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2025.05.12

ウイングトラベル

【潮流】観光立国2.0へ

 2026年度から2030年度にかけての第5次観光立国推進基本計画の策定に向けて、国土交通省・観光庁が議論をスタートさせた。日本の観光政策は量から質、単一軸から多軸へと大きく舵を切ろうとしている。
 小泉政権下の2007年に第1次観光立国推進基本計画がスタートしたが、骨格が決まった2016年3月に決定した安倍政権時代の「明日の日本を支える観光ビジョン」を「観光立国1.0」とすれば、コロナ禍を経ての2026年度からが「観光立国2.0」の段階に入ったといえる。
 同会合で示された政策の方向性は、観光立国の新たな段階を示すものだが、会合を政策決定への儀式的なものにせず、議論を深めるべきと考える。
 会合では、これまでの観光ビジョンで示された「訪日外客数6000万人、消費額15兆円」の目標が踏襲された。2024年の段階で訪日外国人数や消費額が目標を大きく上回った実績を踏まえつつも、さらなる高次元の観光政策への歩みを示唆している。
 観光は量的な拡大から質的な変革に向かっている。従来の東京・大阪・京都などの主要都市圏への訪問者集中から脱却し、観光の地方分散により、オーバーツーリズム対策の緩和と地方創生2.0を踏まえて日本全体の活性化へつなげていく。
 だが、「訪日外客数6000万人、消費額15兆円」は聖域ではない。この目標を決めたときと今では、政治・経済・社会環境が大きく変化している。目標を根本から見直してもいいのではないか。
 現行計画の達成状況は二極化が顕著だ。訪日外国人関連の目標は軒並み達成となった一方、地方部への分散は目標2泊に対し1.4泊、持続可能な観光地域数は目標100地域に対し68地域、日本人のアウトバウンド回復は2008万人水準に対し1301万人と目標未達となった。これらは、日本の観光政策が今後向き合うべき重要な課題となる。