【潮流】賞与期に考える旅への想起
12月の上旬から中旬にかけての話題といえば「冬のボーナス」だろう。内閣人事局が発表した国家公務員の冬期賞与の平均支給額は約70万2200円となり、4年連続で増加したという。民間企業においては悲喜こもごもかもしれないが、日頃の業務に対する評価に思いを巡らせる時期でもある。
そして、晴れて支給を受けた後には、その使い道を考えることになる。ポイントサービス「Ponta」を運営するロイヤリティ マーケティングが10月末に発表した冬のボーナスの使途に関するアンケートによると、回答者の33.8%が「貯金・預金」と回答し、預貯金が首位となるのは12年連続となった。
2位以下は、宿泊を伴う旅行が6.1%、食品(普段食べるもの)が5.9%、財形貯蓄が4.3%、外食が4.1%と続いた。
冬のボーナスの使い道として、貯蓄には大きく水をあけられているものの、次の選択肢として挙がるのが「宿泊旅行」である。経済情勢がさまざまに変化する中でも、お金を使うのであれば旅に振り向けたいという思いは、依然として根強い。
人々の旅に対する関心を、いかにして揺り起こしていくのか。冬のボーナス支給という節目を迎える中、直近の業界ニュースを通じて、考えさせられる機会がいくつかあった。
まず、僭越ながら筆者が審査員として参加した「ドイツ観光局ツーリズム・メディア・アワード」では、ジャーナリストやライターによる感性豊かな文章と、それを彩る写真や動画、さらにその思いを世の中に広く届けようとする編集者の姿勢に、改めて触れる場となった。
表彰式であいさつに立った駐日ドイツ大使館のハインリッヒ・フッベ一等書記官・広報課長は、「観光の成熟市場である日本では、ドイツの『新しい見方』を提供することが重要だ」と語り、記事を通じて好奇心を呼び起こす取り組みに敬意を示した。
メディアは、消費者に旅に対する新たな気付きを与える場である。その役割を改めて肝に銘じたい。
東京国際クルーズターミナルで開催された「クルーズEXPO 2025 東京」で行われた、YouTuberとクルーズ船社、販売代理店によるディスカッションでは、新たな情報の伝え手としてのインフルエンサーの存在感を強く感じた。YouTube動画は若年層にとどまらず中高年層にも着実に影響を与えており、船会社側が「個性の伝達」を重視している点も印象的だった。
一方で、クルーズ船内の有料コンテンツを紹介するにあたり、船会社に金銭面を含めた配慮を求めたいという趣旨の発言には失望を覚えた。素材を余すことなく伝えたい思いは理解できるが、旅の魅力を高めるコンテンツや関係者への敬意を欠く姿勢は避けるべきだ。情報発信者としての礼節を、今一度意識してほしい。
ハワイというデスティネーションに特別な思いを寄せるジェーシービー(JCB)、日本航空(JAL)、JTBの3社が企画した「ハワイアイデアコンテスト」は、若年層が旅に何を求めているのかを学ぶ貴重な場となった。
学生によるプレゼンテーションで、「ハワイを紹介するSNSは同じ景色ばかり」という発言には強い衝撃を受けた。旅の動機付けとしてSNSを重視する若者の目に、情報が画一的に映っているとすれば、業界として危機感を持つ必要があるだろう。
一方で、雪に覆われたマウナケアといった意外な一面の訴求や、社会貢献活動を旅行代金に還元する発想、現地学生との交流、ハワイをトランジットデスティネーションとして捉える提案など、いずれも刺激的だった。
若年層は海外旅行離れを起こしているのではなく、求めるものとの間に「ズレ」が生じているのではないか。そのような想いを抱かせられた印象だ。
経済情勢がすぐに好転するとは言い切れないが、まとまったお金があれば旅に出たいという思いは今も変わらない。その思いに応えるための魅力的な旅の提案、観光素材の磨き上げ、そして消費者の琴線に触れる情報発信が欠かせない。三位一体となって刺激を与え、ボーナスの使い道として「旅行」と回答する人の構成比を、6.1%から引き上げていく流れを、着実に形にしていきたい。(嶺井)
