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2019.02.25

アウトなくして地方インの拡大なし

 観光をテーマのシンポジウムやセミナーが盛んに開催されているが、今年に入ってから風向きが少し変わってきた。政府の観光立国政策「明日の日本を支える観光ビジョン」に乗って、インバウンド政策一辺倒で走ってきたが、アウトバウンドの重要性を語る人が増えてきた。
 観光庁長官にアウトバウンドに精通する田端浩氏が就任したこともその契機となっているが、口先だけの双方向交流ではなく、「アウトなくしてインがない」ことを分かる人が増えてきたことは、今後のアウトバウンド振興につながる。
 根本的なことを言えば、観光による地方活性化、地方創生を実現するには、首都圏や関西圏からの経由便では限度がある。海外からの地元への直行便を実現させ、それを持続的に維持、成長させることが課題となる。
 地域の首長が海外にポートセールスに行っても、インバウンドだけでは路線維持は難しい。その海外の国・地域は、その日本の地域からの旅行者の訪問、拡大を求めてくる。つまり、インバウンドによって地域活性化を図るなら、自分の地域からアウトバウンドを増やすことが、これからは前提条件になる。
 田端長官はあるシンポジウムで、「観光は相互交流。アウトバウンド振興は極めて重要。チャーター便を仕掛けたり、新たな直行便を飛ばしてもらうよう国内外の航空会社に働きかけていく。今年は新規就航路線が多い。日系、外航も含めてどんどん新規就航している。このチャンスを活かして、相互交流、とくに若い人達が海外に出かけてほしい」と語っている。
 地方への直行便を増やし、地方に海外から旅行者が訪問する。その便で、日本から若者を中心に海外へ出かける。それによって、地方の出国率向上につながる。
 インバウンドの実働部隊である日本政府観光局(JNTO)の清野智理事長も、「観光は相互交流。我々も“来てくれ来てくれ”だけでなく、諸外国に行くと、日本にどんどん行くが、日本からも来てくださいと言われる。あまりに片道通行だと長続きしない」と、双方向交流の重要性を強調している。
 JNTOの理事長がアウトバウンドの重要性を語るのを聞いたことは、ほとんど記憶にない。清野理事長は、25%未満の日本人のパスポート取得率にも言及し、「まだ10%に満たない県もある。チャーター便も含めて、インバウンドもアウトバウンドも一緒にやることで実現していく。来てくれだけでなく、こちらからも行く」と述べ、地方からの直行便を誘致し維持するためには、双方向交流が不可欠な点を強調した。
 観光庁とJNTOのトップが、アウトバウンド向けではない観光政策のシンポジウムで、インバウンドを増やすためには、アウトバウンドの拡大が重要だと語る。この二人が就任する以前では考えられなかったことだ。
 それなのに、これまでと同じようにインバウンドだけを語っている人のなんて多いことか。だが、我々は知っている。「真の双方向交流」が既に始まっていることを…。
 今年1月から出国税(国際観光旅客税)が徴収されている。日本人の海外渡航者からなぜ聴取するのか、その裨益はどこにあるのか。議論不十分なまま出国税の徴収は始まった。なぜ出国税の問題が盛り上がらなかったのか。それは、海外渡航に対する首都圏と地方の温度差も一因と考える。この温度差を解消するには、地方からの海外旅行を身近にすることだ。
 とくに、出国率の低い青森、秋田をはじめ、東日本大震災の復興途上にある東北地方からの海外旅行促進を図らなくてはならない。東北地方の観光復興、訪日旅行者を拡大するために、若者を中心に東北地方からの海外旅行を促進することが必須ではないか。(石原)