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陸自システム防護隊、日米共同CTFを初実施
クイズ形式のサイバー競技会、日米連携強化図る
陸上幕僚監部は8月22日、日米共同CTF(Cyber Thunder)を実施し、市ヶ谷駐屯地で報道陣にその様子を公開した。
CTF(Capture The Flag)は、旗取り形式のサイバー競技会で、今回はクイズ形式で実施し、より速く、より正確に、より多く正解したチームが上位となっていくというもので、日米の陸軍種間で初開催となる。このCTFには、日米のサイバー部隊が参加し、ITに関する問題に対し、チーム対抗戦形式で回答数を、インターネット回線を通じたホームステーションプレイで競う。ちなみに、この競技環境は米国企業が提供しているものとのこと。
日本からは陸上自衛隊通信学校(久里浜:2個チーム)、システム通信団システム防護隊(市ヶ谷:2個チーム)、西部方面システム通信群第301システム防護隊(健軍:1個チーム)、東部方面通信群(朝霞:1個チーム)の計6個チームが、それぞれ所在駐屯地から参加。対する米軍からは米陸軍サイバー学校(米国ジョージア:6個チーム)が参加し、計12チームで得点数を争うという形式だ。参加チームは1チーム4名で構成され、各部隊等で選抜した人員となっている。もちろん、日本と米国では時差があるため、日本では早朝、米国では夕方という異なる時間帯で、同時に競技を行うこととなる。
光や音無く、静かに進行する競技会
各チーム、戦術に基づき黙々と問題を解く
案内された競技会場では、システム通信団システム防護隊の2チームが静かに競技開始時刻を待っていた。同時中継している米国の会場では競技者は私服でリラックスした様子で、日本側が制服を着て半ば緊張した様子でいるのとは逆なのが印象的だ。競技会開始直前には、市ヶ谷の2チームは円陣を組み「錬成の成果をしっかり発揮しよう」と各々を鼓舞して、気力十分な状態で協議会に臨んだ。
CTFでは、マルウェア解析等の「リバースエンジニアリング」や、ネットワーク上のトラフィックを分析・解析する「ネットワーク」、HDDやUSBメモリ、物理メモリのイメージファイルを解析して必要な情報を得る「フォレンジクス」、OSやプログラムの脆弱性を見つけ攻撃する「脆弱性調査」、ウェブアプリケーションの脆弱性を見つけ攻撃する「ウェブ」、「暗号解読」、「プログラミング」といった分野から問題が出題される。出題する問題は、特定分野の技能のみで解答可能な問題だが低得点のものから、複数分野の技能を組み合わせて解答する高得点のものまで多種多様で、その中から無作為に抽出する。問題は英語と日本語で出題され、ヒントを使うと減点となる。そして回答すると次の問題へと進んでいく形だ。また、解答に際しては自身の知識だけでなく、インターネットを通じて必要な情報を集めることやプログラニングして解答を探し出すといったことが認められている。
このため、4人1組で編成された各チームは、容易な問題を各人がどんどん解いていくことや、チーム内で役割を分担して高得点の難問を解いて得点を大きく稼いでいくといった様々な戦術をとって競い合うこととなる。実際、リアルタイムで表示するスコアボードを見ても、どんどん点数を稼いでいるチームと、じっくりと問題に取り組んでいるのか大きく動きが無いチームがあり、お互いに事前に決めた戦術をとっている様子が伺えた。
初の米軍との競技会、今後も連携強化図る
予備自衛官の活用等、人材の確保・育成が課題
陸自が本気でサイバー領域に取り組んだ初の競技会
サイバー領域では人が武器、人材育成は不可欠
※写真=陸上自衛隊はサイバー競技会日米共同CTF(Cyber Thunder)を実施した。写真は競技開始後約1時間後の得点状況
※写真=市ヶ谷の競技会場の様子(写真上段が競技者、下段は会場間の調整等を行う統裁室)
※写真=競技開始前に円陣を組み、各人を鼓舞する
※写真=アメリカ会場の様子。奥の円卓にいるのが競技者だ
※写真=問題の一例。問題の難易度毎に得点が設定されており、この問題は200点となっている
※写真=報道陣の取材に応じる陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部長の廣惠次郎陸将補(写真上段)と陸上自衛隊システム通信団システム防護隊長の平田1等陸佐(写真下段)