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2018.06.18

「6.12」を海外旅行の追い風に

 6月12日、世界が注目する初めての米朝首脳会談が開催された。その評価はこれからだが、朝鮮半島の非核化に向かって、新たな一歩を踏み出したことは紛れもない事実で、向かう先が「平和」であることを世界中が望んでいる。
 折しも、同日には東京で韓国文化体育観光部と韓国観光公社(KTO)による「韓国観光フェスティバル」が開催され、多くの人々が会場の東京ドーム周辺に集まり、列をなした。また、夕刻に開催された「韓国観光の夕べ」には、日韓の旅行業界関係者が参集し、今年の日韓相互交流1000万人に向かって決意を新たにしっxた。
 とくに、韓国から来日した韓国文化体育観光部の羅次官が強調した「日韓両国間の均衡が取れて充実した1000万人交流」、駐日韓国大使館の李大使が指摘した「持続的、バランスある人的交流」が印象に残る。
 当然な話で、昨年の日韓相互交流人口は945万人。内訳は訪日714万人、訪韓231万人。日韓の様々な問題もあって著しくバランスを欠いた状況になった。貿易不均衡ではないが、これでは「観光不均衡」と言われても仕方がない。
 かつて、日本の海外旅行がブームの時代は、日本からの一方的なアウトバウンド一辺倒で、とくにアジアでの日本優位の経済格差が、当時の「観光不均衡」を生んだが、その時代も終焉を迎え、日本の経済停滞とアジアの経済成長の中で、アウトバウンドとインバウンドが逆転した。
 アジアの経済成長の波にも乗って、訪日インバウンドは成長しているが、それにしても、訪韓アウトバウンドとの「観光不均衡」が著しい。朝鮮半島を巡る政治情勢、日韓の政治問題などを抜きにすれば、韓国から日本へ700万人が訪れるなら、人口を考えると、日本から韓国へ1000万人が旅行しても全くおかしくない。
 「韓国観光の夕べ」で田村観光庁長官が語った「訪日韓国人旅行者の約半数は20代以下の若者で、週末に国内旅行感覚で訪日し、ショッピング、話題のグルメなどを楽しまれている」は、東京−ソウルが東京−大阪、東京−札幌、東京−福岡などの国内基幹路線と同様のボーダレスな路線になったことを示している。
 かつて、国土交通省航空局は航空政策の中で、羽田・成田空港の棲み分け、LCCの乗り入れなどの議論で、日本・韓国・中国の主要路線を国内基幹路線のようにすることを検討していたと記憶する。
 韓国からの若者の訪日旅行は、ほぼそれを達成したように思う。課題は訪韓旅行をどうするかだ。韓国と同様に、日本の若者を中心に多くの旅行者がソウル、プサン、地方へ旅行する時代を早急につくらなくてはならない。
 ここ数年の両国の観光関係者による会合は、日本から韓国へのアウトバウンド促進で一致しているのだが、日韓の政治情勢が影を落としていたことは否めない。現在、それらの課題が解決しているわけではないが、挨拶に立った観光関係の要人が異口同音に語るように、南北首脳会談、米朝首脳会談による朝鮮半島非核化の流れは、追い風となっている。
 米朝首脳会談がその一歩と将来評価されたなら、2018年6月12日は、記憶に残り、歴史に記録される日となる。ただ、北朝鮮の核を巡る過去の動きと米国トランプ大統領の言動をみると、この先どうなるか、予測はつかない。
 田川JATA会長は「今日はシンガポールで記念すべき米朝首脳会談があり、その時に韓国観光の夕べで日韓の観光関係者が集まるという2018年6月12日を『6.12』として忘れないようにしたい」と語った。
 「6.12」を契機に「平和の風」が吹いたとなるのが理想だが、まずは好転の第一歩となれば、観光へ追い風が吹く。これが、アウトバウンド全体への追い風となることを期待しよう。(石原)