2018.07.02

WING

IHI、将来戦闘機プロトタイプエンジンXF9-1納入

装備庁、2019年度末まで運転試験へ

 IHIは6月29日、研究試作を受注し全体組立を完了した将来戦闘機用プロトタイプエンジンXF9-1(目標推力15トン)を、同社瑞穂工場で防衛装備庁航空装備研究所に納入したと発表した。防衛装備庁もXF9-1の受領を発表し、2019年度末までエンジン運転試験を行い、基本的な性能を確認していく計画としている。今後、北海道の防衛装備庁千歳試験場の地上燃焼試験設備で運転試験を実施していくことになる。
 防衛装備庁は将来戦闘機技術の中でも国内開発に不可欠としてエンジン構成要素単体、コアエンジン(圧縮機、燃焼器、高圧タービンから構成される自立運転可能なユニットで、ジェットエンジンの性能を左右する重要な部分)と段階的に研究試作と運転試験を急速に進めてきた。今回納入されたプロトタイプエンジンは、コアエンジンにファンと低圧タービン、アフターバーナーなどを付加した実機搭載型エンジン。防衛装備庁の発表によると、XF9-1の全長は約4.8メートル、入口直径は約1メートル、推力は海面静止・標準大気状態/非搭載条件でアフターバーナー作動時の最大推力15トン以上、アフターバーナー非作動時推力11トン以上としている。
 XF9-1は将来戦闘機の搭載エンジンの原型となるものを目指している。技術実証機X-2に搭載して飛行試験が行われたXF5-10エンジン(実証エンジン)から大幅な性能向上を図っている。
 IHIによれば、日本の自主技術である世界最先端のコンピュータシミュレーションを駆使した設計技術や、日本が世界に誇る材料技術・加工技術を随所に採り入れているという。とくに防衛省の将来戦闘機ビジョンに示されている空気取入口の直径を小さくしながら、推力を確保するハイパースリムエンジンのコンセプトを実現するものとも言える。

 

 13年度から戦闘機用エンジン目標明示
 コアエンジンで1800度Cの作動を確認

 

 IHIはXF9-1の設計製造に先立ち、将来の戦闘機用エンジンを実現するための研究試作として、2010年度に防衛装備庁(当時は技術研究本部)より「次世代エンジン主要構成要素の研究試作」を受注した後、最先端技術を取り入れた戦闘機用エンジンを提案し、圧縮機・燃焼器・高圧タービンの試作などの要素研究を実施した。
 続いて同社は、2013年度に「戦闘機用エンジン要素の研究試作」を受注し、コアエンジンを設計製造し、2017年6月に防衛装備庁航空装備研究所に納入した。防衛装備庁航空装備研究所による試験にでは、コアエンジンの目標である高圧タービン入口温度1800℃における作動健全性の確認が完了している。
 そしてIHIは引き続き、2015年度に「戦闘機用エンジンシステムの研究試作」を受注し、「次世代エンジン主要構成要素の研究試作」で提案した世界最先端技術をエンジンとしてインテグレートするため、国内企業の協力も得ながら、コアエンジンをベースとして前部にファン、後部に低圧タービン・アフターバーナ・排気ノズルを装着したXF9-1の設計製造を推進した。その結果、2018年6月に所定の機能性能を満足することを確認し、納入の運びとなったもの。
 IHIは今後も防衛装備庁航空装備研究所を万全の態勢でサポートし、戦闘機用エンジン研究開発の技術基盤の構築を図っていくとしている。

 

 自前の戦闘機用エンジンは日本の悲願

 

 将来戦闘機プロジェクトにおいて、自前の戦闘機用エンジンを持たないことは共同開発を含めて大きな制約要因である。F-2戦闘機として実現した先のFS-X(次期支援戦闘機)プロジェクトでは、当初は自主開発でエンジンのみ米国から導入の方針でスタートしたものの、米国からエンジン供給が認められず、米国機(F-16)を原型とする改造開発を余儀なくされた。これ以降、防衛省および日本のエンジンメーカーは戦闘機用エンジンを目指した研究試作を強化した。一連の研究試作の設計やコンポーネントの一部製造にはIHIだけでなく、川崎重工、三菱重工のエンジン技術者も参画しており、コンピュータシミュレーションではJAXA(宇宙航空研究開発機構)、耐熱合金の研究ではNIMS(物質・材料研究機構)、さらに大直径ディスク材の鍛造では日本エアロフォージなど、研究機関、産業界の協力も あり、オールジャパン態勢が今回のXF9-1の完成を支えている。実際の将来戦闘機がF9エンジンを搭載するかどうかは、現状では不明ではあるが、F-2後継機の共同開発などの今後の展開の中で、このXF9-1が大きなバーゲニング・パワーになることは間違いないだろう。