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2022.07.19

オンタリオ州 安全でサステイナブルな食文化が旅の魅力に

1hotelのガーデンパビリオン。コンベンションスペースとしても利用可能

オンタリオのハイスタンダードなカリナリーツーリズム

 

地産地消はもちろん、フードマイレージやフードロスといった問題に早くから取り組み、さらには地元産の健全な食と旅行体験をつなげる「カリナリーツーリズム」の推進にも力を入れてきたオンタリオ州。SDGsに向けて世界中が動き始めている今、そのサステイナブルな食文化は、同州への旅の魅力の一つともなっている。こうしたオンタリオのムーブメントをリードするホテルやレストラン、食品メーカーなどを紹介しよう。

 

トロント

毎週開催されるファーマーズマーケットが大人気

エバーグリーン・ブリックワークス

 

  1980年代に閉鎖され荒廃していた煉瓦工場跡地を、元の環境に戻そうと作られた公園と施設。カナダ全土で活躍する環境保護団体「エバーグリーン」と、サステイナブルな都市作りを目指す組織「フューチャーシティーズ・カナダ」が共同運営母体となり、自然と人との共存をテーマにしたエコツアーや、自然素材を使った料理教室など、様々なイベントやプログラムを行っている。毎週土曜日には、ファーマーズマーケットが開催され、地元の農家などが出店。採れたて野菜をはじめ、手作りのパンやハム、オーガニックワイン、ジャムやピクルスなどの保存食品も並んでおり、旅行者がお土産探しに訪れても楽しめる。夏は屋外の会場で、また冬期は屋内会場で開催される。

Evergreen Brick Works

https://www.evergreen.ca/evergreen-brick-works/

自家製ソースや調味料も並ぶ

オンタリオの食文化を牽引するシェフの店

マーベン・レストラン

  

 ローカル食材をフューチャーし、持続可能な食文化の推進を目的に活動する団体「サステニュアリー」の創設者のひとり、クリス・ロックがシェフ。彼はトロントを中心に地域社会の貧困・食糧不足問題に取り組む団体「フードシェア」の活動もサポートするなど、オンタリオのサステイナブルカリナリーの中心的存在といえる。その取り組みは廃棄物の削減とアップサイクル、産地と季節にこだわった食材選び、社会的に公正な食システムへの参加など多岐に渡り、同店の豊富なメニューに反映されている。レストランで出す食材の80%以上は、オンタリオを中心にカナダ産であり、地産地消の達成度を評価する「フィーストオン」の認定店ともなっている。

Marben restaurant

https://marben.ca

食材を余すことなく使い切ったメニュー
シェフのクリス・ロック氏

食材を一切無駄にしない、注目のアップサイクル術

パークハイアット・トロント 

  

 パークハイアット・トロントのレストランは、特に食材のアップサイクルという面で際立っている。例えばメインダイニング「ジョニ・レストラン」では、自家製サワードウというパン生地が作られているが、その課程で出る廃棄部分はパスタ生地として使用。人気メニュー「ブレッド&バターパスタ」などに活かされている。さらにサワードウの端材は特性味噌に加工。また、「ライターズルーム・バー」で出される韓国風フライドチキンの付け合わせ「カリフラワーキムチ」は、通常は捨てられるカリフラワーの葉を使って作られるもので、こちらも評判の味だ。

 同様に、このホテルでは野菜や果物については皮までも自家製の酢や調味料の原料となり、またコーヒー滓はオイルや塩麹、ケーキ、さらにはスパで使われるスクラブなどの材料として活用される。食材を無駄にせず使いきり、新しい味わいを生み出す、その創造力と技術は秀逸だ。

■Park Hyatt Toronto 

https://www.hyatt.com/en-US/hotel/canada/park-hyatt-toronto/torph

人気のブレッド&バターパスタ

 

廃棄物を利用したコンポストで観葉植物や野菜を栽培

1ホテル

  

 自然を守りサステイナブルである事をテーマとした1ホテル。トロントでは庭とインテリアに3,300以上のグリーンを配するなど、まるでホテル全体が植物園のような佇まいだ。同ホテルでは、無駄、浪費、ゴミをなくすゼロウェイストを追求し、廃棄物の85%削減を目指している。具体的には、敷地内の処理機で有機廃棄物を肥料に変え、ホテル内の植物に使用。またレストランから出る油は100%バイオ燃料に変換。紙やプラスチック、ガラスなどはもちろん、リサイクル用に回収される。

 ホテル内には100%オーガニックのハーブやフルーツ、野菜などを育てる「ガーデン・パビリオン」も併設。収穫されたフルーツや野菜を使って作られる生搾りジュースは、ホテル名物ともなっている。また専門家の設計による養蜂施設も備え、ガーデン内の植物の受粉、自家製はちみつ作りなども行われている。

1 Hotel Toronto

https://www.1hotels.com/toronto

メインダイニングの1キッチン

オタワ

 

 乳製品作りの廃棄物からウォッカを製造

デイリー・ディスティラリー

 

 バターやクリームなどの乳製品を製造する過程で出る透過液は、通常廃棄される事が多い。この蒸溜所では、その主成分となる乳糖に着目。これを利用してウォッカを作る事に成功した。現在、オンタリオ3,500の酪農場から透過液を仕入れて「ウォッカウ」と名付けた製品を生産。廃棄物の有効利用に加え、農家での廃棄コストの削減という点でも話題に。通常のウォッカに比べ、ガラス製ウォッカボトルの重量を通常の半分に抑えることで二酸化炭素排出量を1/2に押さえた製品作りも注目される。

Dairy Distillery

https://www.dairydistillery.com/

様々なフレーバーのリキュールも販売(Photo: AdventureCities-SamBurrows)

先住民に安全な水を届ける、オーガニックコーヒー

バーチバーク・コーヒー  

 

 先住民のオーナーによる、オーガニック&フェアトレード・コーヒーの専門会社。ラテンアメリカやアフリカなどの小規模農家から原料となるコーヒー豆を厳選して購入。それぞれの個性を活かした焙煎方法とブレンドで6種類のコーヒーを製造している。売り上げの一部はカナダ先住民の家庭に浄水器を購入する資金として提供。オタワを初めカナダ全土のショップ、またオンラインでも販売。

Birch Bark Coffee

https://birchbarkcoffeecompany.com/

オタワの食品をはじめオンライン購入も可能(Photo: Ottawa-Tourism)

廃棄物をすべて有効活用する最先端のフードホール

クィーンストリート・フェア 

 

 オタワ初のフードホールとして2018年にオープンしたのがここ。フードホールとは、人気店やトレンド店などが出店する高級感あるフードコートで、とくにこの店では、徹底的にサステイナブルな素材を利用しているとでも話題となっている。例えば、カトラリーやナプキン、カップなどには全て、再利用・堆肥化・リサイクルのいずれかが可能な素材を利用。これにより、利用者が出す廃棄物をゴミにせず、活用する事を実現している。

Queen St. Fare

https://queenstfare.ca/

ライブ音楽やイベントも楽しめる人気スポット(Photo:Otawa-Tourism)

自家発電からミツバチ飼育まで、様々な試みを実施

ハイアットプレイス・オタワ・ウエスト

 

 オタワの郊外にあるこのホテルでは、屋上に225枚のソーラーパネルを設置し、自家製の電力を館内の冷暖房などに利用。年間38,225本の樹を植えるのと同等のカーボンオフセットを実現している。このほか、使い捨てプラスチックの排除、地元製品の購入・調達を公約に掲げている他、屋上でのミツバチ飼育、電気自動車用の充電ステーションを整備など、環境保護に向け様々な試みが行われている。

Hyatt Place Ottawa West

https://www.hyatt.com/en-US/hotel/canada/hyatt-place-ottawa-west/yowzo

 

世界最高峰の環境保護基準を誇るコンベンション施設

ショウ・センター

  

 オタワを代表する総合施設。館内には、生ゴミを安全な水に変える高度な廃棄物管理システム、可能な物は全てリサイクルする仕組み、空調や日射しの自動調節など、環境を維持していくための機能が徹底的にプログラムされている。建築物の環境性能を評価する「LEED」によるゴールド認定を受けているほか、2021年には「国際会議場協会(AIPC)」から世界最高峰のコンベンションセンターとして選出された。また。会議施設を初めとする観光団体などが参加し、環境改善を目指すConvene Green Alliance のカナダ初の創設メンバーにもなっている。

Show Centre

https://www.shaw-centre.com/

リドー運河を見下ろす壮大な建物(Phot:Shaw Centre )

 

(エコフレンドリーな旅には自転車利用もお勧め)

 

環境に優しい旅素材という観点から、オンタリオの自転車事情も紹介しておきたい。カナダでは自転車が生活に根付いており、トロントやオタワでも市内の主要道路には自転車レーンが設けられているほか、市内から郊外まで続く長大な自転車専用のトレイルが整備されている。レンタル可能な専門店やシェアバイクのステーションも充実しており、旅行者も利用可能だ。さらに、市内や郊外を巡るガイド付きの自転車ツアーも種類豊富にあり、気軽に参加する事ができる。ヘルメット着用、歩道走行は避けるなど、基本的なルールを把握して、楽みたい。

■オンタリオ州自転車情報(トレイル、レンタル、ツアー他)

https://www.ontariobybike.ca/

トロント郊外のビーチズ。州内には心地よいトレイルが整う

オンタリオのカリナリーツーズムに関する情報

Culinary Tourism Alliance 

https://ontarioculinary.com/restaurants/

 

■日本語オフィシャルサイト

https://www.destinationontario.com/ja-jp/japan

 

 

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