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2020.03.09

WING

川崎重工業、令和2年を防衛装備品移転元年に

下川プレジデント、官民の強力な連携体制構築が重要

 政府が防衛装備品移転三原則を閣議決定したのは、去る2014年4月のこと。それまで原則的に禁止していた武器や関連技術の移転に関する立場をあらため、安全保障などの条件を満たせば移転・共同開発を認めたものとなった。振り返ればすでに6年弱の歳月が経過した訳だが、防衛装備品(完成品)の移転は実現していない。
 防衛装備品の移転においてとりわけ注目されている装備品が、川崎重工業が開発したC-2およびP-1だ。
 諸外国で開催するエアショーなどに、防衛省・自衛隊が機体を持ち込み、アピール攻勢をかけている。昨年開催したパリ国際航空ショーにおいては、はじめてP-1とC-2という姉妹機が揃って会場に展示され、世界の航空・防衛関係者たちから熱い視線を集めたことは記憶にあたらしい。
 このほど本紙の取材に応じた川崎重工業航空宇宙システムカンパニーの下川広佳プレジデントは防衛省の取り組みに謝意を表明しつつ、「この令和2年を、装備品移転元年にしたい」とコメント。「我々も各国のニーズの把握、マーケットリサーチを進めており、各国の関係者は素晴らしい機体だと評価して頂くなど、反応は良い」とした。
 「では、ビジネスにというところになる訳だが、日本側としては官民が強力に連携して、それぞれの役割、タスクを実行する必要がある」と、実際に移転へと漕ぎ着けるためには、官民の強力な連携体制構築が不可欠であることに言及した。
 「移転にあたってはそれぞれの国における制約がある。例えば、オフセット条項が設けられている場合など、メーカーとしてどれだけその要求に応じることができるのか」との認識を示しつつ、加えて「我々は機体を納めるが、パイロットや整備士訓練などは、ある意味で防衛省に委ねなければならないところがある。そのような役割を互いに認識して、各々の役割を果たす体制が重要」であることを強調した。
 さらに、「例えばP-1はプラットフォームとして非常に大きな活躍の場があるだろう。それぞれの国における作戦があるだろうから、搭載装備品に関しては各国の要求仕様に応じて載せ替えることができる」としており、各国の防衛政策に基づく要求仕様に、柔軟に対応することで移転へと繋げていきたいとの考えを示した。

 スタンドオフ電子戦機の開発の行方
 
 昨今、スタンド・オフ・レンジの防衛能力が注目されている。スタンド・オフ・レンジとは対象の脅威の対処可能圏外を意味するもので、防衛省の2020年度予算をみても、スタンド・オフ・ミサイルの取得、そしてスタンド・オフ電子戦機の開発といった言葉が並んだ。
 スタンド・オフ電子戦機の開発に対して防衛省は、2020年度予算に150億円を計上。同機の開発によって、電子妨害をすることにより自衛隊航空作戦の遂行を支援することを目指すことになった。
 防衛省は2020年度から2025年度までにスタンド・オフ電子戦機の試作を実施する計画で、2024年度から2026年度まで技術実用試験を実施することを予定している。
 電磁波領域の優越を確保することは、領域横断作戦の実現に不可欠なものとなっており、スタント・オフ・レンジから電波妨害を実施して、相手の組織的な戦闘能力の低減または無効化が可能な電子戦機が求められるようになっている。「電子戦」という秘匿性が高い装備品であることから海外からの調達が難しいことに加え、現状では国内に直接調達可能かつ要求する性能を満たすシステムがなかったとして、防衛省は日本独自で開発することが求められていた。
 下川プレジデントは、「我が社はE-767、E-2Cといった、電子戦機のシステムインテグレーションに対して長年に亘り取り組み、確たる知見・経験を有している」との認識を示しながら、防衛省が予算を盛り込んだことで、「これから詳細に亘り防衛省の仕様・スケジュールにあわせて、我が社のインテグレーション能力を発揮して、良い機体に仕上げていきたい」とコメントした。
 このスタンド・オフ電子戦機の開発で防衛省は、機体改修キットの製造のほか、妨害装置、電波収集装置、試験装置などの製造に取り組むとしている。「母機となるプラットフォームがまずあって、あとは搭載するシステムを、我々とシステムメーカーがコラボレーションしながら短期間で作り上げていく。それぞれのメーカーは要素技術を有しているため、この機体に搭載する仕様をまとめていけば、大きな開発を伴うということは少ないのではないか」との認識を示しており、研究開発のスピードアップを図っていく考えを示した。

 P-1はどのように能力向上が図られるのか
 
 C-2の姉妹機であるP-1は、近代化改修として、その能力向上が図られることになった。下川プレジデントは「P-1については、探知識別能力、飛行性能、情報処理能力を向上するために近代化と称して3機分を予算化頂いた」ことに言及。防衛省の来年度予算では、3機分合計で632億円が予算化されている。
 「過去3年くらいかけて官民でリサーチングと官側要望の実現性整理をしてきた。地固めはできている」との認識を示しつつ、近代化改修として、探知識別能力、飛行性能、そして情報処理能力などについて、従来のP-1よりも向上するとしている。
 とりわけ情報処理能力の向上では、「防衛省に対して提案しているのが、とくに戦術支援システムに関するところだ」と明かした。
 「P-1に搭載するかどうかは別にして、やはり戦術支援システムにもAIが入るようになるだろう」とし、「様々な選択肢をソフトウェアが提案して、最終的には人間が選択することになる」ような戦術支援システムを提案していることに触れた。
その他、飛行性能向上としては酷暑環境における冷房能力や他国軍との通信等インターオピラビリティ能力の向上を、探知識別能力ではコアレーダーの性能を向上することになっているという。

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 「ヘリのカワサキ」が描く将来モビリティへの対応
 まずは宇宙ごみ除去の事業化を目指す
 さらに小型衛星を活用する多方面の事業を検討中