2018.06.08

WING

自民党防衛提言、多次元横断防衛構想を提唱

予算の大幅増や宇宙・サイバー対処能力強化も

 自由民主党はこのほど、「新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画の策定に向けた提言」を、安倍晋三首相に提出した。このなかで「多次元横断(クロス・ドメイン)防衛構想」を提唱し、その実現のためNATO諸国の目標である対GNP比2%を参考として、大幅な防衛予算の増額と宇宙・サイバー対処能能力の大幅な拡充を提言した。
 新大綱策定の基本方針としては、(1)脅威に応じた防衛力整備、(2)同盟・友好国との連携と安全保障協力の強化、(3)必要かつ十分な予算・基盤の確保の3点を掲げている。
 このうち脅威に応じた防衛力とは宇宙・サイバー・電磁等領域も活用した多次元横断的な防衛力であるとし、統合運用の観点から最適化された形で整備するとしている。また、列島線防衛の観点をはじめ必要な防衛力の質・量の拡充を行うとしている。

 

 中央と南西に統合司令部を
 統幕に宇宙部門、宇宙監視は空自担当

 統合運用については、空間・地域を跨いで総合・複合的に結集させ、事態に対応する備えを構築すること、これがクロス・ドメインであり、不可欠だとした。このため、中央と南西に常設の統合司令部を設置するなど統合運用機能の強化、陸海空の指揮統制の統合を図る。さらに弾道ミサイル防衛と巡航ミサイル防衛などを統合した統合航空ミサイル防衛(IAMD)、宇宙・サイバー・電磁スペクトラム、水陸両用戦、情報、輸送、補給、衛生など幅広い分野で自衛隊の統合を推進すべきとしている。
 宇宙については、統幕に宇宙運用部門を新設し、宇宙状況監視(SSA)は航空自衛隊に担わせ、準天頂衛星や超小型衛星の自衛隊活用も推進する。さらに海洋状況監視(MDA)や早期警戒衛星技術のの研究など、防衛省の宇宙予算も十分確保しつつ、政府全体として国家安全保障局を中心にJAXAを含む政府機関が一体となって宇宙安全保障能力を強化することとしている。
 サイバー防衛体制の強化では、サイバー空間は国防の最前線と位置づけ、既存の防衛予算に別途上乗せした十分な予算の獲得と人員の確保が必要と述べている。そして、サイバー攻撃のみであっても武力攻撃事態と認定して自衛権を発動できるよう法的論点を整理する。また、サイバー防衛には監視・防護態勢だけでなくサイバー攻撃能力を保有していなければ効果的に実施できないとして、サイバー攻撃能力の保有を検討するとした。また、部外人材の登用・契約など高度な技能・知識・経験を持つ人材の確保のための人事制度も検討する。
 電磁スペクトル領域の強化とは、いわゆる電子戦のことで、これも自衛隊では不十分とされて来た。提言では電子攻撃の脅威に備えるため自衛隊が使用する周波数域を拡大し、移動体通信を含む民間事業者による優先制御を実施させて強靭な戦闘能力を確保できるよう、電磁スペクトル管理を実施するとしている。まて、電子戦環境下での自衛隊の能力発揮のため電子攻撃からの防御、敵の電子戦能力に対する妨害のため必要な装備の整備により電子戦能力を強化するとしている。

 

 「多用途運用母艦」を提言、改修含め検討
 代替滑走路、災害時の拠点など多用途に運用

 各種報道で取りざたされている「多用途運用母艦」については、継戦能力の強化の項目の一項、「基地等の抗堪化」の中で述べられている。陸上航空基地の代替、災害時の拠点など平時・有事の多用途任務を想定し、「空母」という文字は使っていない。F-35Bについてもその流れの中で、防空力の強化になるもなるものとして挙げられている。
 「有事における自衛隊・米軍の戦力発揮基盤を維持するため、簡易型防護シェルターの導入や施設の地下化等、EMP(電磁パルス)攻撃対策も含めた基地等の防護・分散等の抗堪化を推進するとともに、これらが被害を受けた場合の滑走路灯の復旧能力を強化する。
 また、陸上の航空基地が損害を受けた場合の代替滑走路としての機能(基地機能の分散および抗堪性の向上)、列島防衛のための平時・有事の防空任務あるいは災害時の救援活動の拠点としての機能(輸送、医療、自治体も含む航空機の運用)等、専守防衛の範囲内の様々な用途に用いる「多用途運用母艦」について、具体的な運用構想や既存艦艇の改修を含めた導入のあり方等の検討を進め、早期の実現を図りつつ、これに搭載・運用することも可能なSTOVL機(F-35B等)を取得する。
 また、司令部および部隊間の指揮通信等についても抗堪性を確保するため、JADGEの代替性向上、自衛隊の通信インフラの多重化・耐妨害化・秘匿化を推進する」。

 

 将来戦闘機は国際協力も視野に
 主導権持つ開発に向け取組み推進

 また、対処能力の強化では、先進的な装備体系の導入による対処能力の強化との一項を設け、その中で将来戦闘機について次のように述べている。「特に、将来戦闘機については、これまでの国内の技術的な蓄積を活かしつつ、国際的な協力も視野に、わが国がイニシアティブを持った開発等に向けた取組を推進する」。この前段で先進的な装備体系として水陸両用戦能力の強化、長距離打撃力(スタンドオフ・ミサイル、地対地・地対艦ミサイル)の整備、本邦の将来の戦闘機体系を含めた防空体制の一層の充実向上などを挙げている。また、AI、無人機技術などの先進技術獲得への取組を積極的に進めて行くことで、自衛隊の一体的な戦力発揮に資する陸海空戦力の強化を行うとしている。

 

※写真=「多用途運用母艦」に改修が検討される護衛艦「いずも」(提供:海上自衛隊)

 

※写真=艦載運用されるSTOVL型のF-35B(提供:米海軍)