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2023.03.01

WING

世界初、JAL機塗膜表面にリブレット加工

 機体全面なら2%燃費改善、CO2を7%減

 日本航空(JAL)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)、ニコン、そしてオーウェルの4者は2月28日、塗膜にリブレット形状を施した航空機の飛行実証に共同で取り組んでいることを発表した。これまでデカールやフィルムにリブレット加工を施し、それを機体に貼付するかたちでは既に飛行実証を進めた事例はみられているが、機体表面の塗膜にリブレット加工を施す手法は、今回の4者による共同研究が世界で初めて。
 なお、今回の4者共同研究についてJAXA次世代航空イノベーションハブの伊藤健ハブ長はプログラムについて、「リフレッシュ・プログラム」と命名したことを明らかにした。そのマークは緑を基調とし、グリーン・イノベーションを象徴したカラーリングとし、マークの形状はサメの背びれを模しており、リブレット加工をイメージしたものとした。
 リブレットとは、いわゆるサメ肌(鱗)加工として広く一般にも知られているもので、例えば競泳用の水着などでも使用されている。いわば生体模倣技術(バイオミメティクス)の代表的な事例の一つで、その効果は表面摩擦抵抗を下げることにある。
 液体や空気などが物質表面を流れる際、その表面では一見滑らかに流れているようにみえて、実は小さな渦がいくつも発生する。この渦が外側の強い流れを引っ張ってきてしまい、表面摩擦抵抗が大きくなる。そこでリブレット加工を施すと、流れが整流化したり、あるいは渦が表面からやや離れたところに発生し、渦で物質表面が擦られる表面積を小さくすることができ、結果として摩擦抵抗を小さくすることが可能になるという技術だ。
 極端にいえば、ウィングレットのような翼端デバイスも、翼端に発生する翼端渦を整流化することで渦の発生を抑えて抵抗を小さくしている意味では、同様の役割をしているといえよう。
 JALでは、運航中の2機の737-800型機胴体下部に局所的にリブレット加工を施し、その形状を定期的に測定する耐久試験を実施してきたとのこと。オーウェルが加工を施したリブレットは既に1500時間以上、ニコンも750時間以上の飛行試験を行っており、いずれも耐久性を確認することができたという。
 JALエンジニアリングによると、JAXAの解析により、仮に機体全体にリブレット加工を施すことで約2%の燃費改善効果、CO2排出量を約7トン削減することができるとしており、JALグループが目指すESG経営戦略および2050年CO2実質排出ゼロという目標に合致する技術として期待を寄せている。

※この記事の概要
 JAXA、風試や飛行実証などで効果解析
 オーウェル、水溶性モールドで高精度加工
 すぐにも適用できるリブレット加工技術
 ニコン、レーザー除去加工でリブレット
 高速加工ヘッド開発、A4サイズは6秒で  など

※写真=4者共同で塗膜にリブレットを施す世界初の試みを検証。すでにJAL機飛行実証しており、今後大面積化することを目指す