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2025.10.30

スペイン、日本人7~8割回復、直行便再開が後押し 現地の生の情報伝える

スペイン大使館観光部が開催した業界向けオンラインセミナー

「基礎編」「応用編」「現地からの生の情報」で構成

 

 

 スペイン大使館観光部は、恒例のオンラインセミナーを開催、基本情報や公式インスタグラムで人気の穴場スポットランキング、おすすめモデルコースなどを紹介したほか、現地オペレーターをつなぎ、最新の現地情報を伝えた。

 

 日本からスペインへの渡航者数は、昨冬にイベリア航空が成田―マドリード線の運航を再開したこともあり、好調に推移。2025年は春や秋を中心にコロナ前の2019年比で7~8割まで回復、さらなる需要回復と拡大に期待がかかる。

 観光部からのプレゼンテーションでは、まず基本情報として、スペインの人気の理由を紹介。「地理と気候(四季があり、温暖。南部は晴天率300日以上)」「ユネスコ世界遺産(50件)と建築」「豊かな食文化、美食」「行かないとできない体験(巡礼の道やサッカー観戦など)」の4点を挙げた。

 

基本編では、スペインの人気の理由を紹介

「豊かな食文化、美食」もアピール

 またスペインの各地方を紹介。中央部は首都のマドリードがあり、周辺にはトレドやセゴビア、アビラなど、日帰り可能な世界遺産の都市が点在。また地中海沿岸にはバルセロナとバレンシア、南部にはコルドバやセビージャ、グラナダなど、魅力的な都市を有するアンダルシア地方、一方北部は「グリーンスペイン」と呼ばれ、巡礼の道の目的地サンティアゴ・デ・コンポステーラがある。

 各地方は、地理的な条件や気候、さらにイスラム教の時代など、宗教や歴史的背景もあり、バラエティー豊か。マドリードを中心に高速鉄道網が整備されており簡単にアクセスできる。

 ほかにもスペインならではの魅力として国営ホテル「パラドール」を紹介。現在、スペイン全土で97軒を展開。「地域の活性化」を目的に、修道院の建物を活用したり、風光明媚な場所に建てられたりと、それぞれ特色がある。

「豊かな食文化、美食」もアピール

スペイン全土で97軒を展開する国営ホテル「パラドール」を紹介

 

 パラドールやお祭り、日帰り可能や「映え」スポットも

 インスタ人気穴場スポットを紹介

 

 観光部では、公式インスタグラムgospain.jpを展開、フォロワー数は25350人に達し、うち女性が40%、男性が18%を占める(残り42%は不明)。セミナーでは、今年の投稿で定番観光地を除いた人気の高かった投稿を取り上げた。

 パラドールで人気のマドリード近郊のシグエンサ、収穫祭が有名なログローニョはラ・リオハ州にあり、ビルバオからアクセスが可能。また人気のミハスと並ぶ「白い村」として美しいアンダルシア州南部のフリヒリアナが挙がったほか、バルセロナ近郊で日帰り可能なタラゴナは、バルセロナの混雑を避けてゆっくりと観光ができる。

 南部アンダルシア州のグラナダ近郊にあるアルプハラ地方は、「スペインで最も美しい村」として知られるパンパネイラ、ブビオン、カピレイラの3村のほか、最高級の生ハムで知られ、生ハム博物館のあるトレベレスがあり、いずれもバスでアクセス可能だ。

公式インスタグラムで人気の高かった投稿を披露

 

 高速鉄道の要所を拠点にアンダルシア日帰り観光

 新たなモデルルートを提案

 

 モデルコースの提案では、昨年も紹介したバスク地方への周遊プランに加え、マドリード周辺のパラドールに宿泊する世界遺産都市の周遊プランや、高速鉄道が交わる要所を拠点に、アンダルシア地方の各都市を日帰りするプランを提案した。

 マドリード周辺のパラドールに宿泊する世界遺産都市の周遊プランは、マドリード空港から直接ドン・キホーテの生みの親、作家セルバンテスの故郷であるアルカラ・デ・エナーレスへ向かい、パラドールに滞在、ほかにもクエンカとセゴビア近郊のラ・グランハのパラドールに滞在、途中アビラを含むマドリード周辺に点在する世界遺産を訪ね、マドリードで3泊する。なお、11月には旅行会社対象の同プラン視察旅行を実施する予定だ。

マドリード周辺のパラドールに宿泊する世界遺産都市の周遊プラン

 

 アンダルシアの日帰りプランは、高速鉄道が交わるアンテケラに3泊滞在。マラガとミハス、グラナダ、コルドバへそれぞれ日帰りし、セビージャに移動、マドリードへ向かう内容。ホテルに4連泊することで、荷物を運ぶ手間を省けるメリットがある。アンテケラから各都市まで高速鉄道で1時間以内、バスでも90分程度でアクセス可能。またアンテケラ郊外には奇岩で有名な公園があり、世界自然遺産に指定されている。高速鉄道での移動が便利なアンダルシアの滞在プラン

 

 バスク地方への周遊プランは、マドリードin/outとマドリードin、バルセロナout2コース。途中美食のバスク地方と、ワイナリーホテル、またはチャコリのワイナリーを訪ねる。

美食のバスク地方と、ワイナリーホテル、またはチャコリのワイナリーを訪ねるバスク地方への周遊プラン

 

