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2026.01.27

ウイングトラベル特集

【潮流】足腰強化の好機と捉える

1月21日に日本政府観光局(JNTO)から発表された2025年の訪日外客数は4268万3600人となった。前年比では15.8%増で、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年比では33.9%増となった。コロナ禍の影響を完全に払しょくするとともに、2030年の6000万人という目標に向けて、名実ともに次の段階へ進んだといえる。
 2025年暦年の実績とあわせて、同年12月単月の数値も公表された。ここで注目されたのは中国からの訪問者数の動向だ。12月の中国からの訪問者数は前年同月比45.3%減の33万400人となった。中国政府による日本への渡航を控える呼びかけに加え、航空便の減便が行われたことなども重なり、数値に明確なブレーキがかかった格好だ。
 そのような中で中国からのインバウンドの動き、とりわけ団体旅行の動向を振り返ると、コロナ禍から再び訪日旅行が動き出した時のことが想起される。中国政府がコロナ禍で制限していた海外団体旅行を解除したのが2023年8月10日のこと。制限解除の効果がフルに寄与した2023年9月の訪日数は32万5645人となった。2025年12月の訪問者数はこの水準に近く、言い方を変えれば、市場は再び立ち上げ局面に戻ったと捉えることもできる。
 旧正月を控え、中国人シェアが高かった観光関連事業者にとっては、先行き不透明感が強まっているだろう。ただ、ここで重要なのは「不安の共有」で終わらせず、立ち上げ局面に戻ったときに何を積み上げ直すべきかを、具体の課題として整理することだ。
 訪日外客数全体の動きを見れば、2024年12月との比較で中国からの訪問者数は約28万人の落ち込みとなった。一方で、中国以外の重点22市場では約41万人の増加となり、中国の落ち込み分をカバーした上でさらに13万人積み上げている状況となっている。
 中国市場は単独では最も大きい市場であり、買い物代をはじめ消費面のインパクトも数値として表れやすい。そのため重大性を強調する声が大きくなりがちだ。しかし現時点では、他市場の需要を押し上げることで一定程度補える環境が整いつつある。ここが2023年当初と大きく異なる点であり、今後の戦略を考える際の出発点になる。日本は1月23日に衆議院が解散し選挙戦に入った。中国も3月5日に全人代が開幕する。3月までは両国関係で目立った動きが出にくいとする見方もある。だとすれば、その間に観光分野が取り組むべきは、市場構造を強くし、受け入れの摩擦を減らして持続可能性を高め、日本人旅行との両立の設計を磨くことではないだろうか。
 市場構造の観点では、中国の回復を待つだけではなく、重点22市場の需要を「偶然の増加」で終わらせない仕組みが要る。航空座席の確保・販路の強化・商品造成の連動を進め、特定市場への依存度を下げつつ総量を伸ばす。中国が戻る局面に備えるという意味でも、この期間は“市場の足腰を鍛える”時間になる。
 次に、訪日マーケットが盛り上がりを見せる中で、一部地域での過度な観光客の集中や観光マナーの問題がクローズアップされ、それが地域住民の生活を脅かす事態となっている。この状況を打開するための手立てを検討することも、いま取り組むべき課題だ。混雑の可視化、時間帯・導線の分散、予約・ルールの整備、情報発信の改善など、受け入れ側の負荷を下げる実装を積み上げたい。
 また、これまで上昇基調が続いていた国内宿泊施設の代金が一部で落ち着きを取り戻し、日本人による旅行が盛り上がりを見せつつある流れが出始めている。日本人旅行マーケットとの両立を、どの水準で実現するのかも重要な論点となる。繁忙期の過度な価格高騰や供給逼迫を避け、平日・閑散期への需要平準化を進めるなど、日本人旅行と訪日旅行を同じ時期・同じ地域で競合させない設計が求められる。
 短期的な視点でとらえると、2026年の訪日マーケットは一時的に落ち込みを見せる可能性もある。ただ、2030年の6000万人という高みに飛躍するためには、一度しゃがみ込む局面を“整備の時間”として使う必要がある。しゃがんでいる間に、市場構造を強くし、受け入れ品質を高め、日本人旅行との両立を仕組みとして組み直せるか。その結果によってジャンプできる高さは変わってくる。(嶺井)