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2018.05.28

WING

JAL632便、エンジン落下物は98個に

病院窓や車両窓、建築中の建物が損傷

 日本航空(JAL)のJL632便(熊本発羽田行)が5月24日、離陸後に左エンジン(CF6-80C2型)の不具合が発生し、飛行経路周辺に落下物が発生した問題で、運輸安全委員会は地上に落下した金属片数は5月25日16時25分現在で、98個にのぼったことを明らかにした。運輸安全委員会によれば、金属片が発見された地点は5地点にのぼり、病院窓ガラスが損傷したほか、フロントガラスにひび等の車両が損傷、さらには工事中の建築物が損傷するなどの被害が発生した。
 JALは「エンジンの振動が高くなったという運航乗務員の証言があることから、「原因はまだ特定することはできていないが、エンジン内部の振動が高くなるという状況からすると、タービンの一部に不具合が発生したのではないか」と、不具合原因を推定。「この推測に基づいて、(同型機)他機の安全性を確認するという意味で、エンジン全機に対して内視鏡検査を開始している」と、5月24日から検査を開始したことを明らかにした。
 ちなみに、JALは767型機を現在35機保有しており、エンジン台数は計70台を保有する。「弊社が運航する767型機のCF6エンジンモデルでいえば、こういった不具合事象は初めて。現在、メーカーに同種の事例が発生していないかなど、問い合わせをしている」という。
 その上でJALとしては、「(保有する70台のうち)優先度の高いエンジンは計46台あって、これらのエンジンについては5月31日までに内視鏡検査を実施して、不具合がないことを確認する」としており、「残りの機体についても、速やかに内視鏡検査を実施して、不具合がないことを確認する」計画にあることを明かした。点検対象となるエンジンは、不具合が発生したCF6-80C2型以外にも、派生エンジンも対象とした。

 

エンジンケースに孔確認
重大インシデントに認定

 

 この重大インシデントは5月24日、熊本空港の西約10キロメートル、高度約1800メートル上空で、JALが運航する767-300型機(JA8980)が乗務員8名、乗客209名の計217名を乗せて、熊本空港を飛び立って羽田空港に向かった。当該機は5月24日15時52分、熊本空港を離陸して上昇中、第1(左側)エンジンに不具合が発生したため、16時17分同空港に着陸。機長は不具合が発生したエンジンの出力を絞り、熊本空港への引き返しを判断し、管制に対して緊急通信で航空交通管制上の優先権を要請のうえ引き返した。着陸後、自動でスポットに向かった後、検査したところ、第1エンジンのタービンブレード、ケースの損傷などが目視で確認された。運輸安全委員会は、当初、イレギュラー運航として取り扱っていたが、その後の調べで、エンジンのケースに破片の貫通は確認されていないが、孔が確認されたことから、航空法施行規則第166条の4第6号に規定された「発動機の破損(破片が当該発動機のケースを貫通した場合に限る。)」に準ずる事態(同条第17号)であり、重大インシデントに該当するとして、重大インシデントに認定した。運輸安全委員会はこの問題を重大インシデントに認定・航空事故調査官3名を、熊本空港に派遣した。
 5月25日に都内で記者レクを行ったJALは、「エンジン内部後方およびエンジン内部後方に一部損傷がある」と説明。この時点では運輸安全委員会の調査が入っていることから、JALとしては外観で確認するに留まっているとしていた。
 第1エンジンに不具合が発生した当時、「離陸後、エンジンに振動を感じ、さらにエンジンの排気温度が異常に高くなってきた。そのため、運航乗務員は推力を絞り、熊本空港に戻った」という。エンジンを停止することはなかったが、「第1エンジンは最後まで回転し続けていた。ただ、外からみても分かるように、エンジンの一部に不具合が生じている」ことが明らかになった。
 エンジン内部の状態を把握するためには、ボアスコープを使った検査が必要になるが、5月25日の時点では運輸安全委員会の調査がスタートしたばかり。そのためJALとしては「運輸安全委員会の許可が得られれば、実施していく」とし、許可が降り次第、詳細な内部検査を実施していく方針だ。
 ちなみに、不具合が発生したエンジンは、今年3月に内視鏡検査を実施していたが、「その時点では問題が発生しているなどの報告はなかった」という。
 なお、JALは今回の件について、「お客様に対してご不安、ご迷惑をかけてしまったこと。さらに、近隣住民の方々にご迷惑をおかけしてしまったことに、深くお詫びを申し上げたい」としたうえで、「原因究明を含めて再発防止に努めたい」としている。

※写真=左エンジンの不具合について説明するJAL