2019.07.23

WING

OH-1「ニンジャ」が再び空を舞うまでの約3年3ヵ月

観測ヘリOH-1の飛行再開までの軌跡を聞く

 純国産の観測ヘリコプターとして採用されたOH-1が、今年3月に飛行再開してから早くも数ヶ月が経過した。既報の通り、OH-1は2015年12月の予防着陸から約3年3ヵ月に亘り、飛行を停止して原因の究明と対策の構築に取り組んできた。今回、陸上幕僚監部装備計画部航空機課に飛行再開までの経緯と今後について、改めて詳しく話を聞いた。

 

官民協力して究明進め、原因を特定
飛行停止から約1年半後の2017年8月飛行試験開始

 

 原因究明に至る流れとしては、まず現地調査において外観点検を実施した後に、エンジンの分解調査を実施し、損傷状況を確認した。調査にあたっては当初、原因が機材に起因するものか、操縦に起因するものかが分からないため、想定される全ての原因に対して疑いを持って幅広く調査を行った。
 また、調査にあたっては、OH-1の機体製造企業である川崎重工業、エンジン製造企業の三菱航空エンジンと協力して不具合調査を実施。また調査過程での会議には、第三者機関としてIHIやJAXAのほか、部外の有識者の意見を取り入れて調査を進めた。この第三者機関は、「調査が進む中で、客観的な視点から、調査の妥当性を判断したほか、調査内容に関する意見等をもらった」と陸幕航空機課は述べる。第三者機関は調査段階において、振動・応力試験等のグラフの評価や分析方法等が妥当かを判定・評価しており、積極的に係ってもらったとのこと。
 こうした結果、予防着陸を起こしたのは、想定を超える振動応力が発生したため、高圧タービン・ブレードの材料強度を超過して亀裂が生じ、高圧タービン・ブレードが損傷したと断定。必要な対策を実施した後、対策エンジンを実機に載せた飛行試験を2017年8月に開始するに至った。陸幕航空機課は「(調査では)原因究明とその妥当性の検証、対策構築を切れ目なく行っていた。高圧タービン・ブレードの損傷が原因と断定し、対策確立後は、500サイクルを超える耐久試験を行い再現しないことを確認し、飛行試験に臨んだ」と当時の苦労を明かした。
 高圧タービン・ブレードに

 

エンジン改修に1台あたり約6000万円、その内訳は

 

 前述の通り、エンジンの改修部品は高圧タービン・ノズルと高圧タービン・ブレードとなっているが、エンジン1台あたりの改修費用は約6000万円と高価格となっている。この理由について聞くと、「高圧タービン・ブレードは新造となっており、個々のブレードをカットバックして組上げるものとなっている。振動応力が加わるのを抑制するためには、全てのブレードを一定の形状でカットバックすればよいというものではなく、一つ一つのブレードの振動特性を踏まえて、製造時に選別作業をした上で実施している」と、高圧タービン・ブレード製造には相当の手間と時間がかかっていることを明かした。また、「このカットバックされた

 

飛行再開も、任務飛行は操縦士の練度回復が先
集合訓練から部隊訓練を経て任務飛行へ

 

 飛行再開したOH-1には、運用能力の早期回復が求められている。このためには改修エンジンの搭載といった機体の整備のほかにも、操縦士の練度回復が必要だ。ちなみに飛行停止間のOH-1操縦士の練度維持について聞くと、「操縦士養成段階で、OH-6等の他の航空機の操縦士資格も取得していることから、OH-1以外の航空機を操縦することや、シミュレーターを用いて練度維持を図っていた」と説明。また新規のOH-1操縦士資格の取得に関しては、実機が使用できないことから課程教育は行われていなかったとのことだ。
 操縦士の練度については、当初陸自航空学校において、

 

引き続き健全性高いエンジンの供給を求める
「総火演」への参加は「未定」

 

 飛行停止間のOH-1への企業の関わりについては、「原因の究明から現在に至るまで、部品の製造、エンジン改修、飛行試験のデータ解析等、常に携わってもらっている」と述べた上で、長期格納状態となっているOH-1の品質確保に関しても、継続的に協力があると語った。
 また関係企業への要望事項として、

 

※写真=遂に飛行再開したOH-1。総火演等で披露してきた高い機動力をまた見ることができるように

※写真=OH-1のエンジンカットイメージ図(提供:陸上幕僚監部)

※写真=高圧タービン・ブレードのイメージ図。図中のブレードの赤い部分を削ることで、各ブレード間の隙間を作り、且つ高圧タービン・ノズルを一枚減らすことで振動・応力対策とした(陸上幕僚監部提供の画像を基に本紙作成)

※写真=OH-1の配備部隊では飛行停止間も定期的に整備し、飛行再開を待っていた