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2019.10.08

WING

本邦LCCが進出する長距離国際LCC、その成否の鍵は?

運輸政策研・橋本研究員、「市場小さいながらゆっくり成長」

 日本のLCCが2012年にスタートしてはや7年。紆余曲折を経ながらも着々と成長してきた。既に国内線や近距離国際線市場の目ぼしい路線ネットワークは飽和しつつあって、新たな市場を模索してLCCは中距離もしくは長距離国際線へと打って出ようとしている。とくに来年には日本航空(JAL)傘下のZIPAIR Tokyo(ZIPエア)が5月14日からバンコク線の運航を開始し、7月1日には仁川線の運航をスタートする。これらの路線の運航でETOPSを取得し、同社は本命である欧米線の長距離国際線就航することを目指している。
 短距離多頻度運航というLCC原理主義から外れたビジネスモデルである長距離国際線LCCモデルは予てより成功することが難しいモデルだと言われ、事実、撤退も相次ぐ。長距離国際線LCCというモデルの成否の鍵を握っているものは何なのか---。運輸政策研究所の橋本安男客員研究員は長距離国際線LCC市場について、「相対的に市場規模が小さい」とコメント。その上で、「近距離市場のように爆発的な拡大はないだろう」とし、一方で「試行錯誤があって、日本を含めて長距離LCC路線が緩やかに増えていくことは十分に考えられるのではないだろうか」との見方を示した。運輸政策研究所が10月2日に開いた運輸政策コロキウムのなかで明らかにした。(※橋本氏の研究では飛行距離4500km以上のLCC路線を”ロングホール・ローコスト”と定義)

 

成熟した国内・近距離国際線網、本邦LCCは新戦略へ
低燃費・長航続距離機材登場が戦略後押し

 

 1980年代に米国で誕生したLCCモデルが、大西洋を亘って欧州へと波及したのは1990年代のこと。欧米市場を席巻したこのモデルは、満を持してアジア太平洋へと進出し、エアアジアやジェットスターなどといった巨大なLCCも続々と誕生していった。そして日本でも国の成長戦略の目玉の一つとしてLCCの参入促進が謳われるようになると、遅ればせながら2011年にピーチ・アビエーション、ジェットスター・ジャパン、そして第1期のエアアジア・ジャパンが設立。2012年から運航を開始し、瞬く間に成長を遂げた。

 

なぜ、長距離LCCは難しい?
「コスト」と「収入」に横たわる懐疑論

 

※写真=これまで国内線や近距離国際線で成長してきた本邦LCCたちはいよいよ戦略を中長距離線進出へと舵を切る

※画像=JAL傘下のZIPエアは欧米線就航を目指している(提供:ZIP)

※画像=エアバスが今年6月のパリエアショーでローンチしたA321XLR。単通路機であっても日本と豪州を結ぶことさえ可能だ(提供:エアバス)