【潮流】円安の壁を越える
訪日インバウンド3680万人の賑わいとは対照的に、日本からの海外旅行者数は依然としてコロナ前の水準に戻らない。2024年の日本人海外旅行需要はコロナ前の2019年と比較して約65%の回復率にとどまる。台湾の事例は象徴的だ。台湾からの訪日旅行者数が600万人を超える一方、日本から台湾への旅行者数は132万人と、「6対1」のアンバランスな状況が生じている。この不均衡の最大の要因は円安だが、コロナ後の旅行の変化や旅行業界の人材不足も見逃せない。
また、JATA経営フォーラム2025で明らかにされたように、この10年で海外旅行における募集型企画旅行のシェアは劇的に低下している。2014年には全出国者数の22.9%を占めていた募集型企画旅行のシェアは、2024年には2.6%まで低下。10年間で20ポイント以上も減少した。
その背景にはOTAの台頭やダイナミックパッケージの登場といった流通チャネルの変化、航空座席やホテル客室の仕入環境の変化がある。こうした市場構造の変化の中で、旅行会社は改めて「プロフェッショナル」としての価値を示す必要に迫られている。