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2021.01.04

【潮流】2021年、コロナ禍を生き抜く旅行業に

 新年明けましておめでとうございます。
 本年もウイングトラベルをよろしくお願いいたします。
 昨年はコロナに開けてコロナに暮れた。年末には感染が再拡大し、さらに英国などで変異種が発生し、欧州から世界へ入国禁止の水際措置が強化された。今年もまたコロナで開けた年となった。
 2020年は旅行業にとって、これまでに経験したことのない厳しい年だった。コロナ禍による外出自粛、入国禁止の水際対策で、国内・海外・訪日の全ての旅行がこの世界から消えた。ツーリズム産業は事業そのものが消滅し、売上がほぼゼロになった。このため、政府による雇用調整助成金の特別措置で凌ぐため休業に入った旅行会社も多い。
 コロナ禍が長引くに連れて事業廃止する会社も出始め、宿泊業、輸送業、観光施設、観光関連産業を含むツーリズム産業全体が厳しい環境にさらされた。その苦境から一筋の光が見えたのはGo Toトラベル事業のスタートだった。Go Toがなければ、ツーリズム産業はさらなる苦境に陥っていただろう。
 そのGo Toトラベルは感染者の再拡大を受けて、書き入れ時の年末年始が全国一斉停止となり、ツーリズム産業は大きな痛手を被っている。しかし、蒲生観光庁長官は年末の会見、今年の年頭所感で、「Go Toトラベルの再開がツーリズム産業への最大の支援策」と明言しており、6月まで延長されたGo Toトラベルで、まずは収益を確保しなくてはならない。
 海外旅行専業各社には厳しい状況が続くが、菊間JATAアウトバウンド促進協議会(JOTC)会長は、コロナ禍の教訓として、海外旅行だけでなく事業の柱を1、2本立てることの重要性を指摘している。確かにこうした事態になるとリスク分散から事業を多角化することも検討せざるを得ない。
 Go Toトラベルの延長を受けて国内旅行への進出、さらには周辺事業、新事業へのチャレンジも必須になる。簡単にはいかないことは百も承知だが、政府は追加経済対策で事業再構築補助金を新設、最大1億円を補助する。中堅・中小企業の新規事業・転換・再編を支援するとしており、コロナ禍を契機に一歩踏み出さなければならないだろう。
 また、旅行業にDX(デジタル・トランスフォーメーション)の波は押し寄せている。グローバル化と同様に、どう対応し、どう活用するかが重要で、これに惑わされると旅行業の意義を見失うことになりかねない。
 海外旅行、訪日旅行の見通しはどうなるだろうか。世界、日本の感染状況によるが、東京オリンピック・パラリンピックの開催を前提とするならゴールデンウィーク前にハワイ、シンガポール、韓国などを候補に、管理型の旅行から再開することが検討されている。
 2020年は業界を挙げて「海外旅行再開の年」としたい。まずは1月7日〜9日に開催される「TEJ東京商談会/トラベルフェスタ」を再開の第一歩としたい。そのためにも、ここで海外旅行機運を醸成したいところだ。
 また、東京オリンピック・パラリンピック後の11月25日〜28日は「ツーリズムEXPOジャパン大阪・関西」が開催される。ポスト・オリパラの国内・海外・訪日旅行のビッグイベントとして、国際交流の再開の契機となることを期待したい。
 本紙の新年号は例年、旅行業界のトップインタビューなどで構成されるが、今年はインタビューだけでなく、業界各氏の年頭所感を敢えて掲載した。未曾有のコロナ禍を経ての年頭所感ということで、例年とは全く違い、この危機を乗り切り、コロナ禍を生き抜くための決意表明と受け止めている。ぜひ参考にしていただきたい。(石原)