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2021.12.27

ウイングトラベル

★Go To不正、ミキ・ツーリスト経営陣を解任

 HIS澤田会長「HISは一切、関与していない」  エイチ・アイ・エス(HIS)の澤田秀雄会長兼社長は、子会社のミキ・ツーリスト、ジャパンホリデートラベル(JPH)のGo Toトラベル給付金の不正受給問題で、「今回の問題を大きく受け止め、ミキ・ツーリスト社長は解任する。JPH役員も厳しく処分する。この件で、HIS本社は関与していないが、関係役員は若干の処分をしたい」と語った。ミキ・ツーリストの役員は総退陣し、HISから社長を送り込み、HIS欧州担当者を中心に再建する。JPHの役員を兼務する本社役員も後日何らかの処分を検討する。  澤田会長はミキ・ツーリストの不正受給について、「もってのほかだと思うので、どういう判断するかは内部で協議してからにしたい。ミキ・ツーリストの社長、役員は年内、遅くとも来年には解任したい」とし、告発する考えについては「今のところはないが、状況次第では考えないこともない」と述べた。  澤田社長はミキ・ツーリストについて、今後、海外旅行が再開されてもHISは海外に支店があり、そんなに大きな影響はないとし、他の旅行会社も手配先はたくさんあるので、業界全体でも大きな影響はないとの認識を示した。  中森達也専務は「欧州のランドオペレーターとしてミキ・ツーリストが必要と言われている。今回、社長は解任になるが、HISから社長を送って業務が継続的にできるように考えている」と述べた。

 

※写真=HIS澤田秀雄会長兼社長

 

 HISとミキの拠点融合、向こう5年間で再建  檀原社長の鳥取県地域創生事業は撤退検討  HIS関連会社を所管する織田正幸常常務は、「ミキ・ツーリストは欧州市場に強い会社。HISとしても何とか再生、立て直したいという強い思いがある。経営陣は刷新し、当社の欧州市場に強い人間を送り込み、欧州のHIS、ミキ・ツーリストの拠点を融合し、シナジーを取りながら、新生ミキ・ツーリストをつくっていきたい。向こう5年間で、コロナの影響はあるが、7〜8割は業績を回復させて信頼を取り戻すことが最大の仕事と考えている」と述べた。  また、ミキ・ツーリスト檀原社長が手掛けていた鳥取県での地方創生事業については、「先方との話し合いもあるが、事業からの撤退を考えなくてはいけないと思っている」と撤退を示唆した。  澤田会長は親会社としてのHISの監督責任については、「ガバナンスが少し甘かったと思っているので、もう一度見直したい。HIS子会社の全社長と面接し、教育していきたい。規定、ルール、ガバナンスをもう一度見直し、厳しく対処していきたい」と語った。  また、自身の処分については「今のところは考えていないが、内部で委員会が開かれて、何かあれば処分されても少しは仕方がない。ただし、HISは一切関与していないので、子会社の管理不行き届きは申し訳ないが、今のところは考えていない」と述べた。

 

 澤田氏「平林氏にはHIS退社後会っていない」  「今後JHATと関係絶つ、取引したら厳罰」  調査委員会により、今回の不正受給を主導したとされるJHATの平林朗社長、元HIS社長については、HIS退社後は「ほとんど会話、連絡もない」とし、同じビルに入居していたことも「知らなった。会ったことも一度もない」と答えた。  澤田会長はJHATが今回の問題に大きく関わっていることについては「非常に問題。当然だが、今後JHATの取引は一切しないし、関連子会社にも一切取引させない」と述べ、この問題が起きてからHISグループとして一切の関係を絶ったことを強調した。「JHATとの取引は厳罰に処する形でストップしている」と述べ、強い憤りをにじませた。

 

※写真=左から、織田正幸常務、中森達也専務、澤田秀雄会長兼社長、矢田素史上席執行役員

 

 Go To給付金、ミキとJPHで6億8369万円  ミキは4080万円、JPHは桁違いの6.4億円  今回のミキ・ツーリスト、ジャパンホリデートラベル(JPH)のGo Toトラベル事業給付金の不正受給疑惑に関する調査委員会(委員長=荒武純一弁護士)の報告では、不正受給金額はミキ・ツーリストが4080万円、JPHは桁違いの6億4249万円、合計6億8369万円をGo Toトラベル事務局に返還すべきとした。  ただし、調査委はミキ・ツーリストは社長・役員がJHATと不当折半を組織的に計画し、JPHはJHAT主体で、悪用した事実や不正受給の意図はなかったと報告している。  ミキの疑惑について調査委員会は、ミキはJHATと8160万円(1泊6万8000円・20室(1室4名)・60泊)の客室買取契約を締結。実際の宿泊は延べ4800泊中114泊だった。客室買取契約によるGo Toトラベル事業給付金は4080万円(Go To給付金2856万円+地域共通クーポン1224万円)。  一方で、両社は協賛契約を結び、JHATがミキに6554万円の協賛金をミキに支払った。協賛内容はミキが欧州、アジアでJHAT宿泊商品の販促活動だったが、実際には行われていなかった。  ミキからJHATに8160万円(割引後客室代金5304万円+Go To給付金2856万円)、JHATからミキに協賛金6554万円、地域共通クーポン1224万円が支払われ、JHAT平林社長のミキ社員に対するセミナー代金354万円がJHATに支払われ、Go To事業給付金の4080万円をミキ1920万円、JHAT2160万円で折半した。このために、両社は客室買取契約、協賛契約を結んだと認定した。  調査委員会の荒武委員長は、ミキ・ツーリスト役員のヒアリングで、檀原社長から2020年7月開催予定の東京オリンピック・パラリンピックのためにミキとJHATがホテル買取契約を締結したが、キャンセルするための対価の交付をJHATから要求されたとの説明を受けたとしている。

 

 国土交通省、渦中のJHATなどへ調査検討  JPHのGo To給付に法人4社と研修教材会社も  一方、ジャパンホリデートラベル(JPH)のGo Toトラベル事業給付金の不正受給スキームはJHAT主導だが、構造が複雑で、金額もミキ・ツーリストに比べて桁違いに大きい。Go Toトラベル事務局から10月分と11月分の3億1249万円の給付金を受け、地域共通クーポン3億3000万円の合計6億4249万円を受給している。地域共通クーポンはJPHから宿泊施設、JHATに発送している。  JHATの提案によりJPHは法人顧客の「S社」「P社」「A社」「T社」の4社と研修付き宿泊契約を結んだ。延べ人数は5万5053人、販売額は22億212万円、Go To割引額は7億7074万2000円に及ぶ。このうちGo Toトラベル事務局からの指摘により、12月分の4億5824万8000円は未支給となり、給付金の支給は3億1249万円となった。  また、この顧客4社の販売延べ人数5万5053人に対して「W社」が研修教材費用を提供。その教材費用としてJPHは15億791万円をW社に支払った。  国土交通省は、今回のGo Toトラベルの給付金の受給問題で、ミキ・ツーリスト、ジャパンホリデイトラベルともに中心的役割のJHAT、さらには不正受給について広く調査する方針を示した。    JPHの給付金については法人顧客4社と研修教材会社など渦中の企業に対しても調査することが必要とみられる。

 

※写真=Go Toトラベル事業給付金の不正疑惑に関する調査委員会の荒武純一委員長