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2022.07.20

WING

第157回「日本が危ない」日本は羅針盤を失ってしまったのか

在任期間で176ヵ国訪問
安保法制整備あってこそ

 

 凶弾に斃れた安倍晋三は首相在任中、地球儀を俯瞰する外交を展開した。首相としては歴代最長の7年8ヵ月の在任期間中、日米同盟を基軸に、延べ176ヵ国を訪問し、各国首脳と信頼関係を構築した。こうした外交に力を入れることができたのも、集団的自衛権の行使を限定的ながらも可能とした安全保障関連法制を整備したからだったと生前、安倍本人が語っていた。ロシアによるウクライナ侵略により、世界は混迷を深めている。国難ともいえる状況に、安倍を失った損失は計り知れない。
 「犯人は日本の針路を指し示す羅針盤であり、エンジンでもあった安倍氏を退場させることで、日本をどこに向かわせたかったのだろうか」
 安倍が当選間もない頃から親しくしていた産経新聞論説委員、阿比留瑠比の問いかけである。
 安倍政権で内閣官房参与を務めた加藤康子も「安倍さんのいない日本の政界は、羅針盤のない船のように漂流しそうで心配です」と、自身のツイッターに書き込んだ。
 安倍は2012年末に政権に返り咲いてからは民主党政権下で悪化した日米同盟を立て直し、「希望の同盟」と名付けるほど強化した。その日米同盟を基盤に「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を掲げ、「法の支配」や「航行の自由」をもとに各国の連携を呼びかけた。FOIPは日米豪印の枠組み「QUAD(クアッド)」の基礎ともなった。

 

トランプのベストフレンド
貿易交渉では譲歩も

 

 経済面では米国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から離脱すると、残る11ヵ国をまとめあげた。日米間ではモノの貿易を自由化する物品貿易協定(TAG)交渉をまとめた。米大統領だったドナルド・トランプは安倍が体調不良を理由に辞任した後、慰労のため電話してきた際、「(TAG)交渉では負けた。これもシンゾーの偉大な交渉力と人柄に屈したのだ」と評価した。

 

※図=安倍政権の成果と課題

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