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2019.03.11

旅行業はヒト、企画で勝負

 毎年開催されるJATA経営フォーラムだが、今年は旅行業界が直面する具体的な課題を議論する場があまりなく、どの業界でも共通する課題が多かった。旅行業界がAIに代表されるテクノロジーをどのように取り込むかはとても重要なテーマだが、旅行業法や航空会社、OTA、サプライヤー、DMOとの関係など、旅行業界と関係当事者によるディスカッションなどを聞きたかった。
 田川JATA会長は当日の挨拶で、『チャレンジ&トライ』をテーマに、海外旅行では安全・安心に関する取り組みや若者の海外体験、国内・訪日旅行は自治体やDMOなどと連携し新たな旅の形を提案していく取り組みを展開していく。今回の経営フォーラムでは、旅行会社の経営において、どのようなチャレンジ&トライができるかということを考える場として企画した」と述べた。
 したがって、「旅行会社がチャレンジするヒント」を見つけることが、今回は一番重要だったと推察した。
 基調講演は、国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授で、教育のための科学研究所所長・代表理事を務める新井紀子氏が「人工知能がもたらす人と社会の未来」をテーマに語った。
 新井教授は「AIを搭載したロボットが人間の代わりに何かをしてくれるというイメージはすぐに変えてもらいたい。AIは知性ではなく確率と統計をベースに機能しており、英語や日本語という文字や言葉は認識していない。文章を読み解く力というものは備わっていない」と述べ、AIは進化には一定の限界があると強調した。同時に、中高生の読解力のなさを挙げ、AIを使いこなせる読解力を持った人材雇用の重要性を指摘した。
 昨年、ハワイで開催された「グローバル・ツーリズム・サミット」では、あの女性型ロボット「ソフィア」が登場し、ハワイ観光関係者と「対談」が行われた。サミット全体の大きなテーマとして、旅行業界におけるAIとヒューマンタッチが話し合われた。その際も、AIの積極的な活用とヒューマンタッチの普遍性が強調されていた。
 旅行業界とAIの関係について、中堅旅行会社の「これからの旅行業経営」を論じた分科会Cで、モデレーターを務めた沖縄ツーリストの東良和会長が、「AIがやるのは人間がやりたくない仕事。旅行は人間がやりたい仕事。ロボットが代わりにはならない。旅行はロボットが進化しても、任せたくないマーケット。夢やワクワク感を持って旅行業に邁進したい」と語ったことが印象的だった。
 「変なホテル」ではないが、AI、ロボットが担当する分野はこれからも出てくるだろうし、テクノロジーは使いこなさければならないが、それを使う人間のスキルのほうが重要で、その人材を確保することが一番の問題ということなのだろう。
 今回のJATA経営フォーラムでは、分科会Cが最も興味深かった。成功している中堅会社は、旅行業の強みを周辺事業、新規事業に活かして成長している。新しい事業展開には先行投資が必要だし、リスクも伴うが、「旅行業のノウハウ」が観光施設、ホテル、レンタカー、不動産など様々な関連周辺事業に活かせるという話が印象的だった。
 AIについても、グローバルOTAには大手旅行会社でも事業規模で敵わないが、東会長が指摘した中堅旅行会社によるローカルOTAは、地域密着のサービスとサポートという強みがあるという指摘も印象に残った。
 経営フォーラムで一番沸いたのは、映画監督・カメラマンの木村大作氏の特別講演。2016年の養老孟司氏以来の面白さ。久しぶりの「毒舌」が痛快だった。叩き上げの凄みがある。「映画も旅行も企画だよ!」。これを聞けば十分である。(石原)