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2020.07.17

WING

宇宙作戦隊隊長阿式俊英2等空佐に聞く

安定的な宇宙領域活用に寄与する部隊の任務とは

 航空自衛隊は去る5月18日に宇宙作戦隊隊を新編した。同部隊では、関係各機関との交流なども踏まえて人材育成を行いつつ、システムやレーダー整備など施設を充実化させて、2023年度の本格運用開始を目指す。
 同隊を率いる阿式俊英隊長(2空佐)は、情報化社会において欠かすことのできない人工衛星の安定的な利用が「キラー衛星やスペースデブリによって脅威が増大している」と危惧する。まずは23年度の本格運用に向けて、宇宙領域の人材育成や米国との連携構築に力を入れて、万全の体制で準備を整える方針を示した。

 

――部隊を指揮する上でのモットーや留意点について教えて下さい

 

 部隊を指揮する上で、チームワークを大切にしています。一人ひとりがチーム意識を持ち、相互補完することにより組織として能力発揮していけるよう指導しています。
 その上で、部隊として実施したことに対する全ての責任は指揮官が取るということを常に意識しています。

 

――改めて宇宙領域の重要性、宇宙監視を行う意義について教えて下さい

 

 各国の軍は、指揮通信、情報収集、測位など多くの分野で宇宙への依存度を飛躍的に高めており、人工衛星は我が国の防衛にとっても必要不可欠なインフラとなっています。
 他方、各国は衛星攻撃用ミサイルや、いわゆるキラー衛星、衛星通信の妨害装置などを開発、配備し、また、衛星破壊実験などにより、スペースデブリが飛散するなど、宇宙空間の安定的利用に対する脅威は増大しています。
 このため防衛省では、宇宙空間の安定的利用に資するため、JAXAなどの関係機関と連携しながら、山口県に宇宙を継続的に監視するレーダーを設置するほか、府中基地に同レーダーが収集した情報とJAXAが保有する望遠鏡やレーダーが収集した情報などを集約するシステムの整備を進めています。さらに、SSA衛星(宇宙設置型光学望遠鏡)の打ち上げ等を通じて、能力の一層の強化を進めていくこととしています。
 こうした取り組みに先駆けて、宇宙領域の知見を持つ人材の育成や米国との連携態勢の構築を進め、システムを遅滞なく運用できるよう、予め必要な準備を進めていくため、5月18日に宇宙作戦隊が新編されました。

 

――任務で得た情報をいかに周知・共有するのでしょうか。また外部組織との情報の伝達などはどのように行いますか

 

 自衛隊内については自衛隊の指揮システムなどの既存のシステムを活用して共有していくことになると認識しております。
 外部組織への伝達の在り方は検討中と承知しております。・・・

 

※写真1=宇宙作戦隊初代隊長の阿式俊英2等空佐(提供:航空自衛隊)

※写真2=隊旗授与式の様子。感染症の影響を考慮して、参加人数を抑え、間隔を空けて式典を行った