 また最新情報では、91日付で駐日スペイン大使館の観光参事官に就任したエンリケ・ルイス氏を紹介したほか、今年から毎年開催となるフラメンコフェスティバル(奇数年はグラナダ、偶数年はセビージャで開催)、トレドで繰り広げられる壮大な舞台演出と最新技術を使ったエンターテイメントショー「ピュイ・デ・フー」、来年「イエス・キリストの塔」が完成予定のバルセロナのサグラダ・ファミリア、新規及びリニューアルオープンのパラドール、スペインで121年ぶりの皆既日食(2026812日夕方)、6年ぶりの「聖年」を2027年に迎えるサンティアゴ・デ・コンポステーラ、マドリード近郊で7月に畑一面に咲き誇るラベンダーの美しい光景を見ることができるブリウエガについて触れた。

 

駐日スペイン大使館の観光参事官に就任したエンリケ・ルイス氏を紹介

 

 イベリア航空、飛行時間短縮で乗り継ぎしやすく

 機材導入で成田線増便にも期待

 

 昨冬より成田―マドリード線を再開したイベリア航空のプレゼンテーションには、今年6月に観光部との視察旅行で現地を訪れたブリティッシュ エアウェイズ/イベリア航空の中澤育央氏が冬期スケジュールや今後の展開について紹介。飛行時間の短縮で乗り継ぎがしやすくなるほか、機材の導入により成田線増便が期待できるとした。

 飛行時間は、成田発で15時間35分、マドリード発で14時間10分と、ルートパフォーマンスの向上により、それぞれ15分短縮。「日本から同日でつなげるスペイン国内都市が増える」という。

 また2030年までの5か年計画「Flight Plan 2030」では、5年間で60億ユーロ(約9600億円)を投入し、長距離路線向け機材を現在の45機から約70機に拡大する計画。最新鋭のエアバスA350型機や航続距離の長いA321XLR型機などを導入、ほかにも長距離路線向け機材の機内リニューアル、マドリード空港の空港ラウンジ新設なども進める。

昨冬より成田―マドリード線を再開したイベリア航空によるプレゼンテーション

 

 現地から造成のヒントやアドバイスも
 早めの手配が満足度向上のカギに

 

 現地からは、バスク州の公認ガイドを務めるディスカバリーバスクの沼山香織氏と、カスティージャラ・マンチャ州観光局のアルベルト・アルバレス・ロドリゲス氏、マドリードを拠点とするミカミトラベルの石川知里氏がそれぞれ基本情報からツアー造成の際のヒントやアドバイスについて語った。

 

 ディスカバリーバスクの沼山氏は、基本情報やおすすめコースの紹介のほか、イベントについて説明。パンプローナ牛追い祭り(7月614日)、また毎年8月にサン・セバティアンやビルバオなどで繰り広げられる一大イベント「セマナ・グランデ」では、「バル巡り」が難しくなる点を伝えた。

 また「団体旅行の注意点」として、ツアーバスの乗降場所が決まっており、旧市街から15分程度歩く点、ビルバオでは30名、サン・セバティアンでは25名など、団体人数制限が設けられている点を紹介。人気のバル巡りも「最近では30分から1時間でガイドがおすすめのバルや会計などの作法を伝えて、自由解散するのが一般的」となっている。

バスク州の公認ガイドを務めるディスカバリーバスクの沼山香織氏が基本情報やおすすめコースを紹介

 

 カスティージャ‐ラ・マンチャ州のロドリゲス氏は、「日本はカスティージャ‐ラ・マンチャ州にとって最も重要な市場のひとつ」とコメント。同州は「スペインの心臓」とも呼ばれ、マドリードの南東に広がる州。州内には、トレドやクエンカなどの世界遺産があるほか、セルバンテスの小説「ドン・キホーテ」ゆかりの地としても知られる。

 ロドリゲス氏は豊富な歴史文化遺産に加え、自然の魅力も訴求。2つの国立公園(カバニェロス国立公園、ダイミエル湿原国立公園)と、星空観賞やバードウォッチング、ハイキングやサイクリングなど、アクティビティを提案。ほかにもゴルフやスパ、美食にワイン、充実のMICEインフラについても伝えた。

カスティージャ‐ラ・マンチャ州観光局のアルベルト・アルバレス・ロドリゲス氏が豊富な歴史文化遺産、自然の魅力を訴求

 

 ミカミトラベルの石川氏は、地上手配の最新情報を交えながらツアー造成時のアドバイスを紹介。マドリードのプラド美術館、アンダルシアのアルハンブラ宮殿、バルセロナのサグラダ・ファミリアなど、主要観光施設では団体向けチケットの確保が難しくなっていることから早期手配を促したほか、チケットのデジタル化でパスポート情報の事前提出が必要になっている点を紹介。

 また、マドリードからアンダルシアへの移動で高速鉄道を利用する際は荷物スペースが限られているため、別途荷物輸送用の車両手配が必要になる点、バルセロナでは観光バス規制が強化され主要観光地まで徒歩移動が増えている点なども説明した。

 石川氏は「できるだけ効率的に巡り、お客様に満足していただけるツアーを造成するには、何より『早め早めのアクション』が大事。早めの見積もりと手配、余裕のあるスケジュールで希望に叶うツアー造成が可能だ」と強調した。

ミカミトラベルの石川知里氏は、地上手配の最新情報を交えながらツアー造成時のアドバイスを紹介