2018.07.10

WING

防空の最後の砦、自身の役割を考え“俺がやる”

緊張続く高射部隊、日々の訓練が戦力を最大限発揮

 第6高射群を束ねる小野打泰子(おのうちやすこ)群司令は、昨年9月に航空自衛隊初の女性高射群司令に就いた。まさに北朝鮮が立て続けに弾道ミサイルを発射し、日本上空を通過した直後で、迎撃の実行がより現実味を帯びるほど、緊張の糸は最大限に張り詰めていた。今のところ、そんな危機的ともいえる状況は、小康状態となっているものの、同部隊はまさに弾道ミサイルが通過した直下で警戒に当たっている。いまだ緊張状態が続く部隊をいかに統率するのか。小野打群司令には、部隊の指導方針とともに、近年活躍の幅が広がる女性自衛官の進出の状況についてたずねた。

 小野打群司令、役割とできることを考える
 短い言葉で理解深める

 

 小野打群司令は、第6高射群がまさに弾道ミサイル防衛、防空の最後の砦であり、戦力を発揮しなければならないとして、「私たちの行動すべてが、事後の情勢に大きな影響を与えることを自覚している」と述べ、任務の重要性を説明した。その上で、部隊では普段から強い使命感を持って任務に邁進しているという。
 小野打群司令の部隊に対する指導方針は「俺がやる」とのこと。その力強い方針には、各隊員が「自分の役割と、自分に何ができるのかをしっかりと考える」という意味が込められている。ほかの誰でもなく「自分自身“俺がやるんだ”という強い気持ちを持って、成すべきことをやってほしい」と説明した。
 また短い言葉の中には、より分かりやすく、理解を深めてほしい、との願いもあるという。第6高射群は戦闘部隊であり、ほかの部隊と比べて比較的若い隊員が多い。こうした若い隊員にも浸透しやすいように、理解しやすい言葉とした。さらに、部隊が群本部から離れた八雲、車力に展開し、隊員と頻繁にコミュニケーションが取れない。そのため、声をかけ続けているのと同じように、いつでも思い出せるような言葉で指導方針を伝えているという。
 さらに補足として「もちろん何でも自分でやれということではなく、仲間に任せるところは任せるべき」だと説明した。隊員が自身の役割を理解した上で「組織として、チームとして、対応することも大事なこと」だという。第6高射群というチームの中で、仲間の誰一人が欠けても、任務の遂行に支障を来すことになるため、隊員には「お互いを思いやり、そしてそれぞれに与えられた役割を果たしてほしい」とした。

 失敗が許されない任務、真摯に練成訓練を推進

 

 高射部隊は、弾道ミサイルだけでなく、航空機や巡航ミサイルを対処する任務を行う。小野打群司令は、いずれの脅威にも対処できる能力を有しているものの「脅威目標に対する失敗は許されない」と、任務の厳しさを滲ませた。部隊の性質上、完璧さが求められる。そのため、特に隊員の練度向上を図る練成訓練には力を入れているという。さらに、もう1つ重要な点として、器材整備を挙げた。必要なときに器材故障が発生しては、能力を発揮することはできない。移動の途中などで不意に故障が発生するかもしれない。そのような事態に陥らないよう、普段から器材整備には万全を期して臨んでいるとした。
 通常最も重要な任務だと考えている部隊の練成は、各級指揮官を中心に隊員一丸となって取り組んでいるという。普段から任務との一致を図りつつ、真摯に練成訓練を推進。訓練を綿密に実施して、高射群の戦闘力を充実強化して、望まれる時に最高度に能力を発揮させる必要がある。これはひたすら、繰り返し訓練を行うことが重要だという。人間は緊張している状態では、多くのミスが発生するもの。しかし、いざというときにミスは許されない。そこで、自然と身体が動くようになるまで、非常事態でも普段の訓練どおり動けるまで、徹底して訓練を行うという。
 さらに高射部隊では、戦闘力を最大限発揮させるため、機動展開訓練を実施している。昨年は、PAC-3を迅速かつ円滑に展開できるよう、器材・人員の移動や、器材展開の習熟度を確認した。これは、戦術技量の向上を目的として、全国的に実施。国民の安全・安心の醸成に努めてきたという。また訓練には、機動展開訓練以外にも、普段から実機やシミュレーションを活用した防空戦闘訓練を行っている。シミュレーションによる訓練は、様々な状況を再現するもので、効率の良い訓練を行っているところ。加えて秋には米国での実弾射撃訓練を計画している。実弾を発射する訓練は、機会自体がそう多くはないものの、非常に高い効果があるという。隊員の大きな成長が見込める貴重な機会として、特に重要視しているとのこと。

 JADGEシステムのもとイージス艦と連携

 

 高射部隊は弾道ミサイルなどの破壊措置を実施する場合、BMD統合任務部隊に編成されることになり、指揮官である航空総隊司令官の指揮を受ける。その際には、海上自衛隊のイージス艦も統合任務部隊に編成され、上層での対処・迎撃をイージス艦が担い、下層の対処・迎撃を高射部隊のPAC-3が担うといった、多層防衛が基本となっている。高射部隊とイージス艦が直接調整することはないものの、自動警戒管制システム(JADGE)によって連携した防衛を担うため、お互いに任務を完遂するという気概を持って任務に就いているという。
 また、陸上自衛隊や米国の部隊とは、上級部隊計画の訓練の場などで、連携した訓練を行う機会がある。各種事態の際に、それらの関係部隊と緊密に連携した対処ができるよう、各種訓練の機会に積極的に参加している。

 “女性初”が減少傾向へ、男女差より今後は個人差

 

 小野打群司令は、自衛隊では「女性にとって一つの過渡期が終わりつつある」ことを実感しているという。航空自衛隊では、女性自衛官の採用および登用の拡大を図り、キャリア形成支援や、勤務・居住環境の整備など、女性の活躍を推進するための各種施策が徐々に整いつつある状況だ。その中で、“女性初の〜”といったことも徐々に少なくなってきて、女性自衛官が普通の存在になりつつあると感じているという。
 小野打群司令は、まだ自衛隊に女性の設備が十分に整わないころ、情報幹部として入隊した。通常は地方から配属されるが、女性用の設備がなかったため、中央からの配属となった。当時は、女性自衛官に対して偏見を持った声も聞かれたが、諸先輩の努力もあって、女性の活躍が推進されたと振り返った。また、これまでは準備期間であり「すなわち女性の活躍が本格化するまでの過渡期は終盤を迎えている」との考えを示した。
 そして、これからは“女性〜”といわれる時代は終わり、男女の性差なく、能力とやる気があれば、活躍できる時代に入っていくという。「男女の差はそれほど感じられない。これからは個人差によって進みたい道が決まるようになる」と話した。また防衛省でも、女性自衛官の配置制限が撤廃され、ワークライフバランスの制度も充実し、働きやすい勤務環境になってきているという。自衛隊は国の機関であり、ワークライフバランスのとれた制度が充実している。「環境に左右されることなく、女性でも出世が目指せることが自衛隊の魅力」だと話した。最後に、様々な制度を「しっかり活用して、自分の希望する道を進んでほしい」と、女性自衛官へエールを送った。

※写真1=第6高射群司令の小野打泰子1等空佐