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2022.07.08

WING

IATA、5月の旅客需要は前年比83.1%拡大

  コロナ前比で国際線64.1%水準、国内線76.7%  

 国際航空運送協会(IATA)がまとめた5月の世界の航空旅客需要動向によれば、旅客需要を表すRPKは昨年同月比83.1%もの力強い回復がみられた。主として国際線の回復が著しかったとのことで、国際線・国内線を合わせた世界全体の旅客需要は、コロナ前の68.7%水準まで回復していると分析した。
  国内線のRPKは対前年比0.2%増と小幅な増加に。多くの市場で大幅な改善が見られたものの、中国政府が講じているゼロ・コロナ政策で、中国国内線市場が前年比73.2%減もの大幅な減少に見舞われたことが、回復の足を引っ張った。IATAの分析によれば、世界の国内線旅客需要は、コロナ前の2019年5月の76.7%水準まで回復しているという。
 一方、国際線のRPKは昨年5月に比べて実に325.8%もの急増に。アジアのほとんどの地域で渡航制限が緩和されたことで、海外旅行の回復が加速しているという。ちなみに、今年5月の国際線RPKは2019年5月の64.1%の水準にまで回復しているという。  IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は「旅行需要の回復は引き続き勢いを増している」とコメント。「ヨーロッパ域内、中東-北米路線を含む多くの主要な国際線ルートは、すでにパンでミック以前の水準を超えている」ことに言及した。
 その上で、「コロナ関連の規制を完全に撤廃することが今後の課題であり、オーストラリアは今週、最も新しい規制を撤廃することになった」とコメント。一方で、「この旅行回復の楽観的な見方に対する主な例外は中国だ」と名指しし、「ゼロ・コロナ政策を続ける中国は、世界の他の国々と歩調を合わせておらず、中国関連の旅行回復が劇的に遅れている」と話すなど、中国政府の対応を批判した。
 また、ウォルシュ事務局長は「航空旅客市場の回復には目を見張るものがあるが、ヨーロッパや北米の一部のハブ空港では、システムにひずみが生じている」との認識を示し、コロナ禍で人員削減に踏み切った結果、人手不足という大きな問題に直面していることに言及。「航空会社、空港、政府は協力しているが、増大する需要に対応するために必要な労働力を確保するためには時間を要し、ボトルネックが最も深刻な数カ所の空港では旅客は多大な忍耐力を求められている」と話した。  その上で、「コロナ政策が急遽変更され、グローバルスタンダードに基づいて一致団結して活動する機会をほとんど避けられてしまった結果、多くの不確実性を生み出すことになった。政府の行動は、円滑な回復を可能にするものではほとんどなかった」と話すなど、直面する課題の矛先を各国政府の二転三転した政策のあり方に向けた。  
「航空業界が今、懲罰的な規制の洪水に直面する可能性があることは容認できない。航空業界は従来、政府と産業界が協力して世界標準に合意し、それを実行することで最高の成果を上げてきた」と話し、各国政府に対して、一層航空業界と緊密な連携を取るよう強く求めた。
〈5月の国際線・国内線旅客市場動向〉
・アフリカ=RPK:+124.9%、ASK:+76.8 %、L/F:69.6 %(+14.9ポ)
・アジア太平洋=RPK:-4.7 %、ASK:-8.2%、L/F:69.6%(+2.6ポ)
・欧州=RPK:+258.8%、ASK:+159.1%、L/F:80.7%(+22.4ポ)
・ラテンアメリカ=RPK:+99.3%、ASK:89.5%、L/F:80.7%(4ポ)
・中東=RPK:+279.6%、ASK:+103.5%、L/F:76.2%(+35.4ポ)
・北米=RPK:+56.3%、ASK:+36.6%、L/F:86%(+10.8ポ)
・世界平均=RPK:+83.1%、ASK:+52.8%、L/F:79.1%(+13.1ポ)

〈5月の国際線旅客市場動向〉
・アフリカ=RPK:+134.9%、ASK:+78.5%、L/F:68.4%(+16.4ポ)
・アジア太平洋=RPK:+453.3%、ASK:+118.8%、L/F:72.1%(+43.6ポ)
・欧州=RPK:+412.3%、ASK:+221.3%、L/F:80.6%(+30.1ポ)
・ラテンアメリカ=RPK:+180.5%、ASK:135.3%、L/F:83.4%(+13.5ポ) ・中東=RPK:+317.2%、ASK:+115.7%、L/F:76.8%(+37.1ポ)
・北米=RPK:+203.4%、ASK:+101.1%、L/F:80.3%(+27.1ポ)
・世界平均=RPK:+325.8%、ASK:152.1+%、L/F:+78.6%(+32ポ)

〈5月の主な国内線旅客市場動向〉
・豪州=RPK:+34.7%、ASK:+23.1%、L/F:75.6%(+6.5ポ)
・ブラジル=RPK:+73.1%、ASK:+89.6%、L/F:74.8%(-7.1ポ)
・中国=RPK:-73.2%、ASK:-64.7%、L/F:59.1%(+18.8ポ)
・インド=RPK:+405.7%、ASK:+205.7%、L/F:81.8%(+32.4ポ)
・日本=RPK:+132.7%、ASK:+70.7%、L/F:56.9%(+15.2ポ)
・米国=RPK:+26.1%、ASK:+15.6%、L/F:88.7%(+7.3ポ)
・世界平均=RPK:+0.2%、ASK:-3.3%、L/F:+79.8%(+2.9ポ)

※写真=5月の航空旅客需要の回復は顕著。国際線は64.1%、国内線76.7%の水準にまで回復してきた