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2025.10.15

WING

第235回「日本が危ない」理想の国防へ信念を貫き通せ

新たな自民総裁が誕生
認識は何も持たざる国

 

 自民党新総裁に高市早苗が選出された。9月22日、10月4日投開票の総裁選では日本を取り巻く安全保障環境の急速な悪化にもかかわらず、抜本的な防衛力の強化に関する論議は低調だった。そこで、高市の著書『国力研究』(産経新聞出版)から、高市の安全保障観を探っていきたい。
 高市が『国力研究』を出版したのは2024年9月1日。つまり、昨年9月の自民党総裁選を意識したものだった。23年11月から24年6月までの間、10人の専門家を招いた同志議員らとの勉強会「日本のチカラ」研究会の議事録をまとめ、それに高市本人が加筆してまとめたものだ。「外交力」、「情報力」、「防衛力」、「経済力」、「技術力」の5章を専門家が講演し、「宇宙政策」と「人材力」は高市本人がまとめた。
 「外交力」は駐豪大使だった山上信吾、駐中国大使だった垂秀夫、「情報力」は麗澤大学客員教授江崎道朗、日本大学教授小谷賢、杏林大学教授山口芳裕、「防衛力」は元空将尾上定正、元国家安全保障局次長兼原信克、「経済力」は元内閣官房参与本田悦朗、元日銀副総裁で早稲田大学政治経済学術院教授若田部昌澄、「技術力」は産業遺産センター長加藤康子が講演した。
 序章では高市が自らの現状認識を披露している。序章を中心に高市の考えに迫っていきたい。
 「この数年間で激変する国際情勢を目の当たりにして、私たち日本人が思い知ったこと……。それは、国連安全保障理事会の拒否権を持った大国が『外交』を制し、核兵器を持つ大国が『軍事』を制し、資源を持つ大国が『経済』を制するという国際社会の現実です。そのいずれも持っていないのが、現在の日本です」
 冒頭の一文だが、日本の現状に対する高市の強い危機感がうかがえる。

 

核兵器最前線の日本
拡大抑止と三原則に矛盾

 

 核兵器に限って言うと、世界で最も多く核弾頭を保有するのがロシア、2035年までに核弾頭保有が1500発に達し、米国と同水準になるのが中国(米議会超党派で構成される米中経済安全保障調査委員会の報告)、9月の国連総会で核開発計画を決して放棄しないと宣言したのが北朝鮮の3ヵ国だ。

 

※写真=第29代自民党総裁に高市早苗が選出された(提供:自民党)