取り組むとして、支援体制の検討・試行を行う。
 また、アジア経済圏におけるマーケティングと、アクティビティ(体験型)商品開発は、お互いに連動した取組みとして、現地消費者を対象に定量・定性調査を行い、新たなアクティビティなど商品展開を目指す。今年度は、需要調査や試験販売などを通じてターゲットを選定する。2019・20年度には、キャンペーン展開などによってファンコミュニティを育成。2021年度以降は、ファンコミュニティを進化させ、グローバルコミュニティサイトを構築して、観光情報を発信し、ECでの農産物など県産品の輸出を拡大する一方で、アクティビティについては、今年度からプランの公募を開始する。そのプランからモニターツアーなどを行って、商品の自走化・販路拡大を図る。こうしたプランの公募と商品化を続けて行い、情報をターゲットとしたアジアのコミュニティに向けて発信する。

 

 3.市町村との連携、県内定住・交流人口拡大へ

 

 3つ目の「県・市町村が行う地方創生関連事業と連携・連動した事業」では、県や市町村が取り組む地方創生を支援する。これは、成田空港と空港をつなぐ幹線道路、鉄道を活用する観点で取り組むこととして、会員や関係団体などとの連携・協働を促進、または支援を行って、圏内の定住人口や交流人口の拡大に寄与する。具体的には、日本遺産や磁場逆転期地層のチバニアンなど、地域資源を活用した国内交流人口拡大と、訪日外国人増加に向けた誘客プロモーションなどを行う。2019年度後半にはツアー造成、プロモーションに取り組むとして、ほかの地域との連携なども進める。
 また、空港の雇用拡大に伴う移住・定住を促進する。これは、成田空港の3本目滑走路など、今後の拡大に伴って雇用が拡大していくことを踏まえ、空港を核に道路網や鉄道を活用した広域連携を図り、定住者の持続的増加に向けた情報発信を支援する。まずは今年度現状調査を行って、2019年度には研究会を立ち上げて情報発信の検討などを実施。2020年度から具体的に広域的な情報発信を行う考えだ。

 

 4.オリ・パラ見据え、ユニバーサル対応新たな商機

 

 4つ目が「東京オリンピック・パラリンピックをはじめとする時機を捉えた事業」になる。空港を起点・終点とする人流の拡大に対応するため、旅客の受入体制の整備を促進する。それによって、大会の開催効果のより広域への波及に寄与し、さらには大会後にも観光などの取組み恒常化をサポートする。
 具体的な事業としては、オリ・パラ対応も含め、高齢者層の増加を見据えて、ユニバーサル対応への準備を契機として、ニーズを掘り起こし、新たな商機につなげる。まずは課題を把握した上で、2019年度にはユニバーサル対応への意識づくりとして、体験型セミナーや、シンポジウムを実施する。さらに空港発の五輪観戦客の流れをつくるため、ホストタウンなどとの連携によって、会場や県内各地への交通、宿泊、観光など、情報発信などを行う。今年度中にホストタウンなど関係機関と調整を行って、2019年度にも連携した情報発信を行う。
 そして2020年の大会後には、オリ・パラレガシーを利用して、広域観光などを促進する情報の発信と、さらにはユニバーサルツーリズムの促進・旅行商品造成を進める計画としている。

 

 5.県内大学と連携、就職講座など開いて人材教育

 

 5つ目は、人材育成を目的とした「県内大学などの教育機関などと連携した人材育成や知見の活用を目指す事業」だ。県内の教育機関と連携して、効果的かつシームレスな人材育成施策を展開する。空港や航空関連産業の人材確保のため、需給マッチング向上による雇用機会の質的な拡大を実現するとしている。取り組む事業の1つが人材育成のための調査・検討。教育機関、会員企業の空港関連のキャリア教育に関係する事業実施状況を調査・整理して、体系的な人材育成につながる事業を促進する。また、教育機関と連携した学生対象の取組みとして、キャリア教育・インターンシップ事業などを実施する。
 これらの取組みでは、2019年度半ばまでキャリア教育や雇用意識などの調査によって、年代・地域別に官民の取組みを整理し、体系化する。そして、空港関連産業の魅力など各種情報の発信とともに、就職講座、インターンシップ、合同企業説明会、学生参加型のキャリア教育など実施を目指すとしている。

 

 6.引き続き訪日外国人、若年層へ県内魅力をPR

 

 6つ目は、これまでの取組みの成果を拡大するため「過去5年間の成果をさらに拡大していく事業」としている。過去5年間で得た知見などを活用して、会員の提案と相互連携する手法によって、成田空港の利便性と県内観光の魅力を国内外へ効果的に発信。成田の利用拡大を推進する。ウェブなどを活用して、県内観光や空港の魅力を発信し、新規就航を捉えた就航先との連携によって、利用促進を図る。引き続き、訪日外国人旅客や若年層へのPRを実施するとして、ほかに空港利便性の向上もPRする。また、これまで北海道と行ってきた交流促進も含め、就航先との連携による効果的なPRなど、引き続き取り組んでいく考え。

※写真1=成田空港活用協議会の総会であいさつを述べる特別顧問の森田健作千葉県知事