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2020.01.27

2000万人から次の目標へ

 2019年の日本人出国者数が2008万600人と初めて2000万人を突破した。1964年の海外旅行自由化から数えて55年、1990年の1000万人台から28年を要しての達成となる。
 1990年代に現在のJATA田川博己会長、菊間潤吾副会長から2000万人の話を随分と聞かされていたので、多分、このお二方は感慨もひとしおではないかと思う。2001年には前年の1782万人を受けて2000万人に近づく勢いを見せたが、米国同時多発テロ事件(9.11)が発生、さらには2003年にはSARS(重症急性呼吸器症候群)感染が拡大し、日本人海外旅行者数は冷え込んだ。
 2008年には2010年の海外渡航者2000万人達成を目標に「VWC」(ビジット・ワールド・キャンペーン)を発表。VWC2000万人推進特別委員会委員長に佐々木隆JATA副会長(当時)が就任し、JATAに「VWC2000万人推進室」(澤邊宏室長)を設置し、旅行各社が「手弁当」で社員を出向させて2000万人達成に取り組んだ。
 VWCでは、2007年実績1730万人をベースに、2008年1800万人、2009年1900万人、2010年2000万人と3カ年で2000万人達成の目標だったが、2008年に発生したリーマンショックの影響などを受けて1500万人台まで冷え込み、2010年は1600万人台にとどまった。
 2011年に発生した東日本大震災(3.11)後の2012年には日本人出国者数が1849万人と、当時の過去最高を記録した。しかし、その後の韓国MERS(中東呼吸器症候群)、中国PM2.5の発生、8%への消費増税などの影響を受けて日本人出国者数は減少傾向を続けた。
 だが、2015年の1621万人を底に海外旅行者数はプラスに転じ、この波に乗じて、JATAはアウトバウンド促進協議会(JOTC)を設立し、海外旅行需要喚起に努めた。日本人海外旅行者数は4年連続で増加し、2019年には遂に悲願の2000万人を達成した。
 2001年の米国同時多発テロ事件を受けて、旅行業界はリカバリーキャンペーンを実施した。2008年からは前述のVWCキャンペーンを展開した。
 今もJATAアウトバウンド促進協議会で、政府観光局、航空会社、ホテルの賛同を得て海外旅行需要喚起に向けた活動を実施している。JATAでは、2019年から「ハタチの一歩 20歳 初めての海外体験プロジェクト」をスタートさせ、今年は2年目に入り、ハワイをはじめ中長距離のデスティネーションにプロジェクトを拡大する。
 海外渡航者数の推移を見ると、1996年の1600万人台に乗り、多少の凹凸はあるが、1600〜1700万人台で推移している。それが、2016年から4年連続で上昇した。
 この要因としては、LCCを中心とする航空座席供給量の増加が大きい。訪日旅行需要拡大を受けての供給量増加だが、アウトバウンド需要増にも好影響を与えている。
 海外の交通インフラが整備され、個人旅行化が進行し、OTAが台頭したことも背景にある。今後もアジアを中心に交通インフラの整備に伴い、個人旅行化は進むとみられる。
 しかし、デスティネーションの開発、旅行需要の喚起を担うのは旅行業界をおいてない。今年は羽田、成田の増枠に伴い、新路線の開設が目白押しだ。旅行会社でなければ行くことができないデスティネーションは数多く存在し、旅行会社の商品造成を期待している。
 また、赤羽一嘉国土交通大臣は、2019年に1年前倒しして日本人出国者数が2000万人を達成したことに触れ、これを一過性とせず、旅行業界と協力して、国土交通省・観光庁は全力で支援することを表明している。
 赤羽大臣は「ハタチの一歩」プロジェクトを高く評価しており、観光庁はアウトバウンド青少年交流の促進に予算を計上している。訪日旅行者の多い中国・韓国・台湾をはじめアジア、豪州、グアム・ハワイ、米本土などへの修学旅行を拡大したい。それができるのは旅行会社であり、2000万人のその先へ、まずは新たな目標を設定したい。(石原)