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2018.07.11

WING

30日27DDG命名・進水式、BMD持つイージス艦

2020年3月に就役、CECでより高精度な目標情報

 

 海上自衛隊は、平成27年度護衛艦(27DDG)の命名・進水式を7月30日に実施する。同護衛艦は弾道ミサイル防衛システム(BMD)を有する新たなイージス艦で、総工費が約1680億円。2020年3月ごろの就役を予定している。海自では、弾道ミサイル攻撃対処能力を向上させるため、現有のBMD対応イージス艦「こんごう」「きりしま」「みょうこう」「ちょうかい」に続き、「あたご」「あしがら」へBMD能力を加える改修を行っている。そのため、27DDGは7隻目のBMD対応イージス艦になり、今後2番艦の28DDGが就役することで、2020年度には8隻体制となる。
 27DDGはあたご型イージスシステム護衛艦の性能を向上させたもの。建造時からBMD能力を有した護衛艦だ。能力向上の大きなポイントは、共同交戦能力(CEC:Cooperative Engagement Capability)を装備すること。これは、ほかのCECを装備する護衛艦などと対空目標情報を共有するシステム。ほかのアセットと情報を共有することで、より高精度な目標情報が得られ、対象の追尾・迎撃の精度を向上させる。CECを装備した護衛艦同士が情報を共有するシステムとなっているため、海自としては、今後CECを装備する護衛艦との連接が基本となる。今後は、27DDGの2番艦となる28DDGが控えていて、こちらとの連接による精度の向上が期待できる。
 イージスシステムについては、最新のベースライン9を装備する。これは、すでに改修が行われている「あたご」「あしがら」の2隻に続く3隻目に当たる。開発が進められている迎撃ミサイル、SM-3ブロックIIAの発射が可能だが、装備する対空レーダーはSPY-1Dとなっている。今後対空レーダーは、換装が必要となった際の手間や費用について、改めて調査を行う必要があるとしている。
 ちなみに、最新の標準型ミサイルSM-6について、海自では今年度に試験用弾薬の取得予算を計上したところであり、試験の内容など米側と調整中とのこと。27DDGの発射能力の有無については、回答できないとしている。

 

ハイブリッドのCOGLAG方式、「あさひ」にも採用

 

 機関系統については、護衛艦「あさひ」とその2番艦「しらぬい」にも採用された、ハイブリッド推進機関COGLAG方式としている。これは電気によるモーター推進と、ガスタービンによる機械推進を組み合わせた機関の形式。燃費が向上するとともに、ライフサイクルコストの低減が図ることができるという。
 COGLAG方式は、コンバインド・ガスタービン・エレクトリック・アンド・ガスタービンの略。低速時には、ガスタービン発電機でモーターを動かす電気推進で航行する。高速での航行時は、ガスタービンによる機械推進と、モーターによる電気推進とを組み合わせた複合推進によって、より効率的に速度を確保する。同方式では、ガスタービンによって電気を常につくり続けることになり、その電気で機関を動かす。ハイブリッド自動車のように、バッテリーへ動力のための電気を充電する方式ではない。2つの機関によって効率的に動かすことで、ライフサイクルコストを低減することが狙いとなっている。

 

《27DDG概要》
▼基準排水量=約8200トン
▼全長=169.9メートル(全幅21メートル、喫水12メートル)
▼機関形式=COGLAG(2軸)(ガスタービン主機・ガスタービン発電機・推進電動機 各2基)
▼出力=7万PS
▼最大速力=30ノット
▼乗員=約310名
〈主要装備〉
(ミサイルなど)
 ▼62口径5インチ砲×1基、高性能20ミリ機関砲×2基、イージス装置×1式、VLS装置×1式、SSM装置×1式
(水雷)
 ▼アスロック装置×1式、水上発射管×2基
(情報)
 ▼対空レーダーSPY-1D×1式、対水上レーダーSPQ-9B×1式、水上艦用ソーナー×1式、CEC×1式、多機能曳航ソーナーMFTA×1式、EW装置×1式、艦内統合ネットワーク×1式

 

※写真=写真の「あたご」は、「あしがら」とともにBMD能力を有するイージス艦へ改修。2020年3月就役予定の27DDGは、日本で7隻目のBMD対応イージス艦になる(提供:海上自衛隊)