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2022.11.05

学校研修実施レポート 桜花学園大学

オーストラリア留学11カ月、保育を英語で学ぶ

専門学校に通い、資格を取得する留学を必修に

 

愛知県豊明市に位置する4年制の桜花学園大学。20年の歴史をもつ保育学部に国際教養こども学科を新設し、11カ月におよぶオーストラリア留学を必修としている。コロナ禍で中断していた留学を今年の春から再開し、現在82名の学生がブリスベンとゴールドコースト、メルボルンに滞在中だ。新学科の立ち上げから関わり、これまで数多くの留学をサポートしてきた加藤あや美准教授に話を聞いた。

 

 

安全で多様性を重んじる保育を実践する

オーストラリアへ

 

 桜花学園大学は2018年、保育学科を擁する保育学部に国際教養こども学科を新設した。トヨタ自動車をはじめ製造業が盛んな愛知県は外国籍の子供たちが多く、保育の現場でもこうした状況に適応できる人材を育成するのが目的だ。

 同科の特色は、保育、留学、資格の3つをキーワードに、それぞれのカリキュラムを4年間で修得し、専門性を身につけること。1年次に2週間のニュージーランド研修、3年次に11カ月のオーストラリア留学を必修とすることで、コミュニケーション能力や問題解決能力を養い、広い視野で行動できる力を育成するのが狙いだ。最終的に日本の保育士資格、幼稚園教諭一種免許状、そしてオーストラリアの幼児教育と保育におけるアシスタント資格であるサティフィケイトⅢを取得することができる。

 同校ではこれまでも海外研修や留学を実施してきたが、必修留学をカリキュラムに組み込んだのは初めてで、これは全国の保育系学部学科でも初の試み。留学は2年生が終わる2月に始まり、3年生の1月に帰国するスケジュールで、「保育を英語で学ぶ」ことを明確な目的としている。

 留学先をオーストラリアにしたのは、何よりもまず「安全かつ安心して学生を滞在させることができる国であること」と加藤先生。時差も少ないため、トラブルなどが起こっても現地と日本でリアルタイムに対応できるのも魅力だという。加えて、オーストラリアは日本と異なり多様性を重んじる保育を実践していることも理由の1つ。全員で同じ活動に取り組む日本の保育と違い、オーストラリアは1人1人が別行動。そのため、保育者は「教える」のではなく「見守る」保育が必要とされている。

 

コロナ禍の留学、手探りで再開

 

 国際教養こども学科は2018年に新設したため、2018年、2019年は1年生がそれぞれニュージーランドへ短期研修を実施した。オーストラリア留学が初めて行われたのは、2018年に入学した学生が間もなく3年生になる2020年の2月。しかし、3月に日本で大型客船からコロナ感染者が出たことで深刻さを増し、東京のロックダウンも噂されていた。大学ではこうした状況を鑑み、苦渋の決断で同年4月1日に全員を帰国させたという。

 それからの2年間は留学再開の目処が立たず、ついに2018年に入学した学生は2カ月弱の留学で卒業していった。今年になってもコロナ禍は続いているが、2月以降に現3年生と4年生の同時留学に踏み切ったという。「入国規制の緩和や国内線乗り継ぎの再開などを確認しながら2月まで待ち、ようやく再開することができた」と加藤先生。現在、3年生43名と4年生39名がブリスベン、ゴールドコースト、メルボルンに滞在している。

 

 

 

 

 

 

 

 

待ち望んだ留学で大きく成長

 

留学のスケジュールは、最初に約3カ月の語学研修を行い、その後の7カ月は専門学校で保育士資格取得コースの講義と実習を行う。例えば、4つのキャンパスをもつ専門学校Imagine Education Australiaは、一般英語コースと保育コースを含む多くの専門コースを提供しており、保育園も併設していて条件がそろっている。

 具体的に、現3年生のスケジュールを見てみよう。4年生が2月に出発している関係で、3年生は2年次の3月に日本を出発。最初の15週間はImagineの一般英語コースで研修し、現在は同校の保育コースで実習プログラムを受けている。専門の18科目を学び、現地の保育所で120時間以上の実習を重ねるという内容だ。もちろん、休日や休暇にはオーストラリアの大自然や固有の動物、先住民族のアボリジニナル文化に触れるといった異文化を体験・吸収する時間も確保されている。

 滞在先は、語学研修の中盤まではコンドミニアムで、保育実習中はホームステイとシェアハウスの選択肢を設けた。本来は語学研修中にホームステイを予定していたが、これもコロナ禍の影響で調整せざるを得なかったという。

 学生たちはこの2年間、留学の再開を待ち望んでおり、現在オーストラリアに居ることの喜びを実感しているという。一方で、コロナ禍により語学学校に多国籍な学生が少ないといった想定外の事態も起こっている。インターナショナルな環境に身を置きたいと思っていた学生ほど、周りが日本人だらけと落胆しているというが、「何でもすぐに相談してきた学生が、自主的、主体的に行動できるように変わってきた」と加藤先生。理想通りにいかないことが起きても、その中で最善策を考えられるようになっており、どの学生も強くなっているとその成長ぶりに安堵している。

 

留学先で受ける刺激や戸惑いも糧に

 

留学中の学生たちの声を紹介しよう。3年生のOさんは、オーストラリアで生活するようになって「英語で英語を学ぶことが刺激的」とコメント。英語をやらなければという意識から、もっと学びたい、もっと話せるようになりたいと意欲が湧いているという。

 同じく3年生のTさんは初期にホームシックを感じたというが、「学校内に友人もでき、できるだけ日本人学生以外と話すように心がけている」と話す。2人に共通しているのは、留学生以外の多国籍な人々ともっと関わりを持ちたいという点だ。

今後のホームステイや学校生活以外の時間の過ごし方次第で、新しい人々との関わりを広げていくこともできるだろう。 ※青字カット可

 保育実習に関して4年生のKさんは「日本の保育と異なり、日々新しい学びを得ている」とコメント。多文化理解に関する指導案を考えて実践したり、アボリジニナル文化に関する制作活動をしたりと、充実した毎日を過ごしているという。

3年生のYさんは、「課題が多くて圧倒されているが、素直でかわいい子供たちと多文化共生の空間で過ごせることが貴重だと感じている」と話す。限られた時間の中で、やり残したことがないよう頑張りたいと前向きだ。

なお、現在留学中の4年生はスケジュールを短縮して9月末に帰国の予定。国際教養こども学科新設以来、オーストラリア留学の行程をすべて終了する初の学年となる予定だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

スケジュール/ゴールドコースト・ブリスベン

日程           行程
2022年3月22日 中部国際空港→JL→羽田空港→JL
3月23日 シドニー→QF→ブリスベン
  ※ブリスベン/ゴールドコースト泊
3月24日~4月29日 Imagine Education Australiaにて語学研修(土日は休み)
  ※38泊コンドミニアム滞在
4月30日~2023年1月24日 Imagine Education Australiaにて語学研修と保育実習プログラム(土日は休み)
  ※ホースステイやシェアハウスなど
1月25日 ブリスベン→QF→シドニー
  ※シドニー泊
1月26日 シドニー→JL→羽田空港→JL→中部国際空港

 

 

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