ブランドUSA、好調日本市場で旅行会社に強い期待 ミッション実施、以遠需要喚起と新キャンペーン訴求
アメリカ合衆国の公式観光マーケティング機関であるブランドUSAは、毎年恒例の「ジャパン・セールス・ミッション」を7月24・25日に都内で開催、同ミッションに合わせて来日したシニア・バイス・プレジデント(グローバルマーケット担当)兼チーフ・トレード&プロダクト・ディベロップメント・オフィサーのマルコム・スミス氏が業界メディアのインタビューに応じた。スミス氏は好調な日本市場を受け、日本の旅行会社に対する強い期待を表明。「日本からの直行便が発着するゲートウェイ都市以遠の旅行需要喚起」と、今年6月に発表した消費者向けグローバル広告キャンペーン「アメリカ・ザ・ビューティフル」の積極的な活用を求めた。

2024年の日本人の米国訪問者数は前年比21%増
今年上半期は4%増、85.5万人と引き続き好調
日本からアメリカへの訪問者数は2024年に184万3879人を記録し、前年比21%増となった。最新の2025年1~6月累計では85万5842人で、前年同期比4%増と引き続き増加傾向を見せる。スミス氏は「他の市場が伸び悩むなか、日本市場は力強い回復を見せている」と強調。
また、カナダとメキシコを除いた国別ランキングでは「2022年には11位まで順位を落としていたが、現在は英国、インド、ブラジルに次ぐ4位につけている」と説明。今年については「通年で5%増を見込んでおり、昨年を上回る数字に期待したい」と述べた。
好調の要因として、スミス氏は航空座席供給の拡大を挙げる。今年はヒューストン(ZIPAIR)、シカゴ(日本航空)、シアトル(ハワイアン航空)への路線が新たに就航。また今年3月まで実施された「日米観光交流年」についても「非常に有意義だった」と評価した。
MLB観戦を契機に各地への渡航呼びかけ
認知度拡大へ旅行会社の役割強調
日本人選手の活躍によるMLB観戦需要も、日本市場の好調を支える大きな要因のひとつ。スミス氏は「MLB観戦と組み合わせて、別の都市や州を訪れていただけるよう、ゲートウェイ都市以遠の需要を積極的に訴求していきたい」と、強い意欲を示した。
今回のジャパン・セールス・ミッションには、ブランドUSAを除く28団体、35名が参加。「初参加となるアラバマ州観光局をはじめ、アメリカ各地の多様なサプライヤーが参加している」とアピールした。
さらに「来年開催予定のサッカー・ワールドカップ2026の試合が行われるアメリカの11都市には、すべてMLBチームが存在する。サッカー観戦と野球観戦の同時体験も可能」と紹介。他にも鉄道移動や州立公園の魅力にも触れ、「まだ知られていないデスティネーションを日本市場でも積極的に訴求したい」と述べた。
その上で旅行会社の役割の重要性を強調。スミス氏は「ロサンゼルスやニューヨークなどのゲートウェイ都市に比べ、以遠の地域の認知度は依然として低い。認知度拡大には旅行会社への啓蒙が不可欠」とのスタンスを見せる。また「日本の旅行会社では、MLB観戦後に約3割の顧客が別の都市を訪れると聞いており、非常に喜ばしい数字だと捉えている」と旅行会社への期待を改めて表明した。

新キャンペーン「アメリカ・ザ・ビューティフル」
日本を含む8市場で「BtoBも巻き込んで」展開
キャンペーンはまず、日本を含む8市場(日本、韓国、オーストラリア、英国、アイルランド、インド、ブラジル、アルゼンチン)で今秋より展開する。スミス氏は「市場動向や経済状況、渡航意欲などを総合的に判断して決定した」と8市場の選定理由を述べた。
またキャンペーンの特徴として、AIを活用した提案機能を備えたキャンペーンサイトを紹介。「個々の希望や嗜好に応じてカスタムメイドの旅行提案ができる」とアピールした。
さらに「一般消費者向けのキャンペーンではあるが、旅行業界の方々にもキャンペーンを知って頂き、キャンペーンを活用して頂きたい」と説明。現地サプライヤーや海外旅行会社向けにキャンペーン画像や動画、ロゴを利用できる「ツールキット」を提供、「BtoBを巻き込んだ形で展開する。広告キャンペーンのメディアプランを事前共有し、旅行業界の皆様にもメリットのある形で進めたい」と呼びかけた。

americathebeautiful.com/ja
建国250年に合わせ250名のアンバサダー認定
日本の旅行会社からも選出
スミス氏は、2025年6月に開催されたアメリカ最大の旅行業界イベント「IPW」で発表された新グローバル広告キャンペーン「アメリカ・ザ・ビューティフル」にも言及。「2026年に限らず、2028年のロサンゼルス五輪・パラリンピック、2034年のソルトレイクシティ冬季五輪・パラリンピックなど、世界中の注目イベントをフックに、アメリカの人々の温かさやノスタルジックな魅力を再発見してもらいたい」と意図を説明した。
また、旅行業界向けの施策として、スミス氏は、「アメリカ建国250周年に合わせ、世界中から250名の旅行会社スタッフをアンバサダーに任命する計画」を明らかにした。
具体的には「アメリカの販促やSNSでの魅力発信に積極的な旅行会社スタッフを選び、アンバサダーとして活躍してもらう」と説明。ブランドUSA主催の研修旅行やプロモーションへの優先参加などの特典を検討、日本からは「10~20名程度を選出したい」と述べた。
ジャパン・セールス・ミッション、28団体が参加
日本からは100名以上が来場

今年のジャパン・セールス・ミッションには、アメリカ側から観光局、アトラクション、ホテル、レンタカー会社など28団体が参加し、日本側からは100名以上の旅行会社スタッフが集まりセミナーを実施した。
セミナー冒頭、ブランドUSAグローバル・トレード・ディベロップメント・シニア・ディレクター(アジア太平洋地区)スージー・シェパード氏は、サッカー・ワールドカップ2026や建国250周年、ルート66の100周年など、来年の主要イベントを挙げ、「これらはアメリカがプロモーションをするのに絶好の機会だと捉えている」と強調。また「アメリカ・ザ・ビューティフル」についても触れた。

他にも、旅程の自動作成が可能な「トリッププランナー」や、30以上のドライブルートを網羅する「Road Trips USA」など、旅行業界向けウェブサイトについて説明。さらに昨年より日本にも正式に導入された「グローバルエントリープログラム(GEP)」や、米国国土安全保障省税関・国境取締局(CBP)が開発した公式アプリ「モバイル・パスポート・コントロール(MPC)」についても紹介。同アプリは、ESTAでの渡航が2回目以降の場合、入国や税関審査に必要な情報を事前登録することで、アメリカ到着時にMPC専用レーンが利用でき、スムーズな入国が可能となる。
なお、今回ジャパン・セールス・ミッションに参加したサプライヤーは以下の通り(順不同)。
● ワシントンD.C.観光局
● キシミー観光局(フロリダ州)
● オーランド観光局(フロリダ州)
● ユニバーサル・デスティネーションズ&エクスペリアンシズ
● グレーター・マイアミ観光局(フロリダ州)
● アラバマ州観光局
● メンフィス観光局(テネシー州)
● シカゴ観光局(イリノイ州)
● シェリダン観光局(ワイオミング州)
● コロラド州観光局
● ユタ州観光局
● ソルトレイクシティ観光局(ユタ州)
● ラスベガス観光局(ネバダ州)
● マーベリック・ヘリコプター
● フェアバンクス観光局(アラスカ州)
● ヒルトン・ワールドワイド
● ツアーアメリカ社
● ハーツレンタカー
● テキサス州観光局
● オースティン観光局(テキサス州)
● ヒューストン観光局(テキサス州)
● シアトル観光局(ワシントン州)
● オレゴン州観光局
● ポートランド観光協会(オレゴン州)
● カリフォルニア観光局
● ディスニー・ディスティネーション・インターナショナル
● サンフランシスコ観光協会/サンフランシスコ国際空港(カリフォルニア州)
● ザ・グランドホテル・サニーベイル&クパチーノ・ホテル(カリフォルニア州)
