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第229回「日本が危ない」狡猾な認知戦にだまされるな

中国軍のJH-7戦闘爆撃機が航空自衛隊のYS-11EB電子測定機に異常接近した翌日の7月11日、大阪・関西万博での中国のナショナルデー行事に合わせ来日した副首相、何立峰は自民党幹事長の森山裕との会談で、日本産牛肉の中国への輸出再開に向けた国内手続きを終えたことを伝えた。これを受けて外務省は日本産牛肉の対中輸出再開に必要となる「日中動物衛生検疫協定」が発効したと発表した。森山は会談後、大阪市内で参院選候補の応援演説に立ち「牛肉輸出問題で前進をみることができた。24年ぶりに輸出が始まるだろう」と成果を発信した。参院選の最中を狙った中国の「認知戦」であり、騙されてはいけない。
まんまと踊らされた牛肉輸出
媚びる政治家に期待できるか
中国は日本での牛海綿状脳症(BSE)発生に伴い、2001年から日本産牛肉の輸入を停止していた。日中両政府は19年にはBSEなど国境を越えた動物の病気の管理を厳しくする協定に署名したが、中国側が協定の国内手続きを進まないことを名目にして、棚ざらしの状態が続いていた。輸出を切望する日本側の足元をみていたのである。
中国側の思惑通り、早期輸出再開に動いたのが畜産業が盛んな鹿児島県選出の森山だった。この1年間で3回中国を訪問し、輸出を再開するよう再三にわたり要請した。これまでじらしてきた中国側だったが、参院選の最中が最も効果的と判断したとみられる。
森山は昨年2月、自民党元幹事長二階俊博の後を継いで、超党派の日中友好議員連盟の会長に就任した。二階も親中派として知られたが、経産相などを経験し、国際舞台での経験もある。これに対し、森山は鹿児島市議から衆院議員になるも国会対策委員長を長く務めるなど内政が中心だった。日中関係筋は「二階さんよりも対中経験が浅く、中国側も二階さんに対して抱いていたある種の怖さというものを森山さんには感じていない。御しやすしというところだろう」と語る。
森山は6月に講演した際の質疑応答で、「親中派」と言われていることについて聞かれると「日中間の懸案についてはきちっと申し上げてきた。中国がどういう(反日)教育をしてきたかということもよく承知している。私の選挙区である屋久島や口永良部島の近海に中国船が来て、ただ通過するだけでなくかなりの時間、停泊していろんなことをしている。選挙区なので実態をよくわかっている。そういうことについても話してきた。媚びているとか、媚びてないとかということではなくて、事実を事実として申し上げてきている」と反論した。
※画像=ロシアにならって認知戦を強化する中国