2020.12.14

Go Toで社会を分断するな

 政府は観光戦略実行推進会議で、コロナ禍からの観光需要の早期回復に向けて、「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」を決定した。国内旅行はGo Toトラベル事業について、感染状況を踏まえつつ、適切に運用しながら本格的な需要回復に結びつけるとして来年6月末までの延長を決めた。
 また、アウトバウンド、インバウンドの国際往来は、ビジネストラックに準じた防疫措置を徹底した管理型小規模分散型のパッケージツアーを試行的に実施する。小規模の人数などは今後検討する。
 これを受けて、政府は事業規模総額73兆6000億円の追加経済対策を閣議決定した。この中で、旅行需要の回復は、国内観光を中心に感染拡大防止策との両立を一層徹底した上で、「失われた旅行需要の回復をめざす」とし、GoToトラベル事業は中小、被災地の事業者に配慮し、平日への旅行需要分散化、制度を段階的に見直しながら来年6月末までの延長を基本に、感染状況を踏まえて柔軟に対応する。また、航空会社の着陸料減額、感染防止施設整備などによる国際往来の再開、訪日インバウンドの段階的回復をめざすことを決めた。
 政府が再三指摘しているように、鈴木北海道知事と吉村大阪府知事の要請により、札幌市と大阪市発着の旅行をGo Toトラベル事業から期限付きで停止した。また、小池百合子東京都知事の要請により東京発着の旅行は65歳以上の高齢者と基礎疾患を持つ人に対して期限付きで自粛を呼び掛けた。
 現状はこのまま推移しており、政府は「観光関連産業は全国で約900万人が従事するなど地域経済を支える基盤であり、感染症による危機を乗り越え、地方への人の流れを促し、地域経済を守るため、国内旅行消費額の約8割を占める国内観光を中心に、感染拡大防止策との両立を一層徹底した上で、失われた旅行需要の回復をめざす」と、はっきり明記している。
 新型コロナウイルス感染症対策分科会は、「Go Toトラベル事業は感染拡大の主要な要因とのエビデンスはない」と明言しており、Go Toトラベル事業を継続していくことに揺るぎがあってはならない。
 ところが、国内の新型コロナウイルス感染者が拡大するにつれて、Go Toトラベルへの風当たりが強まっている。札幌、大阪両市発着のGo Toトラベル事業停止、東京発着のGo Toトラベル事業から高齢者と基礎疾患のある人への自粛の呼び掛け、さらには全国への感染者拡大で、Go Toトラベル事業停止の声が日増しに高まっている。
 このために、医療専門家や識者の中には「Go Toトラベル事業の停止」を求める声も出ている。医療の専門家は感染の拡大による医療の逼迫からGo Toトラベルの停止を訴える。これはGo Toトラベル事業により感染者が拡大することを前提としている。その証拠はない。
 また、識者の中にはGo Toトラベル事業を一時停止して、その間は観光事業者に対して経済支援を行うとの意見もある。しかし、Go Toトラベルに変わるほどの追加支援ができるほどの財政的余裕がこの国にあるのか。
 追加経済対策は「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」と銘打っている。新型コロナウイルスから「国民の命と暮らし」を守らなくてはならない。いまGo Toトラベルを停止することで「暮らしを守ることができない」人々がいる。「希望をなくす」人々もいる。だからこその感染拡大防止策との両立なのだ。そこにも想いを馳せてほしい。
 帝国データバンクによると、旅行業、宿泊業の倒産は11月で年間件数を上回った。旅行業の事業廃止は4-11月で452社に上っている。Go Toトラベルは観光事業者が生き抜くための糧となっている。Go Toトラベルで社会を分断してはならない。(石原